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103話 魔属性環境2

用語説明w

倉デバイス:仮想空間魔術を封入し、体積を無視して一定質量を収納できる

フェムトゥ:外骨格型ウェアラブルアーマー、身体の状態を常にチェックし、骨折を関知した場合は触手を肉体に指して骨を接ぐ機能もある

シグノイア純正陸戦銃:アサルトライフルと砲の二連装銃

ドラゴンブレイド:ロングソードの一種で、霊的構造としてドラゴンキラーの特性を持つ

霊札:霊力を込めた徐霊用の札

超振動ブレード:根本の超振動モーターで刃の先端部分の極細の帯状の刃を振動させ、凄まじい切れ味を実現したブレード


背の低い、葉っぱの真ん中に特徴的な白い筋が一本入った草

これは浄化草と呼ばれる草だ


属性が偏った環境で繁殖し、その属性の魔素を無属性の魔素に戻して吐き出す

特に魔属性の環境下で繁殖するので浄化草と呼ばれている


聖属性は生命力を上げる属性

魔属性は生命力を下げる属性


今でこそ、魔属性魔法、魔属性魔素などと、魔の字が多過ぎて分かり辛い言い方をしているが、昔は魔属性は闇属性、聖属性も光属性などと呼ばれていた


しかし、これは正確ではない

闇とは光がない状態を示し、生命力とは関係がない

光とは電磁波の一種で、これまた生命とは無関係だ

よって、生命力に関する属性は、聖・魔属性、合わせて生命属性と学会によって呼称を統一したという経緯がある



「浄化草がかなり繁殖している…ここから先の魔属性が高い…」

エマが浄化草の葉を採取しながら言う


確かに、急に雰囲気が変わった

肌にまとわりつく死の臭い


この先は、魔属性に影響されたアンデッドが増えるだろう

この魔属性環境下では、生物がアンデッドに殺されるとアンデッド化してしまう可能性が高い


「注意しよう、お互いに離れないように」

デモトス先生が先頭に立って進んでいく



浄化草エリアに入って二時間ほど

やはり検知すると魔属性濃度が高い


「浄化草が繁殖してくれたおかげで…魔属性が広がらなくてすんでいるみたい…」


「ふむ、確かにそうだね。だが、浄化草はこの地域では自生していないはずだが、この浄化草はどこから来たのだろう?」


デモトス先生とエマが、検査結果を見て考察を述べ合っている

俺はというと…


「リィ、ナイスだ! そのままそっちのゴーストも頼む!」


「ヒャンッ!」


骨のアンデッドモンスターであるスケルトンの攻撃を避けながら指示を出している

リィは物理攻撃が効かないゴーストにも噛みつけるのでそっちを任せている


バキッ!


攻撃を避け、後ろからドラゴンブレイドでスケルトンの首を叩き折る


このエリアに入って、低級アンデッドが徘徊するようになった

ゴーストやスケルトン、ゾンビなどだ

弱いが攻撃性はあるので、俺が護衛を担当している


デモトス先生の指示で、銃弾と霊札は節約し霊的構造を持つドラゴンブレイドで倒している

もう十体以上のアンデッドを倒しており、そろそろドラゴンブレイドの刃が丸くなってきているし、疲れも溜まってきた


「これで最後…」

エマが検知採取を終えた


後は帰るだけだ

しかし、デモトス先生が手を上げて俺達を制止する

向こうから何かが近づく音が聞こえた


「…まずそうだね、今のうちに作戦を決めよう。ラーズは前衛だ、非戦闘員であるエマと敵の間に常に位置取るように。私はエマの護衛に付く、エマはラーズの回復を頼む」


「はい!」 「はい…」


「動体8! 全て体温が低く霊視対象、アンデッドだよ!」

データが警告を出す


「リィ、上空から霊体を攻撃してくれ! 危ないから地上の敵に近づくなよ!」


「フー…ヒャンッ」


リィは一声鳴いて上空に飛んでいく

意外と俺の言葉を理解しているし、聞いてもくれる

結構かわいい



さ、迎え討つ


今回は、敵が多くエマを連れては逃げられない

しかも、道もない森の中を移動しなくてはならずスピードも出せないため、間違いなく追い付かれる


エマを守るため、フェムトゥの防御力を頼りに機動力を捨てて受け止める戦い方だ

いつもサイモン分隊長がやっている壁役だ


俺は倉デバイスからロケットランチャーと陸戦銃を取り出す

しかし、デモトス先生に止められた


「ランチャーは爆発音が敵を呼び寄せる。出来るだけ霊札も節約した方がいいだろう」


「あ…、了解です」

俺はロケットランチャーを倉デバイスに戻す

ドラゴンブレイドは刃が丸まってもう使えないため、変わりに超振動ブレードを取り出す


「防御魔法(小)…」

エマが補助魔法をかけてくれた


「ご主人! ブラックゾンビ3、キョンシー2、悪霊3を確認だよ!」


データの索敵が優秀だ

画像から敵の種類まで特定してくれるのはありがたい


悪霊は浮遊していて物理攻撃が当たらない、遠距離攻撃だけ気をつけて無視


ダダダッ!


