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104話 魔属性環境3

用語説明w

ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシンを運用・活用するシステム。ラーズの固有特性となった

フェムトゥ:外骨格型ウェアラブルアーマー、身体の状態を常にチェックし、骨折を関知した場合は触手を肉体に指して骨を接ぐ機能もある

魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる

ロケットハンマー:ハンマーの打突部にロケットの噴射口あり、ジェット噴射の勢いで対象を粉砕する武器


エマ:医療担当隊員。回復魔法を使える(固有特性)

デモトス先生:ゼヌ小隊長が紹介した元暗殺者で、ラーズの戦闘術の指導者。哲学と兵法を好む

データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AI。明るい性格?

リィ:東洋型ドラゴンの式神で、勾玉型ネックレスに封印されている


雄叫びの主は一直線に近づいてくる

木々の隙間から姿が見えた


大きな体に腕が三本、足は四本!?

大きな人間の体で、肉食獣の腕や馬のような腕が肩から、そして人間の腕が一本胸から生え、足は人間の足が二本、更に腹からも毛の生えたよく分からない足が2本生えている


「な、何ですかあれは…?」


「フランケンシュタインというやつだな」


フランケンシュタイン

遥か昔に死者の蘇生を試みた科学者の名前を付けられたアンデッドだ

高濃度の魔属性を纏ったアンデッドは本能的に生物を襲う

だが生物がいない場合、アンデッド同士がたがいに襲い合う

そしてお互いの体のパーツを取り込んで強化されていくのだ


こうして体を取り込み異形と化したアンデッドは、数体分の体と魔属性を帯びた強力なアンデッドとなる


「ご主人! フランケンシュタインのパーツは切り離しても動く場合があるらしいよ! 気を付けて!」

データがフランケンシュタインについて調べてくれたらしい


「ラーズ、総力戦だ。霊札は解禁、爆弾系は可能な限り使うな」


「了解です!」


「エマ、聖属性の攻撃とラーズの回復を頼めるかい?」


「はい…!」

エマも緊張した面持ちで頷く


「私はエマの護衛とサポートにまわる。ラーズ、機動力重視で思いっきりやりなさい」


俺は頷く

武器は陸戦銃と超振動ブレードだ


非戦闘員であるエマの攻撃参加に、霊札の解禁

デモトス先生から見ても、フランケンシュタインは強敵だということだろう



フランケンシュタインが目の前で止まる


「ふあぁぁぁー」

そして、少女のような声で鳴いた


…気持ち悪い!

どんな声帯を取り込んだんだ!?



ブゥンッ!



フランケンシュタインは肩から生えた馬の腕を振り回す

俺は軽くバックステップ



ドドドッ ドドドッ!



アサルトライフルを撃ち込む

だが、全く怯む様子はなく、被弾しながら飛び込んできた



「…がっ!?」


ドゴォッ!



肩から生えた腕を警戒してしまい、胸から生えた腕の攻撃を受けてしまう

左の二の腕に被弾し、激痛が走る


フランケンシュタインの胸から生えた腕はひしゃげて砕けている

腕の筋力を限界まで出し、使い捨てにしやがった


アンデッドには、死んでいるから当たり前だが生存本能が無い

恐怖もなく、肉体の限界の力を出し、壊れても痛みを感じない

本来怯むはずのダメージを与えても、無反応で攻撃をしてきたりする

生物の反射的な反応に慣れている分、戸惑ってしまうのだ


フェムトゥの接骨機能が働き、左腕をの骨を接ぐ

俺は意識を集中し、警戒しながらナノマシン群で治療


刺激しないようにゆっくりと陸戦銃を構えて、



ガガガガッ!



アサルトライフルを連射


「はぁあぁぁ…」


フランケンシュタインは、また女の声を出しながら突っ込んでくる


ボッ!


少し引き付けて、ホバーブーツのエアジェットで離脱


ホワァ…


携帯用小型杖で拘束の魔法弾を当てる

振り替えって放たれる大振りのパンチを避け、一歩踏み込み散弾を発射



ガシュッ!


ガクッ…



足に命中し、フランケンシュタインの体勢が崩れる

だが、崩れながらもとんでもない勢いで体当たりを放って来た



ドガァッ!


「ぐはっ!」



フランケンシュタインの体で吹っ飛ばされる

少しは拘束魔法弾の効果が出ているようだが効果が少なすぎる、何でだ!?


「アンデッドは霊体にエネルギーを持っている分、魔法耐性がある…! 弱点の火属性や聖属性じゃないと効き辛いはず…」


そうか、魔法耐性まで考えていなかった!


エマが説明しながら、回復魔法と硬化魔法をかけてくれる

回復役がいるのは心強い


だが、敵が回復役に近づくのは危険だ

俺は手でエマに離れるように合図を送る


フランケンシュタインは、突然壊れた足を引き抜き、腹についていた足を下にずらした


いや、関節どうなってんだ!?


二足歩行に戻ったフランケンシュタインが再度襲いかかってくる

銃は、弾が貫通してしまい効果が薄い

俺は超振動ブレードを構えてカウンターを狙う


もう胸から生えた腕は壊れている

アンデッドとはいえ、腕が二本であれば見慣れた動きだ


殴りかかってくる腕を避け、ブレードで切っていく

だが、



ガブゥッ!


