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123話 報酬

用語説明w

メイル:1991小隊の経理と庶務担当、獣人の女性隊員

エレン:獣人の女性整備隊員。冒険者ギルドの受付も兼務

スサノヲ:見た目は赤ずきんをかぶった女の子。正体は、怪力の腕利き鍛冶職人でジャンク屋

フィーナ:二歳下でラーズの戸籍上の妹、龍神皇国のBランク騎士として就職している

セフィリア:龍神皇国騎士団に所属、B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性


今日は休みだったはずだ…

だが、呼び出されて書類を作っている

作っているのは、「トロルのサンダーラットを使った遠距離攻撃に関する報告書」だ


「休みなのにごめんなさい、ラーズ」

エレンが申し訳なさそうに言う


「いいよ、後回しにしていた自分が悪いんだし」



今日の朝、ゼヌ小隊長に特別クエストの報酬が決定したことを伝えられた


トロルの集落を壊滅させ人間の集落を救ったことに対する報酬

諸経費を抜いて八百万ゴルド

アナと分けて、一人四百万ゴルド


アンデッドのスタンピートの阻止、及び魔晶石又は精霊石の情報収集に対する報酬

諸経費抜いて合計三百万ゴルド

アフマドと分けて、一人百五十万ゴルド


ただし、トロルのサンダーラットを使った遠距離攻撃は極めて希な事例である

スナイパーが複数負傷していることから、至急情報を精査する必要があるため、動画等のデータと報告書を本日中に送るように


とのことだった



本部から言わせると、こんなに被害が出てるのに何ですぐに報告書を上げないんだということらしい


だが、こっちは連日クエストに出てるんだよ!

現場の苦労も知らないで机上だけで話しやがって!

…だが、報酬は貰ってるので文句は言えない



「報酬八百万ゴルドっ凄いよね! こんな高額な報酬初めて見たよ。やっぱり、集落の危険を救ったからかな?」

メイルが金額に興奮している


「確かに高額ですよねー」


「三百万ゴルドも普通に凄いのに、安く感じちゃうもんね」


メイルがすぐに手続きをしてくれたので、すでに報酬は俺の口座に振り込まれた


外部稼働ユニットの六百万ゴルドを引くと、俺の残金が残り百四十万ゴルド

今回の報酬が、四百万 + 百五十万 = 五百五十万ゴルド

合計 六百九十万ゴルド


属性装備の一千万まであと三百十万ゴルドだ

やっとゴールが見えてきたぜ!


…俺はデータが録画してくれていた動画を保存し、報告書を仕上げていく



「お疲れ様でした」 「休みだったのに災難ね」


「報酬貰えたから問題ないですよ。これで失礼します」

俺は、エレンとメイルに挨拶して隊舎を出た



帰りながら、俺はスサノヲに連絡をする

属性装備を作るには魔属性オーブが必要なのだが、八百万ゴルドかかる

だが、五百万ゴルドあれば頭金にして注文が出来るらしい


魔属性オーブの装備への定着には時間がかかるので、金がたまったら連絡するように言われていたのだ


「おー、ラーズ、どうした? 外部稼働ユニットなら発注かけてるけどまだだぞ?」

スサノヲはすぐに電話に出た


「スサノヲ、今日は外部稼働ユニットの話じゃないんだ。魔属性オーブの頭金が用意できたから連絡したんだよ」


「五百万が用意できたのか!? めちゃくちゃ早ぇーじゃねえか」


「ああ、クエストの報酬が思いの外良かったんだ。棚からぼた餅って感じだ」


「分かった。注文しとくから来週中には店に来てくれよ」


「分かった、また連絡するよ」


よし、また一歩属性装備に近づいた

(金かせぎを)頑張るぜ!




