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ですペア ~平凡な一般兵の苦悩~ 魔法、実弾兵器、スキル、ブレス、オーラ、召喚…即死級攻撃が多すぎる!  作者: ロロア
五章 戦闘スタイルと武器? どっちも完成させるに決まってるだろ
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171話 和解の酒

用語説明w

モ魔:モバイル型呪文発動装置。巻物の魔法を発動できる


ゼヌ小隊長:1991小隊の小隊長

メイル:1991小隊の経理と庶務担当、獣人の女性隊員

シリントゥ整備長:整備班の整備長。ドワーフのおっさん

サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)


「…」


どうしよう、サイモン分隊長に本気で怒鳴られてしまった…


俺が呆然としていると、シリントゥ整備長が口を開いた

「…なぁ、ラーズ。お前、魔法を使える使えないで何かあるのか?」


「え?」


「…いや、頑なに魔法強化はいらないって言ってたからよ。モ魔の魔法強化だって立派な戦力強化だし、将来的に魔法が使えるようになるなら尚更あった方がいいだろう?」


「…」


いや、もちろんあったらいい

だけど、Bランクモンスターに手を出して小隊に危険を晒したくないだけなんだ


「ま、サイモンもラーズも少し頭を冷やした方がいいな」


「はい…」



俺はMEBハンガーを出てノロノロと歩いた

隊舎に入りづらい


理由もなく隊舎の入口方向に回ると、バッタリとメイルに会った


「あ、ラーズ!」

メイルがこっちに来る


「サイモン分隊長の様子が変だったけど、何か知らない?」


「あ、それは私が原因です…」




俺はメイルと隊舎の裏にあるベンチに移動して、事のあらましを話した


「ふーん…」


「Bランクモンスターは強いし危険じゃないですか。だから、費用対効果を考えて魔玉のランクを下げようと思ったんですけど…」


「うーん…。多分だけど、サイモン分隊長はちゃんと相談をして欲しかったんじゃないかな?」


「え?」


「実はね、1991小隊の査定クエストが決まりそうなの」


「査定クエスト?」



査定クエスト

隊員や小隊の能力を査定するためのクエストだ


小隊は、高・並・低の三種類で評価されている

管内のクエストの消化率やミッションにおける防衛作戦への派遣数、そして特別クエスト担当の派遣やその他の派遣数などで評価が決まる


だが、この3段階の上に()という評価がある

この特という評価は、Bランクモンスターの()()()()()()()()()()、のみ評価され、その他の実績は一切考慮されない


Bランク以上のモンスターの緊急クエストが発令された場合、Bランク戦闘員が到着するまでの間、足止めが出来る小隊

これができる小隊は限られており、防衛軍の貴重な切り札となるのだ


この特の評価を受けることができれば予算や待遇等で大きな恩恵があるのだが、その分査定は厳しい

査定にはわざわざBランク戦闘員を待機させ、小隊の総力を上げてBランクモンスターに挑むことになるのだ




「そ、そうだったんですか」


「知らなかったでしょ? どうせBランクモンスターを狙わなきゃいけないんだから、ラーズが勝手に武器を妥協する必用は無かったんだよ」


「で、でも、やっぱり小隊を危険に晒したくなかったんです」


「うん、分かってる。私が言いたいことは、ちゃんと()()してって事よ。もちろん、出来ないことは出来ないわ。でも、今回の査定クエストみたいに、知っておけば選択肢が増える場合も有るでしょ?」


「う…」


メイルは優しい口調で続ける

「防衛軍ってさ、クエストや防衛作戦はそれぞれで参加することが多いし、武器や防具も個人で勝手に揃えてってスタイルだけどさ。でも、困ったときや、必要なときに頼れるのが小隊というチームのいいところでしょ?」


「…」


「それに、武器ってその隊員の戦力を決める重要な要素よ? それなのに、勝手に諦めて妥協しちゃうのはもったいないわよ」


「…はい」


メイルは俺の様子をみて、口を閉ざしてくれた

暫くメイルと無言になる



「…そもそも、何でちゃんと相談しなかったの?」

メイルが、俺に顔を向けずに口を開いた


「えーと…」


何でだろう?


サイモン分隊長は何度もBランクモンスターの狩りに誘ってくれた

どうして、素直に「はい」と言えなかったんだろう



「ラーズ、なんだか意地になってない?」


「…」


そうかもしれない

どうして、Bランクモンスターに意地になっているんだ…


いや、違うな

モンスターじゃない

俺は、魔玉を手に入れるのが嫌なんだ


…これも正確じゃないな

俺は魔玉を手に入れるのに、1991小隊の力を借りたくないんだ


どうしてだろう?



チャクラ封印練が解けたら、俺はBランクになる資格を得る

魔法と特技(スキル)闘氣(オーラ)がまた使えるようになる

Bランクの戦闘員ほどの戦闘力を得られるとは思えないが、弱いとはいえ、一般兵では手に入らない能力を取り戻せるはずだ


もし、順当に封印が解けてBランクになったら…

1991小隊とは仲間じゃなくなるみたいな気がした



「そうか…」


俺は、一人で裏切り行為をしているみたいな後ろめたさを感じていたんだ

だから、魔玉のために1991小隊を巻き込みたくなかったんだ


「え?」

メイルは俺を見る


だが、俺はまとまっていく考えに気を取られていた


何でチャクラ封印練が解けることに、そこまで嫌悪感があるんだろう?


