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ですペア ~平凡な一般兵の苦悩~ 魔法、実弾兵器、スキル、ブレス、オーラ、召喚…即死級攻撃が多すぎる!  作者: ロロア
五章 戦闘スタイルと武器? どっちも完成させるに決まってるだろ
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147話 帰省2

用語説明w

フェムトゥ(仮):魔属性装備の外骨格型ウェアラブルアーマー。身体の状態チェックと内部触手による接骨機能、逆鱗による風属性軽減効果、魔属性による認識阻害効果を持つ


フィーナ:二歳下でラーズの戸籍上の妹、龍神皇国のBランク騎士として就職している

セフィリア:龍神皇国騎士団に所属、B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性


「ねえ、ラーズ。属性装備できたんでしょう? 見せてよ」

セフィ姉が子供みたいな目をして言ってきた


「ああ、うん。いいよ」


家の中で鎧を出すと狭いので、俺達は外に移動する


家のすぐ近くの小高い岡の上に登る

ここは小さいころの遊び場で、高台から下を見下ろせて気持ちがいいのだ


その途中、俺達のところに男が近づいて来た


「セフィリア様」


「ターレス、なぜここにいるの? 休暇届けは出しているはずよ」

セフィ姉が、珍しくイラッとした顔をした


「至急の確認事項だそうです。フィーナにもだ」


ターレスと呼ばれた男は龍神皇国の騎士のようだった

男は、専用タブレット端末をセフィ姉とフィーナに差し出す


セフィ姉とフィーナは嫌そうな顔をしながら端末を受けとった


「ラーズ。とりあえず、装備を見せてくれない? 気になっちゃうから」


俺は頷いて、鎧を倉デバイスから取り出す


「これが、老竜(エルダー)の逆鱗を使った属性装備! 綺麗な漆黒色ね」


「げ、逆鱗ですと!?」

ターレスまでもが驚いた


セフィ姉とフィーナは属性装備を一目見て納得したのか、木の下まで行き端末で騎士団員と映像通話を始めた


すると、ターレスが俺に近づいてくる


「お前が、セフィリア様が言っていたDランクの兵士か?」


「…はい、そうですけど」


騎士に特有の、兵士を見下す言い方

Bランク特有の、Cランク以下を軽蔑したような声

こういうタイプの言動は鼻につくんだよな


「装備を譲れ」


「は?」

いきなり何を言ってるんだ?


あの時の強盗被害の記憶がフラッシュバックした

一瞬、過去に戻ったと思うほどのデジャヴだ


「Cランク以下の兵士などに逆鱗など使いこなせるわけがない。私ならセフィリア様を守るためにつかうことができる、装備を譲ってくれ」


ターレスの目は本気だ

逆鱗とは、Bランクの目の色を一瞬で変えるほどの魅力を持つらしい


…まずい流れだ

あの強盗被害で学んだことは、舐められるなってことだ


「これは俺の大切な装備です。()()()無理です」


はっきり言い切る

曖昧じゃない、言い切ることが必要だ


「ならば、私と勝負しないか? 私が勝ったら装備を譲って欲しい。相応の礼はする」

そう言って、ターレスは背中の大剣を引き抜いて見せた


こいつはバカなのか?

その勝負は俺になんの利益があるんだ

それに、黒竜の逆鱗が金で買えるか!


「お断りします。この装備は()()()手放しません」


もう一度言い切る


「お前はセフィリア様を大切に思っていないのか? 私が逆鱗を持てばセフィリア様を守れるのだぞ」


まだ諦めないのかよ!

しかも、お前よりセフィ姉の方が強いだろうが!


ダメだ、完全に下に見ている俺の言うことなんか聞きやしない


よし、決めた

もうやることは一つだ



「セフィ姉ー!」


「お、おいっ!?」



俺は躊躇わずセフィ姉を呼ぶ

格下の俺が言ったって、こいつは聞きやしないんだ

ターレスがまずいという顔をしている


「どうしたの?」

セフィ姉が来てくれた


「ターレスさんが、俺の装備を譲れって言ってくるんだけどどうしたらいいかな?」


「い、いや、セフィリア様、それは違うんです! ただ、闘氣(オーラ)を使えない者では逆鱗の性能を使いこなせないと…!」


セフィ姉の目付きが変わる

セフィ姉は怒ったら怖い


「…Bランクの騎士がDランクから装備を譲らせる、そこに強制力が働かないとあなたは言い切れるのですか? そして、譲らせる正当性があるのですか?」

セフィ姉の語気は静かだが冷たい


「いえ、違います! ただ! 一応聞いてみただけで! 強制するつもりなど!」

ターレスの目には恐怖の色が浮かんでいた


でも、俺は追い討ちするぞ

だって、セフィ姉いなかったら、お前は俺から奪う気満々だっただろ?


「でも、ターレスさん、勝負して勝ったら鎧を譲ってくれって言ってましたよね?」


「いや、それは、私が直々にDランクに稽古をつけてやろうと! もちろん闘氣(オーラ)無しで!」


「その大剣で稽古なんかしたら怪我しますよ?」

俺は、ターレスが引き抜いた大剣を指す


「け、け、怪我など稽古に付きものだ! 痛みが怖くて戦いができるわけないだろう!」


へー、こいつは痛みを怖がらないのか?

