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129話 リィの嫉妬

用語説明w

MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット

PIT:個人用情報端末、要はスマホ。多目的多層メモリを搭載している


エマ:医療担当隊員。回復魔法を使える(固有特性)

リロ:MEBパイロットの魚人隊員。十歳程度の容姿をしている

スサノヲ:見た目は赤ずきんをかぶった女の子。正体は、怪力の腕利き鍛冶職人でジャンク屋

データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AI。明るい性格?

リィ:東洋型ドラゴンの式神で、勾玉型ネックレスに封印されている


俺とエマは小隊長室にいる

突然、辞令の交付が決まったのだ


「エマ、あなたの戦闘ランクをCランクとします。あなたの固有特性の回復魔法の有用性と、ラーズのナノマシン集積統合システムを2.0まで育て上げた功績…みたいね。おめでとう」


ゼヌ小隊長が辞令の書状を差し出し、エマが受けとる


「あ…ありがとう…ございます…」


ゼヌ小隊長がエマに微笑むと、俺に顔を向ける


「次はラーズね。あなたの固有特性として、新たにホバーブーツによる高機動戦闘を登録します。これに伴い、称号が一般兵士から上位兵士に格上げされます。これで名実共にDランクの戦闘員となったわね」


称号とは、防衛軍によるその兵士の「扱い」のこと

俺の称号は一般兵士だったが、これは戦闘ランクがE相当の扱いだ

これが、上位兵士となったことで、防衛軍は俺のことをDランク相当の実力者と認めたということだ


「ありがとうございます」

俺はゼヌ小隊長から辞令の書状を受けとる


「固有特性として、技能特性が登録されるのは難しいことよ。自信を持ってね」



固有特性は二種類ある


一つは取得特性だ

これはサイモン分隊長の強化紋章や俺のナノマシン集積統合システムのように、手に入れれば固有特性となるものだ

実際は習熟を必要とするのだが、入手難度が高いので手に入れた段階で固有特性と認められる


もう一つは技能特性だ

これは、カヤノのサイキックやエマの回復魔法、リロのMEB操縦技術など、習熟度を高めることで登録される固有特性だ

習熟度を数字で表すのは難しく、単純に戦闘で活躍したという結果も求められる

努力を続けて手に入る固有特性だ



俺達はお礼を言って小隊長室を後にした


「ラーズ…、あなたの特性なのに私が評価されちゃってごめんなさい…」


エマが申し訳なさそうに言う

だが、エマのメンテナンスや検査のおかげで、俺のナノマシン集積統合システム2.0が発現したことは間違いない


「実際、エマが管理してくれたから2.0が発現したんだよ。俺はエマが評価されて嬉しいよ。本当にありがとう、これからもよろしくね」


「…」

エマは真っ赤になってしまった




・・・・・・




MEBハンガーにリロがいた


「あ、ラーズ! 固有特性が増えたんだって? おめでとう」


「リロ、ありがとう。何やってるの?」


「この子のワックスかけたんだよ! 見てよ、この輝き」


リロのMEBは特別塗装で薄い青色に塗装されている

その塗装が綺麗に輝いていた


「いい青だよね。リロのMEBに青色」


「分かる? 私も気に入ってるんだー」


「そう言えば、うちの戦闘班って青色を使っている人多いよね。サイモン分隊長の強化紋章も青だし、ロゼッタの片手剣も青だし。カヤノは…、違うか」


「カヤノも青色になったんだよ! 飛行ユニットのフラップを薄い青色にしたから」


「へー、今度見せてもらおう」


「いい色だよ。空を跳ぶと半透明の青い軌跡が見えるんだ。あたしが色と素材を指定して発注してんだから!」

リロが胸を張る


「そんなことできるの?」


「ちょうど新しい飛行ユニット買うための予算出てたからね。どうせなら綺麗で可愛い色の方がいいでしょ? 後はラーズだけだよ、戦闘班で青色が無いの」


「なんか仲間外れみたいで嫌だから何か考えるわ」


「ラーズは目が綺麗な青だからそれでもいいんじゃない? ちょっとインパクト足りないけど」



リロは本当に青色が好きみたいで嬉しそうに話すな

リロは、俺がその場を離れた後も自分のMEBの青いボディをうっとりと眺めていた




・・・・・・




スサノヲから電話がきた