・・・・・・




久々の休日だ

今日は家でのんびりする


先ほど、公園に行きリィを遊ばせた


「ヒャンッ ヒャーンッ!」


久しぶりに好きに飛び回れてリィが嬉しそうだ

連日、リィも頑張ってくれてたな


公園でまったり弁当などを食べてるとほっこりする

かわいいペット(式神だけど)とピクニック、なんて癒されるんだ

人生には気分転換とリラックスが必要だ



夕方、フィーナと合流して夕食に行く

店は「ゴシップ」だ


「今日、久々にミィ姉に会ったんだ」


「同じ騎士団なのに久々だったのか?」


「ミィ姉は経済対策団に行っちゃったからなかなか会えないんだよ」


龍神皇国の騎士団は、国の運営ではあるが独立法人としての側面も持っている

早い話が、騎士団自体がモンスター討伐や素材の売却で利益を上げているのだ

さらに、保険や金融にも手を広げておりその経済力は強い

このため、騎士団に所属する戦闘員には装備品の支給や補助など手厚い待遇となっている


…羨ましい



「ミィは昔から金勘定が得意だったもんな」


「そうだね。大抜擢だってセフィ姉も言ってたよ」


「そういや、ヤマトは元気なの?」


「ヤマトは傭兵師団とクレハナの内戦警戒の警備だって。しばらく戻ってこれないんじゃないかな」


「クレハナってお前の国じゃん。まだゴタゴタしてるの?」


クレハナは、フィーナの生まれ故郷で龍神皇国と接する小国だ

龍神皇国の庇護下にあり、騎士団が治安維持にも協力しているのだ


「そうみたい。次の後継者が決まるまで続くみたいだよ…」


「ミィにもヤマトにも全然会ってないなー…」


ミィもヤマトも、俺の母校であるボリュガ・バウド騎士学園の同級生だ

この学校では、闘氣(オーラ)や魔法、特技(スキル)を始めとした戦闘技術を学び、卒業生は各国の騎士団に就職することが多い

二人ともBランクの戦闘員として龍神皇国の騎士団に所属し、フィーナの同僚だ


先にセフィ姉が龍神皇国の騎士団に就職していたので、三人とも採用されたのは多少のコネの力もあったのだろう


「ミィ姉とヤマトと、パーティ組んでたときを思い出すね」


俺達は、学校時代一番仲が良かった

パーティーを組んで、学校が管理するダンジョンに潜っていたのだ


フィーナは飛び級で入学しており、クラスの女子の中でも浮いていた

だが、ミィが初年度からフィーナと仲良くなり、その縁で俺とも仲良くなったのだ

おかげで、俺とミィは同い年なのにフィーナはミィだけ姉さん呼びをしていたりする


「そうだな、懐かしい」


「勇者、賢者、戦士、商人、いいパーティだったよね。面白かったなぁ」


ボリュガ・バウド騎士学園では、生徒の戦闘スタイルや技能で職業を決められていた

これは、大昔の冒険者達の職業の名残だ


フィーナは賢者だった

賢者は、回復魔法、攻撃魔法、補助魔法の三種類を使い分けるスタイルだ

それぞれ技術体系が違う魔法を使い分ける器用な職業だ


ヤマトは戦士

戦士は、防御と近接攻撃を使い分けるスタイルだ

攻撃特化、防御特化、その中間のスタイルが戦士だ


ミィは商人

遠距離攻撃や近接攻撃を使い分けるが、戦闘能力はほどほど

真価は交渉術だ

規約やルールを把握して宝の所有権を主張したり、買い取り交渉を有利に進めたりと、冒険に必要な資金を有利に集められる


最後、俺は勇者だ

勇者の特徴とは、ズバリ器用貧乏だ…

魔法も物理攻撃も使えるが、専門職には勝てない

だが、一つだけ必殺技を持っている。それが重属剣だ


闘氣(オーラ)と魔法、特技(スキル)を重ねることで高威力の攻撃を叩きつける魔法剣の一種だ

もちろん、高威力だけあって燃費はめちゃくちゃ悪い



そんなパーティを組んでいた四人の内三人がBランク戦闘員として龍神皇国の騎士として活躍中

俺だけシグノイアの防衛軍に就職、しかもFランクからだ


人生って分からんなぁ…、だが後悔は無い

同僚に恵まれ、フィーナとも仲がいい

それに、一般兵士なりに強くなってきている

それが実感できてるからかな



「ね、ラーズ。そういえば言っとかなきゃいけないことがあるんだけど…、私も借金背負っちゃったんだ」

フィーナが思い出したかのように軽く言ってくる


「え? 何の借金だよ」


「騎士団で使う武器なんだけど、オプションとか張り切り過ぎちゃったんだよね…」


「いくらなわけ?」


「一億ゴルド…」


「…は?」


「だから、しばらくご飯代お願いできないかなって…。生活費がきついの!」


「おま、俺だって借金持ちだっての!」


さすがBランク戦闘員の武器は桁が違った

騎士と違って兵士の給料はそんなに高くないんだぞ…





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