表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/396

108話 ジャンク屋1

用語説明w

ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシンを運用・活用するシステム。ラーズの固有特性となった

フェムトゥ:外骨格型ウェアラブルアーマー、身体の状態を常にチェックし、骨折を関知した場合は触手を肉体に指して骨を接ぐ機能もある

倉デバイス:仮想空間魔術を封入し、体積を無視して一定質量を収納できる


デモトス先生:ゼヌ小隊長が紹介した元暗殺者で、ラーズの戦闘術の指導者。哲学と兵法を好む

データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AI。明るい性格?


今日は、朝からデータがやたらうるさい


「ご主人! 外部稼働ユニットを買ってよ! アバターだけじゃ、もしもの時に僕は何も出来ないよ!」


どうやら、前回俺が魔属性中毒になった際に何も出来なかったことを言っているらしい

データが助けを呼んでくれ、画像や音声を残しておいてくれたお陰で俺は助かった

だが、それを説明しても納得しないのだ


個人用AIは学習型だ

前回の失敗を学習して、このままじゃダメだという結論が出たのだろう


「分かったけど、ちょっと待ってくれ。まず金を用意しないとだろ? どのくらいするんだよ」


「僕がほしいのは、マテリアルドラゴンタイプ! 斥候タイプの機体だけどアサルトライフルを二丁搭載出来て、オプションでモ魔やトラップ設置機能もつけられるよ!」


「凄いけどいくらすんの? 絶対高いだろ」


「一千万ゴルドくらい! 購入の優先度を上げてくれたら、資金繰り頑張るよ?」


「…分かった分かった。いずれな」


そんなこんなで、いろいろと設備投資が必要だ

っていうか、一千万なんて簡単に出せるか!


俺の固有装備であるフェムトゥも魔属性汚染で現在使用不可

金を稼がなければ…しかし装備がない…行けるクエストが限られる…、あれ、これって大昔の冒険者のジレンマじゃないか?




・・・・・・




「ここだ」


デモトス先生についてくると、古い雑居ビルに着いた

汚染されたフェムトゥをなんとかできるかもしれないという鍛冶職人がいるらしい


雑居ビルは一階に入り口が一つ

外階段はなく、ビルに入るには必ずこの入り口を通らなければならない


「ここは一見さんお断りの商店なのだよ」


「商店ですか?」


何かを売っている風には見えない

看板も出てないし


「あまり堂々と売れないものを扱ってるからね」


あー、先生の元お仕事関係のお店ですかー

あまり関わりたくなかったなー…


中に入ると、防犯カメラと電話が置かれた受付台があった

デモトス先生が受話器を取り何かを話す


カチャリ…


すると、奥に一つだけあるドアの鍵が開いた



「…っ!?」


中は魔界のような雰囲気の部屋だった

棚が並び、商品らしきものが乱雑に置かれているのだが、それが魔界っぽさを演出している

もちろん魔界なんか見たことはないが


「うあ…ぁぁ…ぁ…」


顔のような三つの穴が空き、うめき声をあげているニンジン

禍々しい真っ黒な花

妖精らしきもののミイラ…


「な、何の商品なんですか?」


「…漢方薬だろう」


「絶対違いますよね!? あの顔のついたニンジン唸ってますよ!?」


「呪われるから触らないようにな」


「…っ!?」


この狂った商店のカウンターには、これまた変わった老婆が座っていた

顔の半分が金属になっている

サイボーグか?


デモトス先生がその老婆と言葉を交わすと、階段の下を示される

俺たちはその階段を降りていった



地下は工房兼作品棚になっていて、武器や防具が整理されて置かれている

こちらに背中を向けて、赤ずきんをかぶった背の小さな店員が棚の掃除をしていた


「…レッドキャップ?」

思わず呟いた言葉に赤ずきんは反応した


ちなみにレッドキャップとは、邪妖精と呼ばれる妖精のモンスターだ

好戦的で獲物の血で自らの帽子赤く染める厄介な敵だ



ダンッ!


「うおっ!?」



ナイフが飛んできて、俺の顔を掠めて柱に突き刺さる


「誰がレッドキャップだって…? あんなモンスターと一緒にするなんて殺されたいの?」


赤ずきんをかぶっていたのは若い女だ

高校生くらいに見える


「…なっ!?」


ちなみに、俺はナイフを若干避けている

にもかかわらず俺の顔を掠めたってことは、避けなかったら顔に刺さってたってことだ


「落ち着きたまえ、スサノヲ。彼が話しておいたラーズだ」


「デモトス先生、いらっしゃい!」

スサノヲと呼ばれた赤ずきんの女の子は、急に満面の笑みで挨拶をした


「ちょっと待て、普通いきなりナイフ投げるか!?」


「あぁ? お前がモンスター呼ばわりしたからだろうが、次言ったら殺すからな!?」

スサノヲの表情が豹変してゴロツキの顔になる


あ…、こいつは絶対危ないやつだ


「スサノヲ、落ち着きたまえ。ラーズは使()()()、そして職人の作品が分かる人間だ」


「…」

スサノヲと呼ばれた少女に睨み付けられる


「さ、これからのことを話さなければならない。お互いに握手で仲直りだ」


いきなり握手?

