127話 金属性魔導師
用語説明w
シグノイア純正陸戦銃:アサルトライフルと砲の二連装銃
モ魔:モバイル型呪文発動装置。巻物の魔法を発動できる
魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる
イズミF:ボトルアクション式のスナイパーライフル。命中率が高く多くの弾種に対応している
超振動ブレード:根本の超振動モーターで刃の先端部分の極細の帯状の刃を振動させ、凄まじい切れ味を実現したブレード
ハルバート:穂先に斧が付いた槍。アンデッドから入手した物で霊的構造を持つ
特別クエストが二連続で入った
忙しすぎる…
特別クエスト1
リザードマンの討伐
『
リザードマン E~Dランク
年齢によって体の大きさが違い、体が大きいほど危険度が増す人型のは虫類型モンスター
集団になると、場合によってはCランクの戦闘力を持つ場合がある
』
『
クエスト情報
街道の側にリザードマンの集団が住み着いた
二十匹程度の規模と推測、殲滅されたし
』
隊の公用車で待っていると、長い杖を持ち魔導師風のローブを着た獣人の女性がやって来た
「初めまして、シオンと申します」
「ラーズです。よろしくお願いします」
「ヒャンッ!」
今回の相方であるシオンにリィと共に挨拶をする
さっそく出発だ
リザードマンが住み着いた場所は、ここから国道を車で三十分ほど北上した場所だ
「住みかの場所の絞り込みは出来てます。私は見ての通りの魔導師なんですけど、前衛ってお願いできますか?」
「私は高機動型の斥候タイプです。防御は不得意ですが、距離を取れれば大丈夫です。任せて下さい」
リザードマン二十匹に対してこちらは二人、この戦力差をどう思うだろうか?
大昔の冒険者の時代を基準に考えると無謀だろう
魔法があるとはいえ、剣や槍、盾で人間より身体能力の勝るリザードマンを相手にするのは、やはり人数が必要だ
だが、現代は銃がある
銃は火薬の力で攻撃する
筋力に関係なく火力を出し、しかも遠距離攻撃だ
銃の遠距離攻撃と魔法の範囲攻撃、これを生かせる戦術があれば、集団といえど銃を持たないモンスターなら対処が可能だ
特別クエストの担当に選ばれる優秀な隊員なら尚更である
実際、身体能力の劣る一般兵にモンスター以上の殺傷力を与える銃が無ければ、現在の人間の生息圏はモット狭くなっていたはずだ
頻繁に脅かされる人間の領域を守っているのは、銃と魔法で武装した一般兵なのだから
高台から見下ろすと、川沿いにリザードマンの巣である洞窟が見える
高台からは坂になっていて、川までの障害物は少ない
「ここを拠点にして迎撃しましょう」
俺はそう言って、魔石装填型小型杖で土壁を三つほど作る
そこに、リモコン式の爆弾を仕込むのだ
「土壁なんか作ってどうするんですか? 狙撃の邪魔になりませんか?」
「狙撃に邪魔な場所を作ってあげたんですよ。近づきたくなる場所を作るのがトラップの基本です」
俺はそう言って、高台にも密集させて土壁を作る
この土壁は防衛ラインだ
「シオン、始めていいですか?」
俺はハルバートを足元に置き、超振動ブレードを背中に担ぐ
手にはスナイパーライフルのイズミF、肩紐で背中に陸戦銃だ
「はい、お願いします」
俺は腹這いになり、防衛ラインの土壁の隙間からイズミFで狙う
リィは接近したリザードマンに処理、データはドローンで敵の位置把握をさせる
ガゥン! ガァン! ガァン!
リロードしながら狙撃をしていく
できるだけ大型の個体を距離がある内に削る
ヘッドショット出来れば一発で殺せるが、できなければ負傷しながらも向かってくる
見た目通りのタフさだ
ガンッ! ガァンッ!
ライフル弾をぶち込み続けるが、どんどん接近してくる
「ご主人! あと十三匹だよ!」
データの報告だ
半分も減らせなかったか…
リザードマン達は、狙撃を嫌がり坂の途中に作った3つの土壁に隠れて様子を伺っている
狙い通りだ
「ご主人、やっていい?」
「頼む」
俺がデータに言った直後…
ドッガァァァァァァァン! × 3
五匹のリザードマンが、土壁に仕込んだリモコン式の爆弾で吹っ飛んだ
そこから、更にライフル弾で追撃
だが、八匹ほどが防衛ラインまで到達してくる
「ガァァァァァッ!」
ドガガガガガガッ!
