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141話 属性装備費用の完済

用語説明w

デモトス先生:ゼヌ小隊長が紹介した元暗殺者で、ラーズの戦闘術の指導者。哲学と兵法を好む

スサノヲ:見た目は赤ずきんをかぶった女の子。正体は、怪力の腕利き鍛冶職人でジャンク屋

フィーナ:二歳下でラーズの戸籍上の妹、龍神皇国のBランク騎士として就職している

ヒコザエモン:泉竜神社の宮司で霊能力者。眼鏡をかけたエルフ


デモトス先生とスサノヲの店、ジャンク屋に向かう


「いやー、借金が無くなるって気分がいいものですね! 世界が輝いて見えますよ」


「そこまで借金の返済に苦労していたかね? それに、小隊の特別支援枠で払うだけだからまだ完済になってないじゃないか」


属性装備費用が一千万ゴルド

そして、残りが八十万ゴルドなのだ


今回のバンパイア退治や調査報告の報酬、アンデッドハートの売却額でそれ以上の収入となりそうなので、メイルに頼み込んで八十万ゴルドを隊の特別支援枠で借りたのだ


だって、早く金払って属性装備ほしいじゃん!

だいたい、鎧無しでモンスター戦闘とかおかしいよ! いつか死ぬから!


「ラーズ、勘違いしていないかな? もし属性装備があったとして、黒竜の力がなかったらバンパイアとの戦闘で生きて帰れたと思うかね」

デモトス先生に一瞬で思っていることを見透かされた


「え…、いや、それは無理…かも…」


確かに、優秀な装備があったところで、あそこまで戦闘力に差があると焼け石に水だ


「そういうことだよ。君たち三人が生き残ったのは、間違いなく判断力と諦めない意志によるものだ。防具や武器を過信してはいけないよ」


「はい…」


「間もなく、私がなぜ防具を使わせなかったかが分かるさ。()()()()()も近いからね」


「…!」


そんな話をしているとジャンク屋に着いた




「こんにちはー」


店に入って店員の婆さんに挨拶

もう慣れたもんだ



「デモトス先生! 来て下さったんですね!」


「ああ、スサノヲ。お邪魔するよ」

スサノヲは天使のような笑顔でデモトス先生を迎えた


「ラーズ、お前来るに遅ぇーんだよ。金持って来たんだろうな?」

一瞬でヤンキーに戻るスサノヲ


「いや、態度違いすぎだろ! 意味わかんねーよ! 分からなさすぎて気持ち悪ぃーよ!」


「だ、誰が気持ち悪いだ! 殺すぞ!?」


そんな俺達をデモトス先生が手で止める


「さ、座って話そうじゃないか。相変わらず仲がいいみたいだね」



それ以上何も言えずに俺達は席に着いた




「よし、入金は確認できた。これで、属性装備が作れるぞ。期待してくれよな」


「ああ、頼むぜ。あと、スサノヲが前に黒竜の鱗持ってこれないか言ってただろ?」


「ああ」


「手に入ったんだよ」


「…」


黙ってしまった


「スサノヲ?」


「な…」


「な?」


「なにぃーーー!?」

スサノヲが突然大声で叫んだ


「うわっ!?」


「お前、マジかよ!? 早く言え! 見せろ! 早く!」


「落ち着け! 分かったから!」


俺は黒竜の鱗が魔属性で汚染されていることを説明する


「と、いうわけで魔属性汚染が凄いんだ。危なくて倉デバイスから出せないんだよ」


「じゃあ、この属性遮断の壺に入れてくれ。これなら汚染されないから」


「分かった」



俺は、倉デバイスから出した黒竜の鱗を触らないように属性遮断の壺に入れる


「凄ぇ…!竜の鱗が…9枚もある!」



竜の鱗


高い硬度と、持ち主の竜の属性を帯びた素材だ

防具の優秀な素材となるが、高い職人の腕が必要となる

生体素材にもかかわらず、加工に成功すると金属のような粘性を持たせることが可能



「そんなに凄い素材なのか…」


「職人にとっては一番欲しい素材の一つだぞ。これだけありゃ、何枚かはあまるぞ」


「じゃあ、余った鱗は属性装備の代金にスサノヲが受け取ってくれよ」


「な、何だと!?」


属性装備は、本来なら五千万万ゴルド以上

破格すぎると思っていたんだ


「い、い、いいのかよ、こんな貴重なもの」


「ああ、俺にはこれしか返せる物がないからな。ただ、その鱗は黒竜が俺のためにくれたものだ。大事に使ってくれよ」


「ああ、分かった。ありがとな!」


スサノヲはひまわりみたいに笑った

多分、こっちが素の笑顔なんだろうな




「で、フェムトゥはいつぐらい完成するんだよ?」


「ああ、これからの流れを説明しないとだな」


スサノヲが説明をはじめる