チャクラ封印練が解けると、Bランクになれる能力を得る…


そうか、それは俺が目指している、B()()()()()()()()()()()()()、という目標に背く行為だからだ


同じ力で対抗するのではない

別の強さで勝負する、それが俺が防衛軍で得た答だ

それなのに、結局Bランクと同じ力にすがろうとしていたみたいで嫌だったのか…


ボリュガ・バウド騎士学園時代を思い出す

魔法でも特技(スキル)でも闘氣(オーラ)でも勝てない、あの劣等感

結局、俺はBランクへの劣等感を拗らせているだけだ


B()()()()()()()()()()、という言葉に拘りすぎて、武器を強くするチャンスを捨てようとしていたんだ


俺はバカだ

少しでも戦力になるなら、求めない理由なんか無いのに



「…俺が間違っていました。やっぱり魔玉は欲しいです」


チャクラ封印練なんか関係ない

少しでも戦力になるなら、それを実行する

防衛軍では当たり前のことだ


「…よく分からないけど、解決したの? 急にさっぱりした顔になって」


「はい、解決しました。自分のバカさに気が付いたので」


「じゃあ、サイモン分隊長の所に言ってきなよ。ショックだったと思うよ? 頼られるべき所で頼られないって寂しいんだから」


「…はい、行ってきます!」




・・・・・・




サイモン分隊長は地下の倉庫にいた

隊舎の一階で()()()()ゼヌ小隊長に会い、お使いを頼まれた


「今日はそのまま上がっていいからね」

ゼヌ小隊長が封筒を渡してウインクをしてくる


郵便局まで行き、特定記録で発信して欲しいとのこと

そして、郵便局の三件隣は居酒屋「四季」だ


…行ってこいということだろう



「サイモン分隊長、奢らせて下さい!」


「うおっ、脅かすな! いきなり何だよ?」


「ゼヌ小隊長にお使いを頼まれたので、付き合って下さい!」


「お? あぁ…」

ゼヌ小隊長の名前を聞いて、サイモン分隊長も察したようだった




居酒屋「四季」

最近、ちょっとご無沙汰だったな


「…」「…」


とりあえず、無言で乾杯

公務員なのに定時前に乾杯だぜ!


俺はジョッキ二杯を一気に飲み干す

初めて飲むペースでサイモン分隊長を越えてやった


炭酸で一気に腹がいっぱいだが問題はない

よし、後は酔っぱらうのを待つだけだ、言おう!



「サイモン分隊長、魔玉が欲しいんです。でも、俺一人じゃBランクモンスターなんか狩れません。力を貸して下さい!」


「…あ? お前さっき要らないって言ってたじゃ…」


「違ったんです。さっき、考えがまとまったので聞いて下さい!」


「お、おお…、分かったよ」



おばちゃんがつまみを持ってきてくれた

タコとわさび、通称たこわさ、おいしい…


「おい、そんなに飲んで大丈夫か?」


グビグビ…

「全く問題ありません。それより聞いてください」


「ああ、いいぞ」


グビグビ

「私が嫌だったのは、防衛軍の隊員である私自身が、Bランクの能力を求めたことだったんです」


ゴクゴク

「どう言うことだ?」


「私は、Bランクの奴等とは違う強さを求めて防衛軍に入ったんですよ? 手応えだって感じてるのに! それなのに、チャクラ封印練が解けた後のことを計算して武器を作るなんて、この小隊じゃ力不足ないみたいじゃないですか!」


「…そんなことないだろ? 誰だって、除隊後のために貯金はするし、転職を考えて資格を取るやつだっている。先を見越すなんて、大人なんだから当たり前のだろ」


グビグビ

「…」


ゴクッゴクッ

「…」


「違うんですよ!」


「うおっ!? 声でけーよ!」


「なんか裏切ってるみたいじゃないですか! 私だけ闘氣(オーラ)とか…。俺はBランクの奴等とは違うんです! チート能力なんか無くたって戦えるんですよ!」


「何でそんなにBランクに敵意を持ってるんだよ…? だいたい、お前の妹だか恋人だかもBランクじゃねーか」


「こ、恋人じゃないですよ! それに、Bランクと同じ闘氣(オーラ)とかにすがるのも負けた気がするし、やっぱり別の方法で強くなりたいんです…」


酒の力は偉大だ

勝手に口が動き、まとまっていない言葉も吐き出してくれる

そして、まとまっていなくても伝わるときは伝わるものだ


グビッ…

「なんか引きずってやがるな…。おばちゃん、ジョッキ二つ!」


ゴクゴクッ

「…はい、引きずっていました。でも引きずるのは止めました! 武器を妥協したくないんです。力を貸してください!」


グビグビ

「…最初っからそう言やよかったんだよ」

サイモン分隊長は、そっぽを向きながらジョッキを煽る


表情は分からないが、耳が赤くなっている気がする

酔ったかな?


「…」


「おい、大丈夫か?」


違う、酔ったのは俺だった

と、トイレ…



隊舎にて


「サイモン君から解決したってメッセージが来たわ。メイル、お手柄ね。雨降って、しっかり地面が固まったわ」


「ゼヌ小隊長…、どんな喧嘩かも分かってないのに、仲裁なんて無茶ぶりですよ…」


「あら、でも結果は百点満点じゃない。後は、固まった地面を蹴って、()評価までジャンプするだけよ」




評価、ブクマありがとうございます!

もう少しで…!

励みに為ります

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