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140話 黒竜の扱い

用語説明w

シリントゥ整備長:整備班の整備長。ドワーフのおっさん

クルス:ノーマンの男性整備隊員、車両の運転も兼務

ホン:ノーマンの女性整備隊員、車両の運転も兼務

エレン:獣人の女性整備隊員。冒険者ギルドの受付も兼務

隊舎に帰って来たのは夜の十時を過ぎていた


「あっ帰って来た!」


「大丈夫だったのか!?」


「お帰りなさい!」


隊員達が待っていた


「何で帰ってないんだ? 先に帰れと言っただろう」

ジードが言う


「みんな心配だったんですよ。あとは、早く話を聞きたかったんです」

エレンが笑いながら説明する


「早くバンパイアハートを見せてくれ! ワシは見たことなかったんだ」

シリントゥ整備長が興奮している


「これだよぉ!」

ロゼッタがバンパイアハートを取り出してみんなに見せていた


「綺麗…」

ホンがうっとりしている



カヤノがその横を抜けて俺のところにやって来た


「バンパイアは強かったんでしょ。大丈夫だったの?」


「左腕骨折と、脇腹の肋骨骨折、挫滅創、刺創ってところでしょうか」


「相変わらず怪我はしてるのね…」

カヤノに呆れられる


だが、今回はバンパイアが相手だから不可抗力だ

カプセルワームで止血と消毒、回復薬で代謝促進、ナノマシン群による適切な治療ですぐに復帰できたし



その時、奥からサイモン分隊長が大声で俺達を呼んだ


「こら、ロゼッタとラーズ! 最初はゼヌ小隊長に報告だろうが!」


「あ、はい! すみません!」 「はぁい!」


ちょうど、奥からゼヌ小隊長が来たところだった


「大丈夫よ。三人ともお疲れ様、ケガはないのよね?」


「はい、三人とも軽傷で重大なケガはありませんでした」

ジードが代表して答える


パンパンッ!


ゼヌ小隊長が手を叩く


「じゃあ、今日はもう遅いから解散! 詳しくは明日にしましょう。三人とも、朝一でエマから魔属性汚染の検査を受けてね」


「装備品は除染するのでこのシートに置いて下さい!」


「三人とも、夜に気分悪くなったらすぐに電話して…」


こうして、全員が片付けと後処理に取りかかってくれた

ありがたや…




・・・・・・




疲れきっていたのか、布団に倒れ込んだ瞬間に意識が飛んで朝になっていた

風呂も入らずに寝てしまうとは…


横にはジードとロゼッタが俺と同じ状態で布団に突っ伏している

女性と雑魚寝だったのに全くときめきが無い


結局、昨日は帰るのがめんどくさくなって三人とも宿直室に泊まることにしたのだ


とりあえずシャワーを浴びてくる

疲れが取れてねー…


「詳細な報告は、後で会議室でみんなで聞くわ。先に医務室に行ってきなさい」


ゼヌ小隊長の指示で、俺達はエマの所に行く

エマが医療室で待っていた


「検査をします…」

各種簡易検査を三人で受ける


検査の結果待ちの時のちょっと質問


「ね、エマ。前にフランケンシュタインと戦った時に我を忘れてエマに止めてもらったことがあったでしょ? あの時と同じような状態にまたなったんだけど」


「アサルトライフルをバンパイアに撃ち尽くした時でしょぉ? 焦って我を忘れただけだと思ったけど違ったのぉ?」


そう、まさにあの時だ

普通は効果の確認もしないで撃ち尽くすなんてしない

しっかりとロゼッタにもばれていたらしい


「うっ、そうです。いや、自分でも我を忘れていてビックリしたんですよ。初めて実戦でサイキック使ったので影響があったのかなって思いまして」


「…可能性がないとは言えないけど…、サイキックは脳の疲労による集中力や認知能力の低下が主な症状…。感情の暴走等は他の要因…例えば実戦や強敵への精神的なストレスの影響の可能性の方が大きいと思う…」

エマが考えながらも答えてくれた


「やっぱりメンタルの弱さかー! 心を鍛えます…」


「デモトスさんの訓練が足りないんじゃないか?」

ジードがニヤッと笑う


「これ以上増えたら死にますって!」


俺達は冗談を言いながら医務室を後にした

ちなみに検査は全員異常なし、よかったよかった




俺達が仮設会議室に入ると、もうみんな揃っていた

仮設会議室が、MEBハンガー内に椅子を並べただけのものなので当たり前か


ジードが代表して調査状況を説明した


・洞窟の入り口が壊された状態で発見

・バンパイアとの遭遇

・黒竜をバンパイアが魔法で拘束していたこと

・バンパイアが竜を喰らって強化された場合の危険性

・そして、格上の敵と戦うことを選んだこと


自分達の判断の是非を問う必要がある

未来の危険性の除去とリスク、()()()()と判断した根拠を話していく


すべて終わると、ゼヌ小隊長が口を開いた


「攻めるのも退くのもリスクはあり、現場のあなた達が決断した。リスク込みで総合的に判断して、安全性よりも危険性の除去を優先した。そうでしょう?」


ゼヌ小隊長はニッコリ笑う


「どんな結果になろうと、私は現場のあなた達の判断を信じる、それ以上言うことは無いわ。しかも、今回の結果は大成功だったのだからね。本部に連絡してしっかり評価と報酬を貰いましょう」


