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ですペア ~平凡な一般兵の苦悩~ 魔法、実弾兵器、スキル、ブレス、オーラ、召喚…即死級攻撃が多すぎる!  作者: ロロア
五章 戦闘スタイルと武器? どっちも完成させるに決まってるだろ
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閑話16 採用試験

用語説明w

シグノイア:惑星ウルにある国

ハカル:シグノイアの北に位置する同国と戦争中の国


サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)


防衛軍に入隊するためには、採用試験を受ける必要がある

最初に筆記、次に運動能力試験だ


ハカルとの関係悪化で両国間に緊張が走っているため、防衛軍は警備が多くなり常に人手不足だ

なので、定期的に採用試験が開催されている



「拘束時間長いんだよ、採用試験ってやつはよ…」

サイモン分隊長がぶつぶついいながら、防衛軍学校の門を入っていく


「防衛軍学校なんて、卒業しちまえばなかなか来る機会がないから懐かしいんじゃないか?」


「私、防衛軍学校は仮採用時の最初の三か月しかいなかったんですよ。懐かしいと思えるほど思い入れが無いんですよね」


採用試験には各小隊が順番に指定され、その小隊から派遣された隊員が補助を行うことになっている

うちの小隊からは、お馴染みのサイモン分隊長と俺のペアだ


サイモン分隊長は筆記試験の立会人、俺は運動能力試験の補助係だ

体格的に見れば逆の方がいい気もするが、筆記試験の立会いは分隊長以上と決められているのだ


俺とサイモン分隊長は、それぞれの持ち場に向かった




俺の最初の任務は受験者を教室へ案内する係だ

廊下に立って、歩いてくる受験者へ道順を案内していく



入ってくる受験者を見ていると、自分の採用試験の時を思い出すな…

俺が採用試験を受けたのは、シグノイア国立トウデン大学の四年生の時だ


進路を色々と考えていた時で、大学院、シグノイアの企業、シグノイア防衛軍、じいちゃんの農業を継ぐ、の四つを考えていた

そんな時に、セフィ姉に龍神皇国の騎士団の事務職でもいいから来ないかと言われたんだ


正直、事務職での誘いにショックを受けた

セフィ姉は、俺を戦力として見ていないのかと思ったんだ

冷静に考えれば、Bランクの騎士団で俺が戦闘員をできるわけないんだけどな…


この時、改めて俺の夢はセフィ姉の背中を守れ、一緒に戦える男になることだと思い出した

だが、単純な戦闘力では騎士には勝てない

だからこそ、騎士とは違う強さを求めて、俺は防衛軍の採用試験を受験することに決めたのだ



結果として俺は採用試験に無事合格でき、大学を三月に卒業した後、仮採用として四月から防衛軍学校に入校した


誰でも最初は仮採用となり、初めに防衛軍学校に三週間入校する

この三週間の入校を仮採用初任課程といい、これは例外無く全員が入校する


仮採用初任課程は、防衛軍学校の寮に入り戦闘訓練等の教育を受ける


銃、杖、巻物の使用訓練

走り込み、格闘術、ナイフ等の武器術の体力・術科訓練

敬礼の仕方や号令を覚える教練

法律やモンスター、兵器を学ぶ学科


これらを三か月で叩き込むのだ

訓練でしごかれてへとへとになりながら、学科試験の勉強をする生活だ


後で聞いた話だが、この三か月のしごきは脱落者をふるいにかけているらしい

仮に学科試験で赤点を取ろうが、後で再試験をして無理矢理合格させてくれるそうなのだ


防衛軍で何よりも先に必要なのは根気だ

辛かろうが、怒鳴られようが、ついて行けなかろうが、諦めずにやり続ける者、これを求めているのだ


そういうわけで、仮採用初任課程は地獄だった

たった三か月と分かっていても、毎日逃げ出してしまおうかと考えていたな…


今思うと、三か月も耐えられない奴に防衛軍は務まらないという意味のしごきなのだろう



この防衛軍学校での訓練の三か月が終わると、初任課程の後半が始まる

この後半は、通称実戦研修という


実践研修じゃない、実戦研修だ

実戦研修とは、シグノイア各地の小隊に派遣され、見習いとして二週間の間に三回、防衛作戦に参加する研修だ


派遣される防衛作戦は、「簡単な作戦」となっている

簡単となってはいるが、派遣を決める教官が()()()()と決めるだけなので、実はとんでもない現場だったということもあり得る

そもそも、その防衛作戦が本当に簡単なのかなんて、蓋を開けてみないと誰にも分からないのだ


実際に、俺は二回目の派遣先の防衛作戦がその()()()()()()現場だった