それは…凄いことだ


だが、いい機会かもしれない

俺の技が、Bランクにどこまで通じるのかを試してみたい

今の俺の立場はターレスより圧倒的に有利だ

勝ち負け関係無く、装備は守れるだろうし



「本当ですか? ぜひお願いします!」


「え!?」


ターレスが驚愕の声を上げる

ターレスにとってはまさかの展開だろう


「ルールは、闘氣(オーラ)無しで、万が一私が勝ったらその大剣を貰えるってことでいいですか?」

ダメ元で、ターレスと同じ条件をぶつけてやる


「な!? これは天より飛来した隕鉄石を、大地の溶岩の熱で打った業物だぞ! お前ごときが…」


「だって、さっき勝ったら私の鎧を譲れって言ったじゃないですか。そういう条件は有りなのかと思ったのですが」


「ぐっ、そ、それは…!」


「大丈夫ですよー。たかだかDランクの私が、Bランクの騎士様に胸を借りるだけなんですよ? 万が一勝ったら、の話ですよ」

俺は爽やかな笑顔を心がけて言う


「む、ま、まあ、確かにな。そう言うなら、その条件でもいいだろう。では武器を一つ選べ。何でもいいぞ」

そう言って、ターレスは大剣構えた


よし、思ったより簡単に条件を飲んだな


俺は、昨日父さんから貰ったダマスカスナイフを取り出した


「…ラーズ、それでいいの?」

セフィ姉が驚いて言う


「貴様、私を舐めているのか? そんなナイフで私の隕鉄大剣星砕きを止められると?」


「私の身体能力では、剣で挑んでもターレスさんの大剣に叩き折られて終わりですよ。それに、ターレスさんの剣の腕が凄すぎて、剣で挑もうなんて思えないです」


「む、そうか? うむ、それなら仕方がないな」

ターレスの顔がにやける


こいつ、嬉しそうだな

さっきから、ちょいちょい持ち上げるとヒョイヒョイ乗ってくれる

…負けるとは微塵も思っていないからだろうな



「じゃあ、始めるわよ?」


俺とターレス頷く


「始め!」

セフィ姉の声が響く



俺はナイフを下ろして、ターレスに普通に歩いていく

ターレスは大剣を中段に構えている


大剣とナイフ、リーチの差は歴然だ

つまり、俺は最低一回は最初の攻撃を避けなければならない


気を付けるべきは突きだろう

だが、どんな攻撃もナイフでは受けられない

だから、攻撃は考えず避けに徹する



無造作に近づく俺に、ターレスは戸惑っているように見える

こいつは表情を隠す気が無いのか?



「はぁっ!」


ターレスが選んだのは、飛び込みながら大剣を上段に振り上げ、着地の前に降り下ろす上段斬りだ



俺は落ち着いて動きをよく見る

防御のみを意識していると、フェイントも無い大振りの攻撃はよく見える



ドスッ


半歩左に逸れて大剣をかわす

早いが、素直過ぎるな


逆手に持ったナイフを、大剣の柄を握るターレスの右手の親指に刺す

同時に、刃を滑らせて親指の切断を狙う



「ぐわあぁぁぁぁぁっ!」


ターレスは痛みに大声を上げる



あぁ…、それはダメだろ

一つしかない武器を手放しちゃった


右足を踏み込んで三連突き



「ぎゃぁっ!」


ターレスが顔をかばいながら、またも悲鳴を上げる

狙ったのは目だが、恐らく外れた


気がつくと、ターレスの右手の親指が繋がり始めていた

こいつ、再生能力持ちだ


こいつ、闘氣(オーラ)と再生能力を持ったチート野郎のくせに、俺に勝負を持ちかけて属性装備奪おうとしやがったのか



俺は一応セフィ姉を見る

セフィ姉に特に止める素振りはない

いいってことだろう


俺は、ターレスの再生中の指にナイフを叩きつける

切断できればよし、ダメでも痛みで恐怖が刻まれるだろ?



「ぎゃっ! くそっ! このガキがぁぁぁ!」

ターレスが突っ込んでくるが、冷静さを欠いている


俺は腕を掻い潜り、腹にナイフを刺す

だが、筋肉が部厚く思ったほど刺さらない

やはりBランクだけあって身体能力()凄い


「うおおぉぉぉっ!」

ターレスが拳を()()()()()



マジか…、Bランクが拳を振り上げちゃうのか

ボクシングを習い始めた素人が、最初に直されることだろ


振り上げたパンチは、打つタイミングは丸分かりで避けるのは難しくない

だが、ターレスのパンチは恐ろしく早い

威力もあるだろう


俺はパンチを避け、右手でターレス右肩を掴んで引っ張り、そのまま背中に回る

そして、両ヒザの裏にナイフを突き刺し筋の切断を狙う



「がっ…!」


ただ切るだけじゃない、刃を刺した後に捻りを加えた

これで、再生にも少しは時間がかかるだろう


膝から崩れ落ちるターレス

俺に対して、尻を付き出すように倒れた


俺は、しっかりねらって股間にナイフをざっくりと刺す、もちろん捻りも加えて



「ぎょわっ…! ……!」


股間から血、口から泡を吹きながらターレスが倒れた


痛みが怖くて戦いができるかって、完全に闘氣(オーラ)を使って怪我したことが無い奴の言葉だろ


俺は、デモトス先生に切り刻まれて心が折れた

俺は痛みが怖い


なんで痛みによる拷問が成り立つか考えろ

痛みって簡単に我慢できるものじゃないぞ?




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