「ぐあっ…!?」



肩から胸にかけて斬りつけるが、その瞬間に噛みつかれた

与えるダメージが、行動の阻止に繋がらない

常に相討ちを狙われているような感覚だ


そのまま両腕で体を抱き抱えられて締め付けられる

まずい、首を噛みつきを狙われたら危ない


バチっ


俺はサイキックでフランケンシュタインの目を弾くが反応はない

ダメか!


バキキッ…


フェムトゥの装甲がきしむ

凄い力だ、ヤバイぞ…!



ギュィィィン…



その時、違和感感じた

新たな感覚…機能…、なんと言えばいいか分からない

自分の体に()()が追加されたような感覚だ


最初に力の増加

フランケンシュタインの締め付けに対抗できる力が出せる

次に体の強度

更にフェムトゥの装甲が体に引っ付いたように密着し、うまく言えないが体が()()なっている



「ぐぐぐぁぁ…あああああっ!」


「ふぁぁ?」



締め付けていた両腕を力で広げ、隙間を作る

パワーで対抗され、フランケンシュタインが驚いた声を出す


そのまま膝の力を抜き、フランケンシュタインの腕の下に体を落として脱出した


一歩下がり、倉デバイスからロケットハンマーを取り出す

相討ち狙いの敵には、ダメージよりも相手の体勢を崩せる衝撃が必要だ

斬撃や銃弾では、切断や貫通はできても相手の行動を阻害する衝撃は作れない


力がみなぎっている

今なら出来る



ボッ!


「うおぉぉぉっ!」



エアジェットで一気に飛び込む

パンチを掻い潜り、フランケンシュタインの横に回る



ゴシャッ!


ローキックを左足に叩き込む

パワーが上がっている分、骨を一発で叩き折った!


だが、予想外のことが起こる

ローキックの反動で、俺の足が反対方向に吹っ飛ばされたのだ


「うおっ!?」


なんとか着地、何が起こった!?

フランケンシュタインの追撃をバックステップで躱して距離を取る


「ラーズ、体重が変わらないのに出力が上がっているんだ! 衝撃の反発力で吹き飛ばされるぞ。体幹と大地で受け止めるんだ! 訓練を思い出せ!」

デモトス先生が叫ぶ


そうか、反発力か

そんなに筋力が上がっているのか!


武道の基本だ、体幹と大地で衝撃を受け止める

もしかして、これを見越してのバランスと体幹の訓練だったのか!?


俺は再度飛び込み、腰を落として左ストレート


ぐちゃっ…


骨はおれなかったが、フランケンシュタインの馬のような腕の肉を抉る

さらに、ロケットハンマーの追撃



ボゥッ! ゴガァッ!



フランケンシュタインの頭を吹き飛ばし、右肩にハンマーがめり込む


「ふぅ…」


やった

危なかったが、何とか…


「まだだ!」


デモトス先生の声に顔を上げると、フランケンシュタインが左手を叩きつけてくる


バシィッ!


「ぐっ…!」


頭が吹き飛んで、まだ動くのか!?

この野郎! やってやる!


衝撃でロケットハンマーは落としてしまった

もう、素手でいい


前蹴りで左足を壊す

衝撃でフランケンシュタインが崩れる

崩れれば隙が出来る


横に回り込み、脇腹にストレート

肉がえぐれ、くの字に曲がる

ローキックで左足をもう一度叩き折る

片足を破壊、上体が下がったので肩を掴み引きずり倒す

首の付け根辺りを思いっきり踏み折る

急所らしき場所、攻撃に使えそうな部位をどんどん破壊していく


まだか、まだなのか?

次はどこを…いくらでも…


…ぶっ壊して…細切れに…




…ヒュルル~…ヒュル~…




…ふと、しずかな悲しい曲が聞こえることに気がついた


静かな…


落ち着く…


我に返ると、目の前にはフランケンシュタインの肉塊

その向こうでエマが自信のサイキックである「心の曲」を奏でていた


「…」


「…落ち着いたかね? 君は我を忘れてしまっていた。だからエマに鎮静作用のある失意の曲を奏でてもらったのだ」


「…あ、…はい」


我を忘れていた?

確かにそうだ、何があったんだ?


「今の気分はどう…? 恐らくナノマシン集積統合システム2.0が発動していると思うけど…?」

エマも聞いてくる


そうだ、思い出した

急に力が湧いて来て、フランケンシュタインと戦えたんだ

そのうち、だんだんと奴しか見えなくなって…


「ヒャンッ!」

突然、リィが吠えた


俺が上空のリィを見上げると、


「ラーズ、後だ!」


振り向くと、フランケンシュタインが起き上がって突っ込んでくる来る



ガバッ!


「ぐっ!?」



体を抱えられ、持ち上げられる

そのままどんどん押し込まれていく


「このっ!」


俺が意識を集中すると、またあの感覚が起こる



ギュィィィン…


また力が湧く

これが2.0か!



抱き上げられながらも足で思いっきり蹴り込むと、爪先がフランケンシュタインの胸に突き刺さった

胸の中には、顔と思われる器官が埋まっていた


こ、これが本体の脳なのか!?



「あ…!?」


その時、突然体が宙に浮いた

持ち上げられたままかなりの距離を走られ、崖まで来ていたらしい


フランケンシュタインは崖を飛び出し、俺ごと下の川に落ちていった



54話の後ろに閑話を挿入しています

合わせて読んでいただけると嬉しいです

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