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137話 黒竜の洞窟3

用語説明w

超振動ブレード:根本の超振動モーターで刃の先端部分の極細の帯状の刃を振動させ、凄まじい切れ味を実現したブレード

ハルバート:穂先に斧が付いた槍。アンデッドから入手した物で霊的構造を持つ

倉デバイス:仮想空間魔術を封入し、体積を無視して一定質量を収納できる


ジード:情報担当の魔族の男性隊員、補助魔法が得意、魔法不可の弓も使う

ロゼッタ:MEB随伴分隊の女性隊員。片手剣使いで高い身体能力を持つ(固有特性)

データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AI。戦闘用端末である外部稼働ユニットのデータ2と並行稼働している


「…なるほどな。だが、あの黒竜は私たちの味方なのか?」


「私の感覚ですが、味方です。俺を助けてくれましたし、話も通じました」


「分かった。どちらにしろ、これに賭けるしか方法は無いしな」


ジードが納得してくれ、俺達の作戦が決まった


ジードがバンパイアの魔法を妨害して黒竜を自由にする

その間、俺とロゼッタでバンパイアを足止め

後は黒竜にバンパイアを何とかしてもらう、という他力本願作戦だ



今、ロゼッタがバンパイアと戦ってくれている

俺は持っている解呪の魔石を、データ2に全て渡す


「データ2、ジードの指揮下に入ってくれ」


「ご主人、分かったよ!」


俺は倉デバイスからハルバートを取り出す

そして、魔石装填型小型杖に魔石を装填し陸戦銃のマガジンを交換する


「データ、霊札とハンドグレネードを準備しておいてくれ」

そして、倉デバイスから取り出しの準備も完了


ぶっつけ本番だが、足止めがメインだ

俺のサイキック、「サードハンド」の御披露目と行こう



「いい加減諦めろ! 人間ごときに血液を使っている場合ではないのだ!」

バンパイアは苛立たし気に怒鳴る



バンパイアが積極的に攻撃をしてこない理由が分かった

バンパイアは、その魔法に血液を使う

黒竜の動きを封じているのも血液を使った魔法なのだろう

だから俺達に対して強力な魔法を使えば、それだけ血液を消費して黒竜の拘束が弱まるのだろう



俺は深呼吸をして、バンパイアを見る


「ロゼッタ、交代します!」

声をかけると、ロゼッタが下がる


「ふざけるな、人間が!」

バンパイアが血液を弾にして撃ち出す


だが俺は、ジードの魔法防御(小)を信じて、ラウンドシールドを構えて突っ込む



ガガガガガガッ


バシュバシュッ!



そして、アサルトライフルの射撃

バンパイアの魔法と俺の弾丸が交錯するが、お互いの補助魔法でダメージが通らない


俺は、陸戦銃を()()()、背中のハルバートの斧を叩きつける


ガキィッ!


バンパイアは、右手を血液の剣に変えて斧を受け止める

すかさず、ハルバートを()()()陸戦銃を持つ



ガガガガガッ!


「なにっ!?」



バンパイアは追撃が予想外だったようだ

防御魔法が切れていたようで、アサルトライフルの弾丸が体に着弾する

連続で攻撃することにより、補助魔法をはり直させない作戦だ!


ドスッ!


また陸戦銃を()()()、再度ハルバートの槍で刺突

ナノマシンシステム2.0の身体能力強化により、近接武器で火力が出せるようになったのは大きい


ハルバートの霊的構造が、バンパイアの本体である霊体にダメージを与える

だが、こいつの体が固くて刃が通り辛い


俺はハルバートを倉デバイスに突っ込み、同時に霊札とハンドグレネードを取り出す


踏み込んで霊札を貼る

バンパイアが爪を振るう

バックステップと同時にハンドグレネードを転がす

小型杖で装填していた軟化の魔法弾を撃つ


一瞬の攻防

だが、バンパイアは力が強いだけの素人だ

しかも今は片手で、より動きが読みやすい



バシュゥッ… ドッゴォォォン!



霊札がバンパイアの霊体と反応して煙を吹き出し、直後にハンドグレネードが爆発する

俺は浮かせていた陸戦銃を持ち、アサルトライフルで追撃する



ダダダダダダダッ!


死ね!


ダダダダダダダダ!


死ね!


ガチッ…!


…はっ! しまった、弾切れだ!

我を忘れて撃ち続けていただと!?



「ガアァァァァッ! 小癪な人間め!」


わめくバンパイアを見ると、爆発で足の肉が抉れている

軟化の魔法弾の影響で体が柔らかくなったのか、さっきよりもダメージが通ったようだ


「データ、超振動ブレードを取ってくれ」


俺はアサルトライフルのマガジンを交換する


うん、近距離はいいな

片手のバンパイアの近接攻撃は、動きが単純で避けやすい

投射魔法は近距離だと逆に避けやすいし、範囲魔法は詠唱の妨害もできるだろう



更に、俺のサイキックであるサードハンドとAI制御の倉デバイス術がシナジー効果を産み出し、連続攻撃でバンパイアの動きを封じられている


そう、さっきから使っている、これが俺のサイキックのサードハンドだ

手を離した武器を一つだけ、落とさずに俺の体の側に保持する、ただそれだけの地味なテレキネシスだ


単純だが、倉デバイス術との併用で武器の切り替えの速度はかなり上がる

武器を浮かしてテレキネシスで保持できれば、武器を落とさず近接攻撃と射撃を切り替えることができ、魔石やマガジンのリロードの隙も少なくなる

拾い直す、持ち直す、この時間の短縮がサードハンドの真骨頂だぜ!