陸戦銃に持ち替え、土壁の隙間からアサルトライフルで掃射
同時にモ魔をロードする
土壁を越えようとしたリザードマンをハルバートで突き落とし、アサルトライフルを撃ち込む
そして、モ魔で竜巻魔法(小)を発動、土壁の向こう側で何匹かのリザードマンを巻き込み、更に隙間からアサルトライフルで撃つ
土壁から顔を出したリザードマンをアサルトライフルで仕留める
もう一匹のリザードマンが土壁を越えて来た
陸戦銃が間に合わず、ラウンドシールドで爪を受け流す
同時に背中の超振動ブレードで首を飛ばす
「ヒャンッ!」
リィが、土壁から別のリザードマンを叩き落としてくれたので、俺はアサルトライフルのマガジンを交換し、モ魔の巻物を交換する
「あと四匹だよ!」
データのドローン映像からの情報
土壁の向こう側が死角じゃなくなるのって便利だ
「ラーズ、私も魔法を撃っていいですか?」
後ろからシオンに聞かれる
「あ、もちろんお願いします!」
シオンは頷くと、金属性範囲魔法(中)を発動
ズガズガズガガァァァァァ!
地面から金属性のトゲが突き出し、生き残っていたリザードマン達を貫いた
・・・・・・
「リィ、よくやったぞ」
「ヒャンッ」
誉めると、リィは嬉しそうに宙返りをする
「ラーズ、凄いですね。あのまま一人で倒しきってしまいそうだったので声をかけてしまいました」
「対多数戦闘を練習中でして。武器の使い分け、切り替えを意識してるんですが、なかなかリロードまで手が回らないんですよね…。って、いや! そんなことより、何ですか金属性って!? 始めて見ましたよ?」
物質属性は、風水土だけのはずだ
これは、物質の三つの状態、気体液体固体に対する属性で、それ以外は無いからだ(通常状態時なのでプラズマ等は除く)
「金属性は、土属性の亜種というか、一部というか、応用なんですよ」
固体には、非金属と金属の二種類がある
その違いは自由電子を持っているか否かだ
金属性は、魔力で作り出した固体を金属の状態にする
金属状態の土魔法は、靭性と呼ばれる粘り強さが増し折れたり砕けたりしにくくなる
しかし、熱や電気の伝導性を持つという特性が付く
金属状態の土魔法は、熱や電気を伝えるようになるのだ
通常の土属性と一長一短といった性能である
「そんな魔法があるんですね…!」
「私の出身の地域は金属性使いは多いから、地域性かもしれませんね」
衝撃には金属性の壁の方が強いが、熱や電撃には土属性の方が強い
要は使い分けだな
俺達は、川沿いの洞窟とその周辺でリザードマンの生き残りを確認する
「大丈夫そうですね」
「はい、リザードマン討伐は完了ですね」
さて、もう一つの特別クエストを確認だ
仮想モニターにクエストを表示させて…
「ヒャンッヒャンッ!」
突然、リィが何かを警戒して吠えた
ゴオォォォッ!
突然、俺達がリザードマンを迎撃した高台の辺りで火柱が立ち上がった
「ご主人! ドローンが破壊されたよ! スフィンクスだよ!」
データが叫ぶ
確かにドローン映像が消えている
もう一つの特別クエストはスフィンクスのクエストだ
「向こうから来たのか…!?」
「獲物を探してるのでしょうか? …獲物って私達!?」
スフィンクスが高台に姿を表す
「なんか、でかくないですか?」
「は、はい…」
モンスターの中には、希に明らかに大きい個体がいる
こういう異常成長した個体は、総じて通常の個体より戦闘力が高い
特別クエスト2
スフィンクスの討伐
『
スフィンクス C-~Dランク
ライオンの体、人間の顔、鷲の翼を持つモンスター
翼を使い長距離を移動するが、空中戦闘は不得意で地上で狩りをする
魔法を使うが肉弾戦も得意
』
『
クエスト情報
スフィンクスがこの周辺で目撃されている
その飛行能力で町まで飛来する可能性があるため、撃退又は討伐を行いこの周辺地域から除外されたし
』