周りを見ると、みんなが頷いてくれた


俺達の判断は1991小隊の判断となる

間違っていれば小隊が罰を受けることになってしまうのだ

俺達はホッと胸をなでおろした



「ありがとうございます。では、次はラーズだ」

ジードが言う


「え?」


「え、じゃない。黒竜との会話をしたのはお前だけなんだぞ」


そう言われて納得する

俺は慌てて黒竜との会話の内容を話す


・黒竜は大地属性の地竜であったこと

・地下に魔昌石があり、そこから魔属性の魔力が吹き出ていること

・地竜が長年魔属性を吸収する事で、魔属性の拡散を抑えていたこと、その影響で地竜が黒竜になってしまったこと

・地竜が間もなく命を落とすこと

・殺してほしいと頼まれたこと



「あの黒竜は、体を動かすのも辛い様子でした。できれば、もうすぐ命を落とす…その時までそっとしておいてあげたいんです」


そして、俺の意見を伝える


「俺は、あの黒竜の高潔さに感銘を受けました。出来ることなら、あの黒竜の最期の頼みを叶えてやりたいです」


「私からもお願いします。黒竜の話は矛盾も無く信憑性もあります。つまり、シグノイアはあの黒竜に恩があるということです」


「私からもお願いするよぉ。黒竜がバンパイア倒してくれなかったらこうして帰ってこれなかったんだからぁ!」


ロゼッタとジードも同意してくれた



「その竜偉いね…! ずっと一人で魔属性を止めてくれてたなんて」

リロが素直に驚く


「黒竜の存在を報告すればすぐに調査とはならないんじゃないの? Aランクの竜をわざわざ刺激する理由もないし」

メイルが意見を言う


「だが、黒竜の存在を示す証拠が今のところ映像しかないんだろ? 本部が魔昌石の存在を重要視したら、調査を決行しちまうかもしれないぜ」

今度はサイモン分隊長だ


ゼヌ小隊長も頷く

「そうなのよね。映像だけじゃ戦闘力も分からないし、むしろ竜の素材ほしさに本部が調査を決めかねないのわ。そうすると黒竜が死にかけていることがばれちゃうから更にまずいし…」


「そこなんだよなー」 「うちの小隊の手柄だってのに、黒竜の素材狙いとか…」 「本部ならやりかねないわ」

シリントゥ整備長やみんなが口々に言う


「何か黒竜の存在や強さを証明できるものがあればいいんだけど…」

ゼヌ小隊長も困った顔をする



黒竜の存在を証明できるもの…?


「竜の存在を証明できるもの、ありますよ?」


「…だよなぁ、って、何ぃ!?」 「あるの!?」


皆が驚いて大声を出す

こっちがびっくりするわ!


「黒竜にお願いして、鱗をもらってきたんですよ。ただ、魔属性で汚染されているので倉デバイスから出せないんですよね…」


「あ、属性遮断のケースが医療室にあるわ…」

そう言って、エマが医療室に行ってくれた



透明のケースに黒竜の鱗を入れた


「竜の鱗がこれだけ汚染されているなんて、魔属性が噴出している証拠にはなりますね…」

エレンが属性値を測定する


「黒竜の鱗って大きいんだな」

クルスが鱗の大きさに驚いている


「これだけの大きさじゃ、老竜(エルダー)は間違いないだろう。これは手を出していい大きさの竜じゃねえぞ」

シリントゥ整備長が鱗を観察している


「…とりあえず、この鱗を資料にすれば黒竜の危険性を説明できそうね。魔属性汚染の現場で老竜(エルダー)と戦うなんて危険過ぎてありえないし、調査の見合せを進言できるわ。もちろん、黒竜が死にかけということは黙っておきましょう」

ゼヌ小隊長が方針を決めてくれた


「ありがとうございます!」


「後は、その黒竜を殺してくれっていうお願いだけど…」


「は、はい」


俺が実家に帰ってフォウルを連れてくる

黒竜と会わせる

あとは何とかなる


…なんだこれ! こんなの計画でも何でもないじゃん!

自分で言っててつっこんじゃうよ!


「ラーズに任せるわ。あとは実行日だけね」


「…いいんですか?」


計画性が全く無い計画だよ!?


「それがうちの隊員を助けてくれた黒竜に対する私達のお礼よ。出来ることをやってあげて。みんなもこれでいいでしょ?」


「賛成です」 「異議なーし」 「賛成」 「いいと思う」…


全員が賛成してくれて方針が決まった




・・・・・・




会議が終わって数時間後、小隊長室にエマが入った


「エマ、どうしたの?」


「ラーズの変異体遺伝子検査がまた陽性反応を示しました…」


ゼヌ小隊長が一瞬驚いた表情を見せた


「…そう。抑制剤は必要になりそうなの?」


「まだ大丈夫だと…。ただ、ラーズから、我を忘れるという症状があったと言われました…。前回の陽性反応時も同様の症状があったので…因果関係が有る可能性も…」


「陽性反応のトリガーは判明しそう?」


「まだ陽性反応が二回だけなので…」



「…もうしばらくは様子見ね」

そう言ってゼヌ小隊長は、エマとため息をついた





読んで頂きありがとうございます

小隊全員を出したら少し長くなってしまいました


ブクマ、評価、誤字報告、励みになります!

モチベ頂きましたので、四章終わりまであと二話を毎日投稿させていただきます

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