どれくらいかといえば、仮採用の防衛軍学校生の目の前で殉職者がバンバン出て、トラウマになるくらいにはとんでもなかった



「おい、お前、ラーズ…だよな?」


突然声をかけられて振り向くと、エルフの隊員が立っていた


「あ…、初任課程の時の!」


仮採用初任課程の防衛軍学校の寮は二人部屋だった


「同室だったエリクだよ!」


そう、俺はこのエリクと同部屋だったのだ



仮採用初任課程を修了すると、通常は防衛軍学校に再入校して本格的な戦闘訓練を半年から一年学ぶことになる


だが、中には、

・防衛軍学校には戻らずに、直接各小隊に配属

・他機関に出向

になる場合がある

俺の場合も、学校には戻らず直接1991小隊に配属だった


実戦研修の最終日は防衛軍学校に集合となっている

防衛軍学校への再入校は「仮採用総合教育課程」というが、実戦研修の最終日は仮採用の初任課程の修了式と総合教育課程の入校式を兼ねた式が行われる


だが、俺だけ教官室に呼ばれて、事務のおばちゃんから仮採用初任課程の卒業証書と小隊への配属の辞令の紙をもらい、1991小隊の隊舎へ行くように言われたのだ


他の同期は終了式兼入校式に出ていたので挨拶も出来なかった

思い出すと、俺の扱い雑すぎないか?


「お前が総合教育課程に戻って来なかったからビックリしたんだよ」


「それが最終日に俺だけ教官室に呼ばれてさ、お前は小隊に配属になったって言われて、そのまま隊舎に行かされたんだよ。エリクは入校式に出てたから挨拶もできなかったんだ」


仮採用初任課程の前半の三か月はPITの使用も禁止で、連絡先も交換できなかった


「そうだったのか。いきなり小隊配属なんて、お前研修で活躍したんだろうな」


「それが、全然してないんだよ。言われた通りにしてただけだし、二回目の研修なんか逃げ回ってただけだからな…。今だに謎だよ」


「そっかー。俺なんか、ラーズがいなくなって総合課程の半年間一人部屋になっちゃったんだぜ。寂しかったよ」


「お前、普通そこは喜ぶ所だろうよ」



エリクと話していると、学校時代を思い出すな


「懐かしいなー。部屋で敬礼の練習とかしたよな! 手の角度こうだろ、とかさ」


「やったやった。モンスターの名前覚えきれねーとか言ってカンニングをマジで考えたよな」


「実際、カンニングで捕まった奴いて、やらなくて良かったーって話したもんな!」


ヤバい、久々の同期との会話が楽しい

俺は三か月しか防衛軍学校の生活がなかったから、覚えてる奴ってエリクぐらいしかいないんだよな


たった三か月なのにこれだけ思い出があるって、どれだけ濃い軍学校生活だったんだ…


「なぁ、ラーズ。お前もう固有装備買った?」


「一応、鎧とロケットハンマーが固有装備になってるよ」


「え!? 固有装備を二つも買ったのか!」

エリクが驚く


俺は、それぞれの購入経緯を話してやった


ロケットハンマーは、引退したジャンを火属性魔法から庇ったお礼に譲ってくれたこと

鎧は、戦場で同じ防衛隊員から強盗被害の遭い、その賠償金でローンを払ったこと


…改めて振り替えると、ろくな目にあってないな



「火だるまに腕の切断かー。固有装備は欲しいけど、それは嫌だな」


「俺だって望んでなったわけじゃねーわ!」


「俺もやっと金が貯まってきてさ、固有装備を買おうと思うんだ。武器と防具どっちがいいかなって思ってさ」


エリクの悩みは理解できる

安い買い物じゃないから悩むんだよな、フェムトゥを買ったときを思い出す


「いや、それは絶対防具だ。悪いことは言わないから絶対に防具にしろ!」


「何でだよ? 武器の方が活躍できるじゃないか」


「人間、死んだら終わりなんだ。生きてさえいれば金は貯められる、武器だって後から買えるんだ。俺が何回医療カプセルに入ったと思う? 絶対に防具がいい!」


「そ、そうか…、分かったよ。そこまで言うなら防具にするよ」




その後は試験の立会い

終わると、エリクと連絡先を交換して解散となった


「何か嬉しそうだな?」

サイモン分隊長が俺を見て言う


「軍学校の同期に再会できたんです。懐かしい話ができましたよ」


「そうか、お前は小隊に直接配属だったから防衛軍学校が短かったんだよな。それはそれでかわいそうなのかもな」


「1991小隊は人がいいし不満は無いんですけどね。同部屋だった同期にはまた会いたいと思ってたんですよ」



同期との偶然の嬉しい再会

いろんな仕事をしてみるもんだ




軍学校 11話 防衛軍について

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