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ですペア ~平凡な一般兵の苦悩~ 魔法、実弾兵器、スキル、ブレス、オーラ、召喚…即死級攻撃が多すぎる!  作者: ロロア
五章 戦闘スタイルと武器? どっちも完成させるに決まってるだろ
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153話 黒竜討伐2

用語説明w

ジード:情報担当の魔族の男性隊員、補助魔法が得意

セフィリア:龍神皇国騎士団に所属、B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性

フィーナ:二歳下でラーズの戸籍上の妹、龍神皇国のBランク騎士として就職している


黒竜の洞窟の道は変わってなかった


「そろそろだな」


ジードが言うように、すぐに広い空間に出た

そこに黒い小山がある


…黒竜だ



「ヒャンッ」


リィが鳴くと、小山がゆっくりと動き出し黒竜が首を上げた



「…来たか。早かったな」


「約束だったからな。連れて来たよ」


俺は肩に乗っていたフォウルを黒竜に見せる


「こいつが、前に言ったサンダードラゴンのフォウルだ」


黒竜がフォウルを見つめる


「ガウ」

フォウルは短く吠えると黒竜を見つめた


お前、怖くないの? 巨大なドラゴンだよ?

小竜のお前どころか、俺でさえ一口でパクっといけるサイズなんだよ?



「…うむ、間違いなく不可逆の竜呪だな」

しばらくフォウルを見つめていた黒竜は、俺に目を戻して口を開いた


「その不可逆の竜呪って何なんだ? このフォウルがお前を殺せるとは思えないんだけど」


だって肩のりサイズの大きさの竜が、目の前の巨大な黒竜殺せるとは思わないだろ?


「ガウッ!」


「いてっ!? 待て、噛むな! フォウル、お前こそ出来ると思うのかよ、目の前の黒竜を!」


俺が目の前の巨大な黒竜を指すと、フォウルが目を逸らした


「ほら見ろ! お前だって出来ると思わないだろうが!」


「ガウッ!」

フォウルは目を逸らしたまま、抗議するように小さく吠えた


くそっ、こいつ、プライドはいっちょまえに持ってやがるからな



「ところで、その通路にいる強力な力を持った者は、お前が連れて来たのか?」


「…!」

いきなり、セフィ姉達がばれた


「隠さずともよい。高貴な龍の気配を感じる。龍の力を持った者だ」


「俺の姉さんだ」

本当の姉じゃないけどな


俺はインカムで事情を説明し、セフィ姉達に降りてきてもらった




「黒竜よ、隠れていことをお許し下さい。あなたの最期の時を邪魔したくはなかったのです」

セフィ姉が頭を下げる


「構わない。だが、貴殿からは強力な龍の力を感じる。何者だ?」


「龍神皇国に在りし、(あざな)を応龍といいます。もし、その小竜フォウルの力が及ばなかった場合、私が代わりに力を貸しましょう」


応龍の名に黒竜が反応する


「…応龍とはな。その人の身から溢れ出る龍の力、龍の神の力を得たとなれば納得できる。なぜ貴殿ほどの龍が死にかけた我の所へ?」


「言葉の通りです。孤高にて高潔なる竜が最期を私の弟分に託したと聞き及び、一助になればと思ったのです。干渉は致しません。この場にて、あなたを看取ることをお許し頂けないでしょうか?」


「…好きになさるがいい」


そう言って、黒竜とセフィ姉が互いに目を伏せた



「…」


何それ?

ドラゴンの挨拶なの?


いや、それよりも!

セフィ姉って何者なの!?


黒竜と対等の立場で話してるけど! 人間が老竜(エルダー)と同等っておかしくないか!?

…いや、応龍って何?


フィーナを見ると、フィーナも固まっている

目の前の黒竜とセフィ姉の会話が理解できていないらしい


俺はジードの方を向く

「ジード、何の話をしているかわかりますか?」


「私に分かるわけないだろう。セフィリアさんは、あの黒竜が驚くほどの力を持っているらしいことだけは確かなんだろうな」


うん、そうだよね

雲の上の話過ぎて分からないよね



黒竜は頭を上げるとフォウルを見た

「では、そろそろ頼むとしよう。竜呪を一時的に消すぞ」


そう言うと、黒竜は魔力で術式を発動させた

人間の魔法とは違う、竜族独自の魔法である竜言語魔法というやつだ



フォウルの周囲に球形の竜言語魔法が構成される


「ヒャンッ!」

リィが心配そうに鳴いた



キイィィィィーン…



耳障りな高い音が響くと、肩乗りサイズのフォウルが突然大きくなって行く


「ガウッ…?」


フォウルは、突然大きくなっていく自分の体に驚き、自分の体をキョロキョロと見回している

フォウルは、黒竜よりはさすがに小さいが、俺が背中に乗れるくらいの大きさになっている


いやいやいや! マジかよ!

質量保存の法則はどうしたんだよ!?

いや、そもそも肩乗りサイズのフォウルがドラゴンブレスを吐ける時点で、エネルギー保存の法則を無視してるから今更か…



「黒竜よ、教えて頂けませぬか。不可逆の竜呪とはいったい何なのですか?」

セフィ姉が、前に出て聞く


「応龍ともあろう貴殿が不可逆の竜呪を知らぬとは。師はおられぬのか?」


「恥ずかしながら、まだ。機会が来れば、龍神皇国の金龍に教えを仰ぐつもりですが、まだしばらくは…」


黒竜は頷いた


「そうか。南方にいるという黄金の(たてがみ)を持つ神龍の噂は聞いたことがある」


…竜族にも学校みたいな制度があるのか?