だが、ダメージは微妙だ

軟化させてダメージを与えた足がもう元通りに再生している

俺の火力でバンパイアを殺すのは厳しい



「ラーズ、準備できたよぉ!」


「了解!」



俺は、ロゼッタに返事をする


ガシュッ!


ゴォォォォォ!


陸戦銃で散弾を発射、続けてモ魔で竜巻魔法(小)を発動させながら陸戦銃を()()()

そして倉デバイスから、データが用意した超振動ブレードを引き出す



ザシュッ!


「なっ!?」



俺は、バンパイアが黒竜を拘束している左腕を叩き切る


よし、狙い通りだ!

散弾と竜巻に気を取られたバンパイアは、自身の顔を右手で防御した

俺はそこで意表をつき、左腕を狙ったのだ


バンパイアは左腕を黒竜に向け、常に動きを封じる魔法を使っていた

今なら軟化の魔法弾で柔らかくなっており、腕の切断ができると踏んだのだ


腕を切り離されたバンパイアをロゼッタが狙う



「すぅー…」


ザシュザシュザシュッ…



力を溜めていたロゼッタが、一呼吸だけトランスを発動した

氣の力を発し、氣脈の黄色い光を発するロゼッタがバンパイアの体を細切れにした



「おぉっ、やった!」


俺は思わず声をあげる

やはり、ロゼッタのトランスは凄い



だが…



ボヒュゥゥゥゥーーー!



突然、バンパイアの左腕に黒い魔力が発生した

切られた左腕は落ちずに宙に浮き続け、黒竜に手を向けたままだ

そして、()()()()()再生を始め、体の方は黒いもやになって霧散したのだ


「えぇぇ! そ、そっちかよ!?」


思わず大声を出してしまうが、現実は変わらない



「調子に乗りおって、人間どもが! もう許さん、息の根を止めてくれるわ!」

体の再生を終えたバンパイアが怒りを隠さずに怒鳴る


バンパイアは血液を使って本気の魔法を使うようだ

かなり頭にきているのだろう


あの魔法は危険だ、どうする!?



「な、なにぃ!?」


だが、呪文を詠唱していたバンパイアが、焦って詠唱止める


「な、や、やめろぉぉ!」



ジードが、なにやら魔力で魔法陣を作り、黒竜を介してバンパイアの魔法に干渉しているようだ


「解呪の魔法弾を撃て」


ジードの言葉で、データ2が解呪の魔法弾を撃っていく



シュウゥゥゥ……



すると、黒いもやが黒竜全体から立ち上がった


どうやら、バンパイアの魔法構成が崩れたようだ

黒竜の拘束は解けたのか!?




「…」


バンパイアは、暫し呆然としたあと怒りに満ちた目で俺達を睨んだ


「やってくれたなぁ…、人間共よ…!」

バンパイアは怒りに震えながら叫ぶ


黒竜の拘束に気を取られていた先程とは違い、()()()()明確な殺意を向けてくる

俺達を絶対に殺す、という決意の表れだろう


「まさか人間ごときに邪魔されるとは…殺して引き裂いてくれる…」


バンパイアは両腕に血液の剣を作出す

更に、目や耳、身体中から血液を吹き出して纏い始めた

黒竜を解放されたことでバンパイアが本気になったのだろう


アンデッドの頂点、バンパイアの本気の殺意

さっきまでと違い、凄まじいプレッシャーで身がすくむほどだ


「う…!?」 「く…」

前衛の俺とロゼッタが殺気に呑まれかけている


ヤバイ、ヤバイぞ!

ここまでの殺気は想定外だ、こいつは明らかに格上の敵だ




「グルル…」



ピクリと黒竜が動き、牙を剥き出しにして唸った

黒竜が魔法拘束から解放されたようだ


黒竜はゆっくりと巨体を起こした

そして、口を開く



「グルル…人間、誰が助けろと…」


黒竜は人間に助けられたことにプライドを傷つけられたようだった



だが、俺は()()どころじゃない

バンパイアが、目の前で! 俺に対して! ()()()殺意を向けているんだ!



「うるせーーーー! 目の前のバンパイアが先だ! やられたらやり返せ! ドラゴンだろ!」


俺は黒竜の言葉を遮って叫ぶ


怒りはバンパイアに向けろ!

説得する余裕もねーんだよ!



バンパイアが動き出す



「…」


無言の黒竜を無視して、バンパイアvs人間の戦いが始まった


まずいぞ、万全の状態のバンパイアに本気を出されたら俺達じゃ歯が立たない…!

まずは最初の攻撃を耐えろ! 生き残れ! 話はそこからだ!




ドゴォォォン!


「がっ!?」




突然、黒竜が無言でバンパイアに尻尾を叩きつけた

凄まじい速さだ


バンパイアは両腕でガードをするが、地面に下半身がめり込んでいる

腕も壊れており、なんとか防御したといった印象だ


黒竜は尻尾をどかすと同時に口を開ける


「不死者よ、下賎な魔法拘束の礼を受け取るがいい…」


黒竜はバンパイアに言い放つと、




ゴゴォォォォォーーーーーッ……!




サンドブレス

土属性のブレスで、微細で硬質の固形物をまるで散弾のように吐き出し対象を粉々に粉砕する


バンパイアは、周囲の地面ごと跡形もなく吹き飛んでいた



ブクマ 、評価、誤字報告まで有難うございます

励みになります!

四章終了まであと数話、お付き合いいただけたら嬉しいです

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