だが、確かに初対面で喧嘩をしてもしょうがない

俺はスサノヲに手を差し出す


「ラーズ、()()で握手をするんだ」

デモトス先生の突然の言葉


本気の握手って何? と、思った瞬間に意味が分かった


ゾクリ…


スサノヲが手を出した瞬間、寒気がした

スサノヲの発達した腕に目を奪われる


なんだこの腕は!?


俺の本能が勝手にナノマシン群のスイッチを入れた

ナノマシン集積統合システム2.0が発動し、強化した腕でおもいっきり握り返す



グググ…ビキビキ…


「っ…!」 「…!」



ぐうぅ…、凄い力だ!

ナノマシン群で強化しているのに力負けしかねない、とんでもない握力で手を握り込まれる

2.0を使ってなかったら、恐らく手を握り潰されていただろう


潰されるわけにはいかない、こっちも全力で握り潰しにいく



しばらく無言で握り合うが、決着はつかなかい

こいつ、生身の腕で、こんな小さな体で、どうやったらこんな握力を出せるんだ!?


「そこまでだ、二人とも手を離せ」

頃合いとみたのか、デモトス先生が決着はつかない俺達の握手を止めた


「…」 「つ…」


手を離すがメチャメチャ痛い

こいつの腕は何で出来てやがるんだ


「ラーズ、スサノヲは問題はあるが一流の職人なのは間違いない。この太い腕と握力はその証だよ。そしてスサノヲ、ラーズはナノマシン集積統合システムの導入強化手術を受けている。育てあげたナノマシン群の強化は素晴らしいだろう?」


スサノヲは俺を睨み付ける


「ちっ、お前、強化人間なのかよ。あたしの握力とやり合うとはなかなかだと思ったのによ、体の改造で楽して力を付けた腑抜けとはな」

スサノヲが舌打ちをする


「誰が楽しただって? このシステムをここまで育てるのに、俺がどんな思いをしたと思ってるんだ?」


デモトス先生の訓練に楽な部分は一つたりともなかった


「ラーズの言うとおりだ、スサノヲ。そのナノマシン集積統合システムは、自分の体を鍛え、ナノマシン群を育てあげなければ強化能力など発現しない。簡単に強くなれるような強化手術ではないぞ」


「…」

デモトス先生に言われ、スサノヲは黙ってしまった



デモトス先生がスサノヲ紹介してくれた


「彼女は優秀な武器防具の職人だ。だが、過去にいろいろあって表の世界では商売が出来なくなってしまったのだよ。だが、腕は私が保障しよう」


「いろいろって何があったんですか?」


「最近の奴らは、すぐに新しい武器防具に持ち変えちゃうからよ。あたしの作品に()()()()を持たない奴らをちょっと小突いただけだ」


「思い入れ?」


「スサノヲの力で小突くと大変なことになってしまうんだ。それで業界からブラックリストに登録されて裏仕事しか出来なくなってしまったんだよ」

デモトス先生が残念そうな顔をする


「さ、ラーズ。君のフェムトゥを出したまえ」

俺はデモトス先生にうながされ、倉デバイスから汚染されたフェムトゥを取り出す


「それで、スサノヲ。話しておいた通りだが、この鎧の魔属性汚染をなんとかする方法はあるのかね?」


スサノヲはいくつかの危機をフェムトゥに接続し、検査を行う

その作業内容は、鍛冶職人というよりも魔導師や科学者のようだ

スサノヲは、結論が出たのか一人で頷きながら顔を上げた


「方法は二つありますね」

スサノヲはかわいい生徒が先生になつくように話始めた


…この二人の関係って何なんだろう


「一つ目は、鎧としては廃棄。魔属性オーブの原料にして、それを売って新たな防具を買う」


鎧としての再利用は出来ないってことか

まぁ、普通に考えたらそうなるよな


「もう一つは、魔属性の属性装備としてアップデートする方法」


「属性…装備!?」


「もちろん、金もかかるし手間もかかる。だが、ここまで魔属性が染み込んでいるなら、それを逆に利用すれば化ける可能性はある」


パンパンッ


デモトス先生が手を叩く

「よし、では仕事の話をしよう。スサノヲ、お茶を入れてくれないかね?」


俺達は工房のテーブルを囲んで座った




四章開始です

読んで頂きありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