中距離からブラックゾンビを攻撃

ブラックゾンビは高濃度の魔属性に浸かり、魔属性を纏った死体だ

多少弾を受けてもそのまま突っ込んでくる


頭を中心に撃ち込み、動きを止める


ズパッ!


そして超振動ブレードで頭の中程を切断

だが、隣のブラックゾンビに胴体を組付かれ、キョンシーにも接近を許した



ゴガッ!


「ぐあっ!」



キョンシーにぶん殴られ、肩で受けるが陸戦銃を落としてしまう


くそっ、普段はホバーブーツで逃げ回りながら攻撃しているから、あまり移動できない戦闘だと簡単に距離を詰められてしまう!


俺は組み付いているブラックゾンビの脇をすくって体をひねって投げる


ぐじゅっ…


うげっ、体が腐っていて皮膚と肉が崩れやがった

倒れたブラックゾンビの首を超振動ブレードで切断


だが、もう一体のブラックゾンビが歯をむき出しにして突っ込んで来る

その横のキョンシーも同時に動く


こいつら、もしかして連携してる?


左腕の装甲でブラックゾンビの噛みつきを受け、右手の超振動ブレードをキョンシーに突き刺す


ズバッ!


刺した超振動ブレードを下に振ると、キョンシーの体が下に裂ける

だが、まだ動いて攻撃をしてくる


俺は超振動ブレードを離し、ブラックゾンビを中心に横に周る

噛みついているブラックゾンビをキョンシーの盾にしつつ、先にブラックゾンビを倒してしまわないと


俺は腰からコンバットナイフを取り出し、ブラックゾンビの首に突き刺す

顎の付け根まで刃を突き刺して下顎の力を弱め、前蹴りでキョンシーにブラックゾンビを押し出す


俺は、すぐに陸戦銃を拾い、乱射


ダダダッ ダダダッ ダダダ…


顔を中心に弾をぶち込み、ブラックゾンビを処理する


アンデッドには銃が効きづらい

アンデッドは死んでいる分、急所が存在しないため破壊面積が重要になる

貫通する銃弾より、ナイフの方が破壊面積が大きく、アンデッドの体を効率よく破壊できる

その点、簡単に人体を切断できる超振動ブレードは凄い



ガシュッ!


びちゃ…!



俺は、弾を受けながらも近づいてきたキョンシーの頭を散弾で吹き飛ばした


ふぅ…


一息ついて俺が周りを見渡すと、デモトス先生の前にキョンシーが倒れていた

デモトス先生が手をあげる


「ラーズ、よくやった」


エマもデモトス先生も怪我は無さそうだ


パァ…


エマが回復魔法をかけてくれた

フェムトゥの装甲のおかげで怪我は無いが、疲労が大きい

かなり楽になった


「ごめんなさい…援護しようと思ったんだけど…デモトス先生が見てろって…」

エマが申し訳なさそうな顔をする


「ちょうどいい訓練になると思ってね」

デモトス先生はにこやかに答える


「こ、この状況で訓練!?」


「戦闘は合格点だが、もう少しの余裕を持った方がいいな。キョンシーに突破されたことに気がつかなかっただろう?」


「はい…、すみません」


「周囲の把握は後衛の役だがね、サイモン分隊長は前衛で壁をやりながら指示まで出してるんだ。凄さが分かるだろう?」


確かにそうだ

壁役をやってみて、敵が近すぎて周囲が全く見えなかった

これで周囲を把握して指示を出せるサイモン分隊長は凄いんだな


「リィも頑張ってくれたよ」

デモトス先生が上を指す


「あっ! リィは!?」

やばい、完全に忘れてた!


「ヒャンッ?」

リィは上空から降りてきた


よかった、怪我は無さそうだ


「リィは、飛んでいた悪霊三匹を簡単に食い散らかしていたよ。霊体に対して強すぎる、おそらく霊属性だろうね」

デモトス先生がリィを誉めながらいう


霊属性

霊力を司る属性で、ゴーストなどの霊体に対して効果的な属性だ

物質である肉体を物質で殴れば壊れるように、霊体を霊力で殴れば壊れるのだ

かなり希少な属性だ


「戻ったら属性検査してみます」

俺もリィを誉める


「ヒャンヒャンッ!」


リィは嬉しそうに鳴いている

こいつ、ちょっとドヤ顔してない?


その時、遠くから雄叫びが聞こえた

まだ、帰るには早いようだった




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