142話 Cランク相当の認定
用語説明w
ゼヌ小隊長:1991小隊の小隊長
サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)
ジード:情報担当の魔族の男性隊員、補助魔法が得意
メイル:1991小隊の経理と庶務担当、獣人の女性隊員
隊舎に出勤すると改めて思う
この小隊に配属されて良かった
黒竜の扱いの方針
本来、小隊の利益として考えるなら、黒竜を討伐する方向の方がいいに決まっている
Aランクの老竜の討伐報酬と素材、魔昌石の調査の主導報酬、発見すれば更に報酬が得られるのだ
だが、俺のわがままともいえる黒竜への扱いに同意してくれ、組織を半分騙してまで黒竜を守ってくれた
小隊の隊員全員が、一番下っぱの俺の意見に同意してくれ、黒竜への敬意を肯定してくれたのだ
仕事へのモチベーションは、利益ももちろん必要だ
だが、うまく言えないけど、利益にならなくてもこういうことがあると、分かってもらえた嬉しさでモチベ爆上がりだぁぁぁぁぁってなるんだよなぁ…
このお礼は、絶対に仕事で返そう!
朝から、仮設会議室に隊員全員が集まっている
とは言っても、防衛作戦にカヤノ、ロゼッタ、リロ、さらに装甲戦車でクルスとホンが出動している
今回は、中隊が指揮する規模の大きいミッションらしい
各小隊から人員を吸い上げて行う共同作戦だ
戦闘担当で残っているのは、サイモン分隊長とジード、そして俺だけ
なぜかというと、この三人には辞令の交付があるからだ
ゼヌ小隊長が前に出る
「では始めましょう。サイモン君とジード」
「はい」「はい」
二人が並び、敬礼する
「サイモン君には戦闘班担当の副隊長を命ずる」
「拝命します」
「ジードは庶務・整備班を担当する副隊長を命ずる」
「拝命します」
パチパチパチパチ…!
俺達は皆で拍手を送る
「二人共、やってもらうことは今までと変わらないわ。ただ、上から副隊長を指定していない小隊はすぐに指名しろなんていう通知が来たから指名しただけよ」
ゼヌ小隊長は二人の顔を見る
「だって、指名なんてしなくても二人は副隊長の仕事をとっくにやってくれていたからね。でも、改めてよろしくお願いするわね」
「はい!」 「はい!」
二人が前から下がる
「では、次はラーズの番ね」
「はい!」
俺は前に出る
「あなたの称号が、上位兵士から達人兵士に格上げされました」
「拝命します」
俺は敬礼しながら答える
「これで防衛軍は、あなたの戦闘ランクがCランク相当と認定したことになるわ。戦闘ランクの審査はこれからになるけど、ランクアップは確実でしょうね」
特別クエストでの活躍、今回のバンパイアとの戦闘での功績を評価されたそうよ、とゼヌ小隊長が付け加える
「ありがとうございます」
そうか、ついに俺もCランクか…
Bランクの戦闘員とかバンパイアとか黒竜とかみてると、Cランクのサイモン分隊長やロゼッタ、ジードが苦戦する場面を見るけども…
よく考えろ!
Cランクって、隊員個人が戦車に匹敵する戦闘力を持ってるってことだからな!
しかも俺達兵士は、闘氣を使えない状態で戦車並みの戦闘力を持ったっていうことだ
いや、よく考えなくても凄いだろうよ!
ヒャッハー! 最高の気分だぜ!
「…嬉しそうね?」
「え、いや…」
まさか顔に出ていたのか!?
恥ずかし過ぎる…!
