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126話 格闘術

用語説明w

サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)

ロゼッタ:MEB随伴分隊の女性隊員。片手剣使いで高い身体能力を持つ(固有特性)


今日はアミラが隊舎来る約束の日だ

アミラは時間通りにやって来た


「アミラ、いらっしゃい」


「ラーズ、今日はありがとう!」


俺達は挨拶をして、隊舎に入る


「こんにちわぁ、アミラ。ロゼッタです、よろしくねぇ」


「は、は、は、初めまして! アミラです」

アミラは緊張しながらロゼッタに挨拶をする


MEBのハンガー内の仮設食堂でアミラはロゼッタと席につく

俺は二人にお茶を出すと、アミラがロゼッタにいろいろ質問をしていたので邪魔をしないようにその場を離れた


「お客さんか?」

サイモン分隊長がコーヒーを飲みながら聞いてきた


「さっき話してた風水師のアミラですよ。特クエで組んだんです。ロゼッタのファンらしくて」


「へー、ロゼッタのファンか。トランスを使える隊員なんかそうそういないし、やっぱり目立つんだろうな」


トランス

氣属性の技で、肉体の氣脈の力を体に満たし身体能力が飛躍的にアップさせる


「そんなに凄い技だったんですね」


「本来はBランク以上が使う技だし、むしろBランクでも使えないヤツはたくさんいると思うぞ」


「ロゼッタって凄いんですね…。キャラ的にそんな風に見えないですけど」


「軽いし緩いからな」


「わっはっは」 「あははは!」

二人で笑い合う


「ちょっと二人ともぉ? 好き勝手言い過ぎだよねぇ」

ロゼッタがジロリンチョと俺達を見ながらやって来た


「お、ど、どうしたよ、ロゼッタ?」


「アミラが組手やりたいっていうからぁ、中庭行くんだよぉ」


そう言ってアミラと中庭に出ていったので、俺達も(暇潰しに)ついていった



アミラの二つ名は氣功拳士

氣と拳による格闘術を使うと言っていた


「ロゼッタさん、よろしくお願いします!」


アミラは後ろ体重で右を前にした半身で構える

対してロゼッタは指先を伸ばして右手で手刀を作る


「ラーズ、お願ぁい」


ロゼッタに言われ、俺は頷く


「初め!」


俺が声を出すと、ロゼッタは無造作にアミラに近づいていく

対してアミラは待ち構え、ロゼッタが間合いに入ると、



バシッ



縦拳で突く

それをロゼッタが右手の手刀でいなし、その流れで顔に手刀を刺す


アミラはその手刀を左手で捌く

同時に左足を前に出し、体に組み付く…



ドシュッ…ッ…


「…っ!」



一瞬でロゼッタが半歩の距離を空けた

気がつくと、アミラの首にロゼッタの指先が添えられていた


「…今の、肘からの二連撃ですよね」


「ほぅ、見えたのか。内側から外に肘を振って顎に一撃、返した手刀を首筋に一撃。早かったな」


ロゼッタは普段は片手剣を使っている

だが、素手でもここまで強いとは!


「も、もう一度お願いします!」


アミラの頼みに軽く「おっけぇー」と返すロゼッタ

だが、やはり結果は同じだった


アミラは強い、そう思わせるキレがある

だが、ロゼッタはその攻撃を難なく捌くのだ

うちの小隊、達人が多すぎない?


「ま、参りました…」

アミラは素直に敗けを認めた


何回か組手を行い、結局一発も当たらないままロゼッタは完封してみせ、汗もかいていない

スゲーな!