「ラーズ、外部稼働ユニットが届いたぞ! 金立て替えといたから持ってこい」


「え!? いきなりだな!」


俺はメイルに預けた金を返してもらいにいく


「…いきなり六百万ゴルドなんて大金を取りに来られても困るよ。次は早めに言っといてよ?」


「おっしゃる通りです…」

メイルに小言を言われながらも、口座に入金してもらう


俺はジャンク屋に向かった


「データ、体が手に入るぞ、良かったな」


「うん! ご主人、ありがとう! これでリィとも遊べるよ!」


「ヒャンッ!」


ジャンク屋に着き、いつものように店に入る

地下の工房にスサノヲが待っていた


「おう、ラーズ。これが外部稼働ユニット、マテリアルドラゴンのtypeC7だ。金は持ってきたか?」


「ああ、送金するよ」

俺はスサノヲの口座に送金する


「よし、入金は確認できた。じゃあ、AIのインストールをしよう」


俺は、PITから有線で外部稼働ユニットに接続


外部稼働ユニットにはAIをインストールする

俺の場合は、PITにインストールしたデータの人格データを (ややこしい…) 外部稼働ユニットにもインストールする

PITと外部稼働ユニットが、それぞれデータという人格を持つのだ


外部稼働ユニットは独自の電脳を持っており自分の判断で動く

これにより、オリジナルのPIT内のAIの命令を必要とせず、戦闘中に通信の必要もない

だがこれを続ければ、経験や記憶の差でそれぞれが別人格となってしまう

そのため、平時は通信を行い記憶の共有を行いつつ並行稼働

戦闘などで別行動した場合は、後で記憶と人格を同期することで均一化するのだ



「インストール中…」

データが作業を開始する


「ラーズ、最適化は時間かかるし、インストール後はテスト稼働もするだろ? 預かってチェックしといてやるからまた今度取りに来いよ」


「ああ、分かった」


俺は、もう一人のデータになる外部稼働ユニットを撫でる

これで、リィに続いて俺と別行動できる戦力が増えた

別行動できるなら戦術にも幅が出てくる


「…」


気がつくと、その様子をリィが見ていた


「…どうした、リィ?」


「ヒャン」


リィは小さく鳴くと、俺にまとわりついてくる


「何だよ、甘えてるのか?」


「ヒャンッ」


よく分からないリィはとりあえず放っておく


「スサノヲ、魔属性オーブの金はどうする?」


「ああ、忘れてた! オーブの一時金五百万ゴルドは払えるのか?」


俺の貯金は六百九十万ゴルドだったが、ホスト・ゴーレムの報酬五十万ゴルドも振り込まれた

よって、合計七百四十万ゴルドある


「大丈夫だ」


俺は五百万ゴルドをスサノヲに入金する

残金二百四十万ゴルド

属性装備まで後二百六十万ゴルドだ


前回のリザードマンとスフィンクスの報酬はまだ決まってないが、本当にあと少しだ


「確かに受け取ったぜ」


「属性装備、よろしく頼むな」


「なぁ、魔属性汚染を引き起こした竜ってもう会えないのか?」

スサノヲが思い出したように聞いてくる


「正直、もう会いたくないけど何でだよ?」


「竜の鱗が手に入れば、フェムトゥを更に強化出来ると思うんだ。その竜もフェムトゥも同じ魔属性なわけだし」


「うーん、どうだろうな。今度聞いてみるけど、あまり期待はしないでくれ。あのエリアを立ち入り禁止に指定したくらいなんだから」


「ああ、分かってるよ」



俺がジャンク屋を出ようとすると、まだリィがまとわりついている


「リィ、そろそろ離れて…」


リィは首を振る

嫌、嫌、と言っているようだ


「…お前、まさか外部稼ユニットに嫉妬してるのか? あれ、中身はデータだぞ?」


「そうだよ、リィ!」


だがリィはプイッと顔を背ける


「ヒャンッ」


結局俺とデータがいくら説得しても、リィは俺から離れないのだった…





隊員人事記録(称号、固有特性更新)


氏名 ラーズ・オーティル

人種 竜人

所属 1991小隊

称号 上位兵士 ←New

通り名 道化竜

戦闘ランク D

固有装備

・フェムトゥ R3(現在使用不可)

・ホバーブーツ

・ロケットハンマー

固有特性

・ナノマシン統合集積システム2.0

・ホバーブーツによる高機動戦闘 ←New

得意戦闘

・囮、味方の編成に合わせた柔軟な立ち回り

・攻撃: 遠、中距離の射撃、杖とモ魔の魔法、近接

・式神による攻撃補助 ←New

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