11話 防衛軍について
用語説明w
シグノイア:惑星ウルにある国
ハカル:シグノイアの北に位置する同国と戦争中の国
1991小隊:ラーズが配属。MEBが配備された小隊
フィーナ:二歳下でラーズの戸籍上の妹
物質文明と魔法文明が融合したことで現代の魔法科学文明が爆誕
ウルとギア、双方の人類の生活は一変した
しかしその反面、人類にとってのデメリットも生まれた
その一つが戦争の変化だ
人類の原罪なのか、戦争は無くならない
科学と魔法の力で危険な兵器が作られる
早い話が、核爆弾に次ぐ世界の危機が増えたってことだ
国際条約で禁止された兵器は、広域化学兵器、細菌やナノマシン兵器、禁術魔法、次元召喚、モンスター暴走生成などだ
これらの禁止兵器が使われることはほぼ無いが、それでも小規模の戦闘には銃弾や範囲魔法が飛び交い、戦争以外でもモンスターの脅威がある
この戦争とモンスターから国を守るために防衛軍は存在するのだ
…俺は地獄の研修を経て、ついに防衛軍の正式採用となった
そして、防衛軍での初防衛作戦にも参加、基本研修も何とかやり遂げた
よくやったよ、俺…
何度か死ぬかと思ったが、これで晴れて防衛軍の一員となれたということだ
いい機会だから、情報をちょっと整理しておこう
最初は、この国、シグノイアについてだ
シグノイアはウルにあり、北をハカル、南西を龍神皇国に接している
そして、シグノイアは現在、隣国のハカルと戦争中なのだ
過去にも両国は戦争をしていて、十年前に停戦となったのだが…
二年前に、両国が互いに侵略行為を受けたと宣言、国交を断絶してしまった
まだ開戦宣言がされていないため、表立った戦闘はない
先に手を出された方が報復の理由を得て、国際世論を味方につけられるからだ
現在は、両国間での小競り合いに留まっている
しかし、小規模なだけで実質は完全に戦闘だ
シグノイアの防衛は、同国の国軍であるシグノイア防衛軍が担っている
隣国ハカルから送り込まれている魔物や戦闘員の殲滅、及び侵略行為の阻止戦が主だ
シグノイアとハカルの国境は低山と森になっていて、この国境付近が主な戦場となる
さらに、自然発生するモンスターの駆除も防衛軍の大切な任務だ
防衛戦とモンスター駆除で防衛軍の人手は足りていない
次に防衛軍について
シグノイア防衛軍は、人手が足りていないので常時兵士を採用している
仮採用後の最初の三か月間、防衛軍学校で戦闘訓練を受ける
その後、簡単な作戦に見習いとして三回参加する
そうして、能力や性格を確認した後
・防衛軍学校に戻り、続けて戦闘訓練を受ける
・すぐに各小隊に配属
・他機関(地方行政機関、警察機関、消防防災機関等)に出向
のどれかのパターンとなる
普通は防衛軍学校に戻るのだが、俺の場合は事務のおばちゃんから辞令を渡され、防衛軍学校には戻らず直接小隊に配属となった
俺はいくつかの技術と経験があったからなのか
大した活躍をした気はしないけど…、戦力になると評価されたってことならちょっと嬉しい
防衛軍学校に戻るよりも早く正式採用されるのは、即戦力探し用の制度なのかもしれない
そして、俺の配属は、陸戦防衛軍第1991小隊
国の南西側で、海沿いに拠点を置く小隊だ
防衛軍学校の学生たちは、配属が決まる前に小隊の希望を聞かれる
必ず希望通りと言うわけではないけど、それに近い方向の小隊に行けやすくなる可能性がある
小隊の方向っていうのは特色のこと
普通はバランス型だが、中には部隊の編成を偏らせた小隊があるのだ
魔法使いが多い対多数型、支援職が多い支援特化型、大型モンスター討伐用の近接特化型、隠密高機動が多い斥候特化…、など色々あるらしい
これらの部隊が求める人材と、個人の希望を天秤にかけて配属が決まるのだ
俺の配属された1991小隊はMEBを運用する部隊
MEBとは、多目的身体拡張機構という名の二足歩行型兵器で、要は乗り込み型二足歩行ロボットだ
二足歩行メカは男のロマン!
魔導マニピュレーターを搭載したMEBは器用さが売りだ
災害時の救助活動、倒壊した家屋の撤去、拠点設置の土木作業
戦闘では大型の耐魔力シールドを構えて大魔法から部隊を防御したり、迫撃砲を担いで射手をやったりと活躍の幅が広い兵器だ
1991小隊の編成は、小隊長以下二分隊
俺を含めて総員十三人の小隊だ
(その内、二人は出向中)
普通の小隊は三十人前後の隊員で構成されているので、かなり小規模な小隊だ
最後に担当職について
小隊内に配属されると、個人の技能によって担当が決まる
一番多いのは戦闘担当で、俺も戦闘担当だ
他に、敵の種類や武装の特定、動きを補足する情報担当
その他、補助や回復担当、車両等の操縦担当、整備担当
作戦の規模が大きくなれば、指揮担当として幹部やリーダーが置かれる場合もある
そして、戦闘担当は、斥候、防御、近接、範囲、遠距離など、使う武器や技能によって更に班分けされる
隊員が使う武器は大きく分けて
・物質系統
・魔法系統
の二種類ある
説明の必要もないが、物質系統は銃や爆薬、剣や矢などの武器だ
物質系統と言っても、魔法効果を付加してる場合もある
魔法系統は、その名の通り魔法を使う為の武器
魔法使いが使う杖、札や巻物、魔石や魔玉等がそうだ
知識と技能があれば、魔法は道具を使わなくても発動する
だが、杖や魔石等のアイテムがあれば、魔法を構築する時間を大幅に短縮でき、威力も段違いに上がるのだ
また、魔法を使えない人間にも、魔法を扱える手段として使い切りの魔法アイテムがある
攻撃用の範囲魔法を封じた巻物、いろいろな効果を持つ単発用の魔法弾を撃てる魔石などだ
特殊な技能がない限り、物質系統の銃とグレネード、魔法系統の杖と巻物が一般兵のメインウェポンとなる
俺も色々な武器を使えるようになりたいし、MEBにも乗ってみたい
そして、いつかはサイモン分隊長みたいに、固有装備と固有特性を持ってみたい
…だが、まずは生き残ることが先決だ
戦場は一人で生き残れるほど甘い場所では無い
それは、研修や初出動で経験した戦闘で嫌というほど味わった
俺は、まだ何も分からない見習い
まずは、訓練や実戦を通して自分の技能を高める
そして、上司や同僚とのチームワークも必要だ
早く小隊のみんなと馴染みたい
ガチャッ…
洗面所で鏡を見ながら考えていたら、フィーナが覗き込んで来る
「ラーズ、一人で何をぶつぶつ言ってるの?」
フィーナが怪訝な顔をする
「出勤前に集中力を高めてたんだよ…」
…恥ずかしいから、一人言を聞かないでくれ
「早く行かないと遅刻するよ」
「はいはい、分かったって」
ま、うだうだ考えていても仕方がない
よし、今日も頑張ろう!
シグノイア、防衛軍の組織、担当職や武装についての説明回w