13話 医務室と整備室
用語説明w
MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット
エマ:医療担当隊員。回復魔法を使える(固有特性)
シリントゥ整備長:整備班の班長。ドワーフのおっさん
目の前で、女性隊員が呪文を唱えながら回復魔法を発動する
シュウゥゥゥ・・・
骨折した右足に違和感があり、痛みと腫れがひいていく
「骨がくっついたか確認…」
更に回復薬を幹部に塗布しながら言う
彼女は1191小隊の医療担当隊員のエマ
ノーマンの黒髪の女性だ
エマは医療器具で右足を見ながら、
「骨はくっついてる…数日は安静に…」
と、消え入りそうな声で言う
「う、うん…」
ゆっくり立ってみると、ちょっと痺れるものの痛みはない
「回復魔法凄いね。本当にありがとうございます」
俺はもう一度お礼を言う
「…」
エマは恥ずかしそうにうなずく
無口だけど分かりやすいな
「何かあったら来て…」
エマに見送られて、医療室を出る
単純骨折でよかった、後遺症もなくすぐに回復できた
人間は体の一部を損傷しただけで戦闘能力が著しく下がる
右足が折れただけで、痛みで動けなくなった
今回は火力で勝っていたから押しきれたが…
固有特性というものがある
強力な武器や防具、卓越しや技能、そしてロゼッタの持つ突出した身体能力などだ
いつかは俺も固有特性を持ちたい
出来れば、過去の英雄が持つような凄い特性が
固有特性を持つことができれば、危険を乗り越えられる可能性が高くなる
だが、そんなものは一朝一夕で手に入る訳がない
出来ることを一つづつやっていこう
最初は防具を買うのが現実的かな
死にたくないし
・・・・・・
MEBハンガー
シリントゥ整備長がコーヒーを飲んでいた
俺に気がついて手を上げてくる
「おお、ラーズ。怪我したらしいな、大丈夫か?」
「お疲れ様です、整備長。右足を骨折しましたが、医療室で直してもらいました」
「ミノタウロスに石投げられたんだって? 運が悪かったな」
「まあ、生き残れたんで幸運だったのかもしれませんけど」
「前衛は、後衛のリスクを分散させる危険なポジションだからよ。やっぱり怪我する奴は多いよな」
「私は別に前衛希望じゃないんですけどね。」
「じゃ、何希望なんだ?」
「そりゃ、MEBのパイロットですよ」
「ほー、そうなのか! うちの小隊のMEBは三機で、パイロットは一人しかいないから乗れないことはないぞ? だだ、うちは隊員数が少な過ぎて随伴する歩兵も足りてないから、すぐには無理だろうけどな」
「やっぱりそうなんですね…」
MEB
多目的身体拡張機構
乗り込み型のロボットのことだ
MEBは花形の職種だ
数が少ないのも理由だが、何より活躍の幅があるからだ
簡易のものは装着型のアーマータイプもあり、単純に身体能力を強化する鎧のような外見だ
だが、一般的には大型の乗り込み型ロボットタイプをMEBと言っている
乗り込み型が重要である点、それは「外界から隔離されたコックピット」の存在だ
強風、炎、有害な大気や嵐の中、あらゆる環境からパイロットを守る空間
それは、どんな環境下でも作業が出来る、という強みとなる
また、汎用性も利点だ
ある拠点に基地を作る必要があるとする
本来であれば土木、作業車両と護衛の戦闘車両が必要になる
だが、MEBがあれば土木作業と戦闘が一台で両立できる
戦車や戦闘ヘリに戦闘性能は劣る
しかし、戦闘と作業を両立できる器用さはMEBの特権だ
更に、刀や打撃武器、盾などの装備でき、戦闘からモンスター退治まで独自の使い方は多い
しかし、メンテナンスが難しいというデメリットもあったりする
「ま、ゆっくりやっていきますよ。いつかは乗ってみたいので」
「そうだな、ゆっくりやんな」
「ところで整備長、私にいい鎧教えてくれませんか? 今回、骨折して動けなくなったので対策したいんですけど」
「鎧か。そりゃ、骨折しない防御力って意味か、骨折してもある程度動ける鎧か、どっちだ?」
「え、防御力の意味だったんですけど、骨折しても動けるってどういう鎧なんですか?」
「鎧というより、外骨格に近いタイプの鎧があるんだ。物によっちゃ、体内に触手をぶっ刺して骨を接いじまうものもあるらしいぜ」
「すげー痛そうですね。でもとりあえず動ければ、回復薬やカプセルワーム使うチャンスも作れますからいいですね」
「普通は怪我しないために防具選ぶんだが、中々職人の興味を引くことを言うじゃねぇか。よし、今度調べといてやるよ」
「助かりますよ、ありがとうございます!」
俺は自販機でカフェオレを買い、一本差し出す
整備長は、コーヒーにめちゃくちゃ砂糖を入れる甘党みたいだから喜んでくれた
日々の目標設定は大事だ
装備の充実、これが当面の目標だ
固有装備持ち、カッコいいもんね