「それでラーズにお願いがあるんだけど…」
ゼヌ小隊長が申し訳なさそうに言う
「はい、何でしょうか?」
「あなたの戦闘ランクのランクアップの上申を少し待って欲しいのよ」
「え?」
ランクアップ上申
戦闘ランクのランクアップは、戦闘時の功績や能力、装備を審査した上で決められる
それは、戦闘ランクによって防衛作戦やクエスト、つまり戦場の難易度を決められることが多いからだ
だからこそ、慎重に決められるのだ
このランクアップは、基本的には小隊の隊長、つまりゼヌ小隊長が推薦することによって審査されるのだ
「あなたの称号が格上げされたことで、あなたの給料もCランク相当に上がっているの。だから、Cランクにならなくてもデメリットは特にないのよ」
そう言ってゼヌ小隊長が続けた
我が第1991小隊は、総員十三名だ
その内、Cランクが、サイモン分隊長、ジード、カヤノ、ロゼッタ、リロ、エマの六人
これは異常な数だ
普通の小隊は平均三十名で、Cランクはいても一人、いないことも多い
だが、うちは小規模小隊にもかかわらずCランクが六人、隊員の半分がCランクなのだ
エマは非戦闘員だから除いたとしても、戦闘担当の全員がCランクとか有り得ないだろ! ってことらしい
「あなたがCランクになっちゃうと、本当に戦闘員全員がCランクになっちゃうのよ。まさか、みんながみんなCランクに上がるなんて思いもしなかったから…、嬉しい悩みなんだけどね」
ただ、このままだとCランクを他の小隊に異動させろ! とくるのは明らかだ
「だから、いずればれるでしょうけど、それまでは黙っていたいのよ」
「分かりました。私はこの小隊で働ければ特に問題はありません」
「ありがとう、ラーズ。助かるわ」
こうして、辞令交付が終わる
「さ、今日のメインイベントよ! やっと隊舎の改築が終わったわ。引っ越しと、リストアップしていた物品の買い出し、午後は新庁舎の落成式があるから準備をよろしくね」
ゼヌ小隊長の声で全員が動き出す
そう、今日は新隊舎落成式なのだ
「ラーズ、今日は来賓の方の案内お願いね」
メイルが席次表の紙を渡してくる
「誰が来るんですか?」
席次表を見ると、
地元漁業共同組合長
地元農業共同組合長
地元商店街振興会長
地元警察署長
地元消防防災暑長
地元町長
防衛陸軍第七中隊長
防衛海軍第七方面第六基地隊長
湾岸警察第七方面分駐所長
港湾局入管保安庁第七支部長
「やっぱりうちは、海沿いだけあって海関係の来賓も多いんですね」
「結構来るでしょ? 間違えないように、入口で名札を配るからね」
「分かりました」
受け取った席次表をポケットにしまいながら、俺は荷物運びに参加しようとすると…
「ラーズ!」
ゼヌ小隊長に手招きされた
「言い忘れたけど、特別クエスト担当はもう少し続けられる?」
「はい、大丈夫ですよ」
「ありがとう、助かるわ。もう少し特別クエストを消化したら、うちの小隊の順番は終わるからよろしくね」
特別クエスト担当は、要するに未処理クエストの消化だ
中には緊急性が高いものもあるので、なんとか処理をしていく必要がある
そこで、各小隊が順番に人を出して行くことで、集中して未処理クエストを消化していくのだ
もうすぐうちの順番が終わる
俺としても、一気に金を稼げて経験にもなる
忙しすぎるという辛さはあるが、もうしばらくなら問題はない
「あと、例のあなたの実家に帰って子供のドラゴンを連れて来るって話なんだけど、出国の申請は出しておいたから。結果はしばらく待ってね」
そう、俺の実家は、龍神皇国のファブル地区にある
シグノイアはハカルとの実質的な戦争状態なので、出国には制限があるのだ
「はい、ありがとうございます」
俺は荷物運びに戻る
「おい、ラーズ! 昼には買い出しに行くから早くしろよ!」
「分かりましたー!」
・・・・・・
式は順調に進み、無事に終わった
その頃には防衛作戦に出動していた隊員達も帰って来た
新隊舎の新しい食堂には料理が残っており、酒も残っている
…なにが言いたいかというと、ここからが本番ってことだ
そもそも、来賓がいると酔っぱらうこなんかできない
「うめぇっ!」 「シューマイちょうだい!」 「ホッケなんか持ってきてくれるのねー」 「おまかせオードブルいいじゃん」
残したらもったいないし、隊員全員で残った料理と酒で思いっきり食って飲む
二人の副隊長任命と俺のCランク相当認定で突発のお祝い会となったのだった
ただ酒最高!
隊員人事記録(称号更新)
氏名 ラーズ・オーティル
人種 竜人
所属 1991小隊
称号 達人兵士 ←New
通り名 道化竜
戦闘ランク D
固有装備
・フェムトゥ R3(現在使用不可)
・ホバーブーツ
・ロケットハンマー
固有特性
・ナノマシン統合集積システム2.0
・ホバーブーツによる高機動戦闘
得意戦闘
・囮、味方の編成に合わせた柔軟な立ち回り
・攻撃: 遠、中距離の射撃、杖とモ魔の魔法、近接武器
・式神による攻撃補助
ブクマ、評価ありがとうございます!
おかげさまで四章終了です
次から五章を、またまったり続けたいと思っています
引き続き読んでいただけると嬉しいです