17話 固有特性と反省会
用語説明w
MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット
サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主
フィーナ:二歳下でラーズの戸籍上の妹
固有特性
個人が持つ、その名の通り固有の特性を言う
戦力ランクとの関係はなく、特性であればいい
魔法が使える、近接武器や銃器の卓越した技能、MEB操縦技術や使い魔の使役などが固有特性だ
ロゼッタの先天的な高い身体能力も、固有特性となる
また、特殊な武器を使うなども固有特性となる
例えば、サイモン分隊長の蒼い強化紋章やロゼッタの青い片手剣、高機能攻撃型AIでハッキングやクラックに特化しているものなども固有特性となる
兵士なら誰でも固有特性を持つことに憧れる
単純に生き残る力となるし、活躍の場も広がるからだ
過去の英雄達も、例外無く固有特性を持っていた
…いつかは俺も固有特性を持ってみたい
自分にしかできない突出した特性があれば、こんなに自分のミスで凹むこともないんじゃないだろうか
「悪かったよ。今回はお前だけが悪い訳じゃない」
「いや、でもフリーズを考えてなかった俺が悪いっすよ…」
「敵の探知情報を更新しながらだと、あそこまでPITが遅くなるとはな。縦穴が中途半端に浅くて通信も届いてたから、中継アンテナ使わなかったもんなぁ」
PITは個人情報端末のこと
「ただ、見習いの研修中に一回モ魔がフリーズしたこともあったんですよね。モ魔レスポンス悪いんで、危険性に気がついとかなきゃダメでした」
「AIがあれば、警告も出してくれるし索敵しながらフリーズしないようにやりくりしてくれるんだけどな。」
「高いんですが、必要ですね…」
「今回は俺が索敵情報を確認して、ラーズのPITはモ魔に専従するべきだったんだよ。AIにまかせてると、AI無い状態のこと忘れちまうのが難点だなぁ」
「はぁ…」
ここは居酒屋「四季」
サイモン分隊長につれられて、反省会中だ
「ま、飲もうぜ。次は気を付ければいいさ」
グビグビ…
「はい。ただ、下手すると仲間殺してたわけで、もうどうしていいか…」
グビグビ…
「大丈夫だ。お前の焦ったインカム聞きゃぁ、やべぇっぇぇぇ!って状況は伝わるさ。俺だってソッコーで逃げただろ?」
グビグビ…
「そりゃ焦りますって。モ魔が、アクセスできないのに動き続けるんですもん…って、ああぁぁぁぁっ!」
ブハァッ!
「な、何だ!?」
「俺、馬鹿なんですかね…? モ魔と巻物のケーブル抜けば止められたんじゃないですか!?」
「…」
「…」
「うん、ま、とりあえず飲もうか」
「…はい」
男二人で無能を肴に酒を飲んだ
・・・・・・
うぅ…、ちょっと飲み過ぎたな、酒強くもないのに
これが逃避行動ってやつか?
俺のアパート「メゾン・サクラ」
管理人さんの娘さんの名前が由来らしい
2階建てで、上に四部屋、下に三部屋と管理人室がある小さなアパートだ
大学時代から住んでいるので、各部屋の住人とも顔馴染みとなり住みやすい
俺の部屋は、2階の角部屋204号室
角部屋なのに4とつく部屋は敬遠されていたらしく、うまい具合に入居出来たんだ
部屋にはいってソファーに横になる
「疲れた…」
「ラーズ、お帰り」
フィーナの部屋のドアが開く
「あれ、フィーナの帰り明日じゃなかった?」
「うん、そうだったんだけどお腹痛くて一日早く休みもらったんだ」
「お腹って、大丈夫?」
「月一のやつだから。でも風邪気味なのもあってちょっときついの」
「ああ、生理か。女は大変だ」
ボフッ!
クッションが飛んでくる
「女子相手にそういう単語言わないでくんない?」
フィーナは、辛そうに、でもむくれながら言う
「ハイ、ごめんなさい」
「ラーズは今日休みって言ってなかった?」
「隊の女性隊員が生理で休んだんだよ。その代理で出番になったんだ」
「そうなんだ、いると思って帰ってきたからきつかったよ…」
「酔っぱらってて出来ること少ないけど、何か欲しいものある?」
「きつかったけど、もう買い物行ったから大丈夫。明日のご飯はお願い」
「了解しました。じゃ、シャワー浴びて寝るよ?」
「私も薬のんで寝るよ。明日は早く起きてね」
「はーい。てか、起こしてな」
生理に始まり生理に終わる1日
気の合う上司と、仲のいい妹
ちょっと元気出た
頑張ろう