いや、セフィ姉人間なのに神龍に教えを請うの?

もうワケわからん



だが、そう言いながらも黒竜は教えてくれた


不可逆の竜呪とは、一定以上の実力を持つ竜同士が争う場合に敗者にかけられることがある呪いだ

竜同士の戦いは、普通は生死を賭けて戦い敗者の命を奪って終わる

だが、中には相手の実力を認め、命までは奪わない場合がある

その際に、相手の竜の成長を奪う呪いをかけるのだ


かけられた竜は、その実力に比例して大きく力を奪われる

小竜に戻るほどの力を奪われたフォウルは、かなりの実力を持っていたのだろう



「…竜同士の決闘の末、不可逆の竜呪を使い命を奪わないなど非常に稀だ。相手が竜呪を使えるほどの格を持っていることが前提で、更にその相手に尊敬され命を惜しまれる必要がある。その雷竜は素晴らしい戦いしたのであろうな」


そう言って、黒竜はフォウルを見た


フォウルは、あの小竜の面影は全くない

堂々とした佇まいで黒竜を見上げている

よく見ると、フォウルがサンダーブレスを吐く時に一瞬だけ成長した姿を見せるが、それがこの姿なのかもしれない


「不可逆の竜呪は一時的に止めただけだ。我が死ねば、数刻後には小竜に戻るだろう」


黒竜はフォウルにそう言うと俺の方を向いた

体を動かすのが辛いのか、動きは非常に緩慢だ


「人間よ。縁もゆかりもない、竜である我の願いを聞き届けてくれて感謝する」


黒竜は、俺の目を見た

誇り高い偉大なる竜が、人間ごときの俺に感謝を述べるなんて


「…前も言っただろ? あんたは俺の国を守ってくれていたんだ。そのお礼をしたかっただけだよ」


一人で何年も苦痛に耐え、魔属性を吸収し続ける

その孤高さに俺は惚れたのかもしれない

惚れるってのは、女や恋愛だけじゃないってことだ


黒竜は、目を細めた


「この雷竜を連れて来てくれた礼だ。これを受けとるがいい」

黒竜が、口から何かを転がした


「これは?」

それは、一本の牙だった


「戯れで作った玩具よ。我の魔力を、ここの魔属性魔力と共に封入した」

そう言うと、黒竜は俺の持つ牙の機能を使()()した


「おおっ!」



俺の持つ牙から、一体の骸骨の戦士が現れた

ドラゴントゥースウォーリアー、竜牙兵というやつだ


竜の奥歯の牙には、高濃度の竜の力を宿している

これに、魔属性のネクロマンシーを応用すると、アンデッド戦士を構成できる

アンデッドとしての本能は持たず、術者の命に従うアンデッド・ゴーレムと言っていい存在だ

だが、竜の牙を使ったアンデッドには違いないので、聖属性の攻撃は弱点となる



「こ、こんな凄い物をいいのか?」


「我に返せる物が他にないのでな」

黒竜はまた目を細める


「…逆鱗まで譲ってもらったのに、充分すぎるよ。ありがとう…」


「ふっ、あれは我は命を救って貰った礼だ」



そう言うと、黒竜はフォウルの方を向いた


「待たせたな雷竜よ。…我の命の灯を、お前の力で消し欲しい。我の最期に闘争を与えてくれ」


「ガウ…」



フォウルが、それを聞いて四本足で立つ

サンダーブレスの準備だろう


これで終わりだ

大きくなったフォウルのサンダーブレスなら、弱った黒竜の命を吹き消すことが出来るだろう


高潔な、孤高な、そんな黒竜が今から消える

現実感が無い


セフィ姉、フィーナ、ジードも無言で見守る

黒竜が決め、求めた最期だ

人間の俺達が言えることは何もない



「最後にあんたの名前を教えてくれないか?」

俺は、最後に黒竜に話しかける


「名前だと?」


「この鎧、あんたの鱗で作ったんだ。この鎧にあんたの名前を付けさせてくれないか?」


「…」

黒竜は不思議そうに俺を見る


「…俺だけは、あんたという竜がここにいたってことを覚えていたいんだ。いいだろ?」


誰にも知られることなく、死んでいく竜

せめて、俺くらい…


「お前たち人間の言う名など竜は持たぬ。だが、人間にヴァヴェルと呼ばれていた時期ならあったな」

そう言って、黒竜は俺から目を逸らした


「ありがとう、ヴァヴェル。俺はシグノイアに生きる兵だ。あんたがやってくれたことは、俺が勝手に覚えておく」


俺は、そう言って敬礼した


「ヒャーン…」

リィも小さく鳴いた



黒竜はもう何も言わなかった

だが、また目を少し細めた

あれは黒竜が笑った時の仕草なのかもしれないな



黒竜はフォウルに向き直ると、首を上げて喉を見せる

そこは逆鱗で守られていた急所だ

だが、急所を守るべき逆鱗はもうない



「…さらばだ。雷竜よ頼む」


黒竜の言葉に、フォウルが口を開いた

フォウルの体にエネルギーが溜まっていく



バババババリバリバリバリーー………



フォウルの口から、サンダーブレスが放たれた






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