俺のフェムトゥは、今は細長い壺の中で魔属性オーブが仮止めされているらしい


これから魔導高速遠心浸透機のある施設に持ち込み、防護服を着て黒竜の鱗を加工

フェムトゥにオーブと共に装着して()()()()()完成させる


この素材の段階だと、まだ属性が浸透していない

フェムトゥの場合は魔属性にまみれているだけだ

本来なら、浸透には数十年という時間がかかる


そこで、魔導高速遠心浸透機を使う

これを使うことで浸透を加速でき、約三日で属性装備が完成するのだ

浸透して属性装備となれば、魔属性は鎧から拡散せず触っても問題がなくなる



「数十年が三日って極端すぎるだろ!」


「だから、高い金払ってまで使うんだよ。使用料二百万ゴルドだからな?」


そ、そうだった

フェムトゥは呪われていた分安くなって百四十万ゴルドだった

フェムトゥよりも使用料の方が高いってことだ…


「…納得したよ、よろしくな」


「ああ、分かったらさっさと帰れ。あたしは仕上げの設計図を書かなきゃいけないからな!」


「言い方酷くねーか!?」


だが、もうスサノヲは聞いていなかった


「彼女は職人モードに入ったようだね。安心して任せようじゃないか」


「…はい」


俺とデモトス先生はジャンク屋を後にした




・・・・・・




デモトス先生は、


「今日はスサノヲの顔を見に来ただけなんだ。ラーズも今日は休みだろう? ゆっくり休みなさい」


そう言って帰っていった


俺は、フィーナを誘って泉竜神社に行く

宮司のヒコザエモンさんにお礼を言いに行くためだ


「魔属性中毒になった時に駆けつけてくれたのに、俺自身が挨拶に行けてないんだよ。特別クエスト担当になったら忙しい過ぎてさ…」


「そうだったんだ。一応、ラーズが入院している時に私がお礼を言いに行ったよ」


「で、できる女だな、お前は! 助かるよ、ありがとう」


「へっへっへ。ちょうど今日は、お昼は行きたい油そばの店があるんだよ」


「お前、最近生活費出してないの忘れてるだろ?」


「……あ、着いたよ!」


「無視かよ!?」



境内にはいると、リィが嬉しそうだ


「ヒャンヒャーン!」


空でくるくる回っている

神社の霊気が好きなのだろうか?


「あ、ラーズさんにフィーナさん。リィも元気そうだね、こんにちは」

ヒコザエモンさんが箒を持って歩いて来た


「あ、ヒコザエモンさんご無沙汰してすみません。魔属性中毒の時は色々とありがとうございました」


俺は頭を下げる


「いえいえ、とんでもないですよ。おかげさまで、1991小隊様との縁が持ててお得意様になってもらってるんです。お礼を言うのはこちらの方ですよ」


ヒコザエモンさんも頭を下げる

相変わらず商魂たくましい


そういえば、今回黒竜の洞窟に入る時に使った魔属性対策の護符もヒコザエモンさんから仕入れた物だったな


俺達は立ち話をした後、リィの餌となる霊札を買って神社を後にした

ついでにアンデッドや悪魔系に効く新商品の聖水も、営業に負けて買わされてしまった…



飯を食いに行きがてら、フィーナに黒竜のことを話す


「え! フォウルを連れて来るの!?」


「そうなんだよ。死ぬときは同族に殺されたいんだって。俺を助けてくれた黒竜だから、最期の頼みを聞いてあげたいんだよ」


「でも出国許可でるの? それに、黒竜って老竜(エルダー)なんでしょ? フォウルのブレスで大丈夫なのかな」


「いや、俺も力不足じゃないかって言ったんだよ。そうしたら、不可逆の竜呪だから大丈夫とかなんとか…」


「ふーん、黒竜がそう言うなら叶えてあげればいいんじゃないの。ね、実家帰るときは私も一緒に行くよ! セフィ姉やミィ姉にも言っておくから、日程決まったら教えてね」



ちょうど、油そばの店に着いたので俺達は店に入る



「カエデさんに大学芋頼まれたから、この後行こうよ」


「前に凄い並ばされた所だろ? もう嫌だよ」


「あーあ、サクラちゃんが楽しみにしてたのになぁ。かわいそう…」


「…」


俺達のアパート「メゾン・サクラ」の管理人カエデさんとその娘のサクラちゃん

さすがに、この二人の頼みを断るわけにはいかない…


結局、大学芋ごときにまた行列に並ぶことになった

フィーナのニンマリ顔が腹立つ!


こうして、久々の休みは平和に過ぎていくのだった

バンパイアに殺されかけた分、平和のありがたさが身に染みるぜ…



読んで頂きありがとうございます!

明日の投稿で四章終了です

お付き合い頂けたら嬉しいです

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