14話 骨折休み
用語説明w
フィーナ:二歳下でラーズの戸籍上の妹
今日は非番
軍隊の訓練は毎日あると思っていたら、それは平和な時の話
実戦に出続ける今は、防衛軍が精神的休養をとても大切にしている
まあ、その分クエストを受けて腕を磨けという放任主義な訓練制度はあるのだが
と言う訳で、フィーナと映画を見に来た
「足は大丈夫なの?」
フィーナがコーヒーゼリーを食べながら聞いてくる
喫茶店で時間潰し中だ
俺はチャイティーを楽しみながら答える
「回復魔法と回復薬でほぼ完治だね。助かるわー」
「…やっぱりやめた方がいいんじゃない? 防衛軍じゃなくても兵士にはなれるでしょ」
実戦で負傷したことをフィーナに話したら、予想以上に心配してきた
「防衛軍はいい所だよ。それに、俺はやっぱり何も知らないってことが分かったよ」
「ふーん…」
「剣でモンスターを切るとすぐ刃がこぼれるんだ。そして、足が折れると痛みで動けなくなる。知らなかっただろ?」
言われれば当たり前の事かもしれないが、実際に経験する事と理解力が違う
「でも、死んじゃったら何にもならないんだよ? 私達と龍神皇国で勉強や訓練すればいいじゃん。セフィ姉達だっているんだし」
「俺はお前達と一緒にいても強くなれないよ。才能が違うんだから、さ」
「そんなこと無いじゃん。学校時代に結果は残したでしょ?」
「運が良かっただけだよ。もう、足元にも及ばないって。俺は防衛軍で、お前達とは違う強さを見つけるからさ。」
「はぁ…」
フィーナはため息をつく
俺の考えが変わらないことが分かったのだろう
戦闘力はランク付けされている
上から
S
A
B
C
D
E
F
の七段階
一応、SSとSSSランクもある
伝説の「神らしきもの」や高次元生命体はSSランク
星を砕くほどの存在はSSSランクらしい
…SSSランクをわざわざ作ったってことはその存在の観測例があるってことなのかな?
簡単に言うと、
Fランクは、人間の成人男性の素手での戦闘力
Cランクは、戦車の迫撃砲の攻撃力
防衛軍だと、
Fランク 見習い兵士
Eランク 一般兵士
Dランク 上級兵士
Cランク 達人兵士 (固有装備、固有特性持ち前提)
…という感じだ
Cランクの戦車に勝てる兵士なんて想像もつかない
ちなみに、俺は見習いなのでFランク、サイモン分隊長とロゼッタはCランクらしい
防衛軍を含め、一般軍の最大戦力は基本Cランクなのだ
では、Bランク以上は何かというと『闘氣を使う戦闘員』となる
闘氣は、生命エネルギーである「氣」と、精神エネルギーである精力を合わせたもの
この闘氣は練り方によって様々な特性を持つが、一番の特徴は「包む」ことだ
自身の体を包んで防御力と身体能力を上げる
武器や防具を包むことで、強度を上げて攻撃力と防御力を上げる
強化内容が単純ゆえに、闘氣使いは同じ闘氣使いでないと倒すことが難しい
Bランクは、この闘氣を使えるかどうかが判断基準となっている
闘氣の防御力は戦車の砲弾を防ぎ、銃弾を跳ね返し、魔法も防御する
攻撃面も、強化された武器で切りまくっても切れ味は変わらないし、スタミナも強化されずっと俺のターン無双が可能だ
CランクとBランクの間には大きな壁があるのだ
ちなみに、フィーナは龍神皇国で戦闘員として就職していて、戦闘ランクはBランクだ
回復魔法と攻撃魔法を使える、賢者よりも攻撃魔法に特化した「大魔導師」だったりする
昔、アニメで見た「大魔導師」になった少年がカッコよくて目指したらしい
闘氣使いからすると、投石で骨折して動けなくなり死にかけるなんて苦労は分からないんだろうな
「さ、そろそろ映画館入ろうぜ」
俺は、じっと見てくるフィーナに声をかける
「ラーズ、本当に約束して」
「約束?」
「絶対死なないで。危なくなったら逃げてもいいから生き残って」
「…逃げる判断が正しいとは限らないし、逃げることによって死ぬこともあるんだぜ?」
フィーナが怒ったように睨んでくる
「分かってるって。絶対生き残る。死ぬ気があるわけないだろ?」
ちょっと気まずくなって取り繕うように答える
「約束したからね!」
フィーナが席を立つ
「兄思いのかわいい妹がいて嬉しいよ」
「ばーか! 心配させたんだから、今日はラーズの奢りだからね!!」
「お前の方が給料もらってるのにおかしくねーか!」
俺は、伝票を持ってフィーナを追いかける
話題の映画はまあまあ面白かった