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9話 基本研修・クエスト完遂編

用語説明w

ノムルウルフ:Eランクの狼型モンスター


ドラゴンブレイド:ロングソードの一種

倉デバイス:仮想空間魔術を封入し、体積を無視して一定質量を収納できる

隊員識別票:防衛軍全隊員が持つドッグタグ


サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主


…うむ、やっちまった

開始から十五分くらいか?


呼吸がきつい、左手の感覚がない

噛みつかれた後に腕を引きずられた

傷口が思いっきり広がり、ドバドバ出血している


痛みを我慢して左腕に体重をかけ、ノムルウルフの口を地面に押し付ける



ザシュッ…


「グゥゥ!」



右手のナイフをノムルウルフの頭の後ろに突き刺すと、ビクンッと痙攣し、牙の力が弛緩した


噛まれた腕が痛ぇ…!


すぐにカプセルワームで傷をふさぐ

だが、カプセルワーム一個じゃ傷が広くて足りない!

続いて回復薬の尖ったアンプルを傷口付近に刺すと、多少痛みが引き左手が動かせるようになった


今使っているこのロングソード

実は、俺の自慢のドラゴンブレイドで中々の逸品だ


だが、ノムルウルフ二匹の頭をかち割っただけで、血油で切れなくなってしまった

おかげで三匹目を斬るのに失敗し、左腕を噛みつかれて負傷、しかも重症だ


スタミナが切れていたが、回復薬で疲労が大分軽くなった

だが、使いすぎると効果が薄くなるので、負傷時のことを考えるともう無駄遣いはしたくない



敵はノムルウルフがあと三匹だ

警戒しながら囲もうとしてくるので、一旦巣穴から離れる


あれ、三匹って一匹多くないか!?


サイモン分隊長を横目で見ると、まだ向こうで別のノムルウルフと戦っていた


…くそっ! まだ助けは来なさそうだ


回復薬のおかげで、多少痛みはあるが左手は動く

俺は間合いの長いドラゴンブレイドを両手で構え、ノムルウルフ達の動きを見る


小さめのノムルウルフが左から襲いかかってきた


落ち着けよ、俺!


ドラゴンブレイドはもう()()()()、でも()()ことはできる


力まないことを意識して突く


シュッ…


リーチの差は歴然で、顔の脇から体に刃が入っていく

自分の勢いで刃が刺さったノムルウルフは、刺さった刃に驚いたのか動きを止める


すぐに刃を引き抜き、俺は思いっきり頭を蹴りあげる



ガンッ!


「ギャイン!」



悲鳴をあげてノムルウルフが倒れる



よし、あと二匹!


切る場合は姿勢の低い相手には難しい

だが、突く場合はリーチの差で有利だ


近くにいた大きめのノムルウルフに、一歩だけ近づいて刺激する

これにのって、ノムルウルフが襲ってきた


「ガアァァァァ!」


同じように、飛びかかってくる敵を突く

カウンターの勢いで、刃が深く突き刺さる


刺された生物は、一瞬動きを止めるようだ

すぐに刃を抜いて、剣を上から叩きつける



ドスッ!


「ガフッ…!」



切れなくても、叩きつければ背骨が折れる感触があった

よし、いい感じだ、あと一匹!


次に目をやる


「…うわっ!」

いつの間にかサイモン分隊長がこっちに来ていた


「お疲れ、よくやった」


そう言うサイモン分隊長の足元には、最後のノムルウルフが頭をかち割られて転がっていた




・・・・・・




「傷は必ず洗浄と消毒をしろ。モンスターはどんな雑菌や毒を持っているかわからん、毒消し薬も飲んでおけよ」

サイモン分隊長が俺の腕を水で洗い、抗生物質クリームを塗りながら言う


「痛いっ! すいません、めっちゃ痛いです!」


「回復アイテムを使う研修なんだから、ここまで大きな怪我しなくてもよかったんだぞ?」


「いや、狙って怪我が出来るか!」


「だが、剣さばきは中々だったな。どこで習ったんだ?」


そう言いながら、サイモン分隊長はカプセルワームを俺の腕に追加で貼り付けた


手際がいいな


「高校時代、親戚の姉ちゃんに習ったんですよ。姉ちゃんはドラグネル流剣術をがっつりやってる人だったので」


「そうか。実際に斬ると、刃の劣化や血糊で切れなくなっただろ? 突きメインに変えたのはいい判断だったな」


「引いて斬るのが基本なんでしょうが、実戦だと叩き切っちゃって刃がダメになっちゃいますね」


「ま、理想通りにはいかないな。さ、巣穴を確認しようぜ」


そう言って、サイモン分隊長はノムルウルフの巣に向かって歩き出した




ノムルウルフの巣は、深さ1メートル程の浅い洞窟だった

奥にガラクタが集められ、更にその奥にノムルウルフの子供が三匹いた


「子供はどうするんですか?」


「ここから北に少しいった場所の森で離す。生態系には必要なモンスターだからな」


「また森から出てきたら?」


「そりゃ討伐するしかないさ。人間の領地はしっかり防衛するのが防衛軍だろ」


「了解です」


とりあえずノムルウルフの子供は放っておいて、ガラクタを漁ってみる

ノムルウルフは、気に入ったガラクタを巣に持ち帰る習性があるらしい


コップ、おもちゃのスコップ、破れたリュックサック…

結構人間の物が出てくるな


「プラスチックとか土に還らないものは持ち帰るからな」

サイモン分隊長の声が聞こえる


その時、銀色のタグが付いたネックレスを見つけた

これには見覚えがある

それは防衛軍の、俺の付けているものと同じ隊員識別票だからだ


クエストを失敗した隊員のものだろう

その近くに小袋に入った人工物であろう直方体を見つけた


「サイモン分隊長、これって…」


「ああ、そのタグは失敗した奴のだな。持って帰ってやろう」


「この四角いのは?」


「お、これは…! お前、倉デバイスじゃねーか!」


「何ですか、それ?」



倉デバイス


亜空間を作る魔法陣を封入し、充電式魔石の魔力が続く間、体積を無視して決まった質量をコンパクトに封印出来る

銃を何種類も持ち運べたり、弾丸や魔石、回復薬等を大量に持ち運べて便利だ

50~100kg対応の物が多いらしい


中古で五百万ゴルド、新品で八百万ゴルドといった高額アイテムだ



ちなみに百ゴルドでジュース一本、がこの貨幣の価値だ

高級車が買えちゃうな


この高価な落とし物は、防衛軍の隊員の物なのだろうか?


「俺ら前衛は物資切れは死に直結する。これは、物資切れのリスクを減らす命綱になるってことだ」


「私がもらっちゃっていいんですか?」


「物にもよるが、発見アイテムはクエスト受注者の物になることがほとんどだ。ここまでの希少アイテムは中々見つからないから、ビギナーズラックって奴だな」


「大事に使います! でも分隊長、私は前衛希望じゃないですからね?」


サイモン分隊長は歩兵だ

歩兵はMEB随伴分隊の戦闘担当となる

一応、俺の希望はMEBのパイロットだと伝えたのだが、サイモン分隊長は歩兵が欲しいみたいなのだ


「さ、帰ろうぜ」

歩き出すサイモン分隊長


「聞こえました?」


「その子犬持ってきてくれ」


…完全に無視されたな



1ゴルド=1円って感じ

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