・・・・・・




「お疲れ様でした、アミラ」

俺は、自動販売機で買ったスポーツドリンクをアミラに渡す


「ありがとう、ラーズ。ロゼッタさん、噂以上に凄い人だったわ」

アミラは荒く息をしながらスポーツドリンクを受け取った


「…あそこまで凄いと何の参考にもなりませんよね」

俺達は笑い合う


「私の通り名が氣功拳士なのに、素手の組手で手も足も出なかったな…」

アミラが自虐的に言う


「食堂ではロゼッタと何を話していたんですか?」


「もちろん、氣の使い方のアドバイスをもらってたのよ。いつか私もトランスの境地まで行ってみたいから」


トランスの習得は、氣を使う者の到達点の一つらしい

トランスとはそこまでの技なのか


「ラーズはあれから特別クエストに出てるの?」


「出ましたよ。アミラも含めて、凄い人ばっかと組ませて貰って勉強になってますよ」


「誰か有名な人と組んだの?」


「アミラ以外だと、捨て犬のアレクセイ、狼の目のアナ、火の精霊アフマド、マッスルフェアリーのハイファ…ですかね」


「みんな通り名持ちじゃない! しかも結構有名な隊員ばっかりよ、凄いわね」


「特別クエストって通り名が無い人もいるんですか?」


「普通にいるわよ。特クエ担当だけじゃなく臨時で特クエを受ける人だっているし」


そうなんだ

通り名持ちとばかり組んだのはただの運だったらしい



しばらくたわいもない話をしていると、アミラは少し休んで落ち着いてきたようだ


「アミラ、もしよかったら私とも組手お願いできませんか?」


「え? いいけど素手でいいのかしら」


「はい、私も一応格闘技をやっていまして。私の先生がナイフの達人なんですけど、いつか格闘術で驚かしてやりたいと思っているんですよ」


「へー、面白いじゃない。私で参考になることがあればいいけど」

そう言って、アミラが立ち上がった


「ラーズ、単純な力は私の方が弱いから、氣の力で少し強化してもいい?」


「大丈夫ですよ」



こうして、俺とアミラは向かい合う


アミラの体が少し肥大して見える

氣の力で筋力が上がっているのだろう



「しっ!」


俺はジャブで様子を見る

それをパーリングしながら、蹴りで返される


「うわっ!?」


アミラはサイドキックで膝関節を狙ってきた

危ねえ!


アミラは武術やナイフ術にお決まりの、急所を隠した半身で構えている

これには回し蹴りが有効だ



ドシッ!


「くっ…」



ローキックを思いっきり叩き込むと、アミラが表情を崩した

金的を警戒しながら、右手で肩辺りの服を掴む

ローキックを打った右足をそのまま踏み込み、左足を引き付けてアミラの左足を内側から右足で刈る


大内刈りだ

対してアミラは左腕を突っ張るが、片腕で止められるか!



ゴガッ!


「…っ!?」



顎に衝撃を受ける

予想外の打撃で、一瞬衝撃に()()()しまった


すかさず、アミラは俺の耳を掴んで引っ張る

だが、これはデモトス先生に何度もやられて知っている

アミラの肩口を引っ張って距離を潰して耳を守り、同時に肘を撃ち込む


ガッ


「くっ!」


ガードされるが、そのまま引き倒してバックに回りチョークスイーパーでフィニッシュだ


アミラがタップしたので俺は手を離す


「やられたわ…」


「いや、危なかったですよ」


その後、三回組手をする


二回目は俺の勝ち 左ボディからの右ハイキック

三回目はアミラ 鎖骨を折りながらの変則肩固め

四回目もアミラ 背中の腎臓打ちからフロントチョーク


一進一退の攻防だった

格闘術の魅力は、多様な技術体系だ

格闘技と武術は技の性質が違うから、お互いに勉強になる


…後半連続で負けたのは、技を見切られた可能性もあるので個人的には微妙だが

しかも、アミラは氣の技を封印して組手をしてくれたのに


「アミラ、最初の組手で私が顎に喰らった技ってどうやったんですか? アッパーを打てるタイミングじゃなかったと思うんですけど」


「あれは、手首を曲げた状態で手首で打ち込んだのよ。上方向への打撃としてはやりやすいの」


「こうですか?」

俺は曲がった手首で何度か振ってみる


「そうそう、そんな感じ。人差し指と中指だけを伸ばして打つと力が入るわよ」


「おおっ、確かに。こんな場所で打つなんて面白い技ですね」


「私もいろいろ参考になったわ。ラーズの近接格闘もかなりの腕よね」


俺達を握手をする


「参考になったわ。また遊びに来させて」

そう言ってアミラは、シャワーを浴びて帰っていった


だが、参考になったのは俺の方だ

アミラの使った急所攻撃は、武器術にも応用できる


格闘技は弱いわけがない、格闘技を諦めない

そのままでは武器術には勝てないが、応用していけば間違いなく使えるはずだ


デモトス先生が帰ってきたら驚かせられる…といいな




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