表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/396

102話 魔属性環境1

用語説明w

ゼヌ小隊長:1991小隊の小隊長

デモトス先生:ゼヌ小隊長が紹介した元暗殺者で、ラーズの戦闘術の指導者。哲学と兵法を好む

エマ:医療担当隊員。回復魔法を使える(固有特性)

データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AI。明るい性格?

リィ:東洋型ドラゴンの式神で、勾玉型ネックレスに封印されている



「ラーズ、大変な任務お疲れ様。助かったわ」

ゼヌ小隊長から感謝を伝えられる


「いえ、とんでもないです。結局、その魔玉とか魔石は何だったんですか?」


ゼヌ小隊長の机の上には、俺がチンピラのアジトから持ち帰ったカバンが置いてある

中には、盗品と思われる魔玉や魔石が詰まっている


「先週、防衛軍の魔導工場の配送車両が駐車中に車上荒らしにあって、積んでいた魔石や魔玉が盗まれたの。軍用の魔石や魔玉は性能が高いから悪用されると危険でしょ? それで、防衛軍の諜報部が独自に捜査していたんだけど、ちょうどオズマの捜査とかち合って協力することになったのよ」


「そ、そうだったんですか」


防衛軍の被害品だったのか

人知れず防衛軍に貢献できていたのか


「秘密裏に回収できたし、これでしばらくは中隊本部を黙らせることができるわ。リロが戻ってきてからCランクを異動させてくれってうるさくて困ってたのよ」


「あ、そ、そうなんですか…」


全然人知れずじゃなかった…

思いっきり中隊本部に恩を売ってるよ!

ま、1991小隊のメンバーをとられるのは嫌だから別にいいか




・・・・・・




今日は調査任務だ

デモトス先生、エマと俺という変わった編成だ


西側の大きな森林地帯で広範囲に渡る魔属性の拡散が観測された

原因が不明なため調査を行うことになり、魔属性への対策で回復魔法が得意なエマが選ばれた


「デモトス先生にいてもらえれば、実質優秀な人員が+1になっていて助かります」

と、ゼヌ小隊長が嬉しそうに話していた


その考えには同感だが、俺としては命をかけている実戦中に訓練要素を追加して欲しくないというのが本音だ

割りと本気で勘弁してほしい


「ラーズ、サイキックの習得状況はどうなんだね?」


「え!? サイキックですか、えーとですね…」

急に話しかけられて焦ってしまった


「もう敵が出てきてもおかしくない、考え事はよくないな」


「はい、すみません…」


現在は森林地帯に入り、魔属性濃度の検知をしながら進んでいる

魔属性濃度は森が深くなるほど濃くなって来ている


俺のサイキックは少しずつ強くなって来ており、サイキックを発動させている精神の力である精力(じんりょく)の感知力も上がった


おかげで、森の中に発生したアンデッドの()()()()の存在をさっきからやたらと感じ続けている

無念の死を迎えた人間や自殺者の思念が魔属性に影響され魂を取り込む

それが半ゴーストと化し、その思念の存在をいたるところで感じられるのだ

数が多過ぎてうっとおしすぎる


俺は霊力がないので霊視カメラを通さないと姿は見えないが、目に見えないゴーストの存在を感じ取れるようになったのは大きい



「ご主人! ゴーストが多すぎるよ! 霊視カメラの感度を落とすよ!」


データのアバターに、熱源赤外線カメラに続き霊視カメラを導入したのだが、今回はゴーストが多過ぎて逆に索敵を困難にしてしまったようだ

今回の任務のために、ゼヌ小隊長が中古のアバター用霊視カメラを本部から借りてきてくれたのだ


データは、「世界の認知能力が上がったよ!」と、哲学的な喜び方をしていた

本当にAIか?


「ヒャンッ! フー?」


逆にリィは、式神だけあって霊力でゴーストのなりそこないたちをつついて遊んでいる

肉体をメインとする俺達と違い、霊体構造をメインとするリィは普段から霊体を認識しているのか、特に普段と変わった様子はない


「エマ、大丈夫かい?」


「はい…、ただゴーストが多過ぎて感覚が狂ってしまって…」


エマは霊力もあり、サイキッカーでもあるから、更に影響が大きいのだろう

しかも非戦闘員だ


俺達は、エマの体調を考慮しながらゆっくり調査を続ける


「よし、そろそろ一度休憩にしよう」

デモトス先生が俺達を振りかえる


「はい」 「はい…」


近くから水の流れる音がする

多分、近くに小川があるのだろう


俺達は腰を下ろして昼飯を食べ始める


「ラーズ、気配探知という術を知っているかね?」

デモトス先生が携帯食料かじりながら口を開く


「はい、名前だけは」


感覚を強化する特技(スキル)や魔法だ

熟練度によって感知範囲が変わるが、感知範囲内の動体を感知することができる


デモトス先生は頷く


「では、索敵のためにラーズが一番使いこなさないといけないものは何だと思うかね?」


「え…気配探知ですか?」


だが、俺は魔力も輪力もないので気配探知は使えない

俺が悩んでいると、デモトス先生話を続ける


「それはラーズ自身の体だ。君の体は気配探知の術以上のセンサーを持っているのだよ」


人間の体は優秀だ

気配や殺気さえも感知する


そもそも、気配とは何か

気配とは生体反応によって起こる、微かな空気の揺れや音のことだ

微かな心拍、呼吸、瞬き、汗の蒸発などによって起こる


では、殺気とは何か

脳は生体磁石と呼ばれる磁石を有し、電気信号で情報処理をしているため微弱な電磁波を発している

強い意志、つまり脳を活発に動かせば強い電磁波が出る

対象を殺す意志が発する電磁波などは尚更だ

この電磁波を、脳が殺気として感知しているのだ


つまり、脳は電磁波を感知する感覚器ということだ

地震や台風などの災害時はこの星の磁場が微かに乱れ、これを感知した動物達が逃げ出したりする


この電磁波を感知する感覚を第六感といい、虫の知らせとも呼ばれる

ちなみに、霊力や氣力、精力(じんりょく)を感知する感覚を第七感、魔力・輪力・闘力を感知する感覚を第八感という


「気配探知やセンサーを使えれば索敵は簡単かもしれない。だが、ダミー熱源や気配探知をすり抜けたり欺いたりする術もある。殺気に慣れ、自分の感覚を研ぎ澄まし、真の気配や殺気の探知が出来るようにならなければいけないよ」


「はい」


俺も、サイキックやセンサーに頼らないで、感覚を磨かなければいけないということだ


「ラーズ…頑張って…」

エマがかわいそうなものを見る目を向けてくる


エマは、血塗れの俺を連日治療してくれた

殺気に慣れる訓練の恐ろしさを知っているからだろう



俺達は休憩を終えて、また森の奥へ向かう


ドローンを上空へ飛ばし、GPSで周囲の状況と自分の位置を確認して記録していく

大気中の魔属性濃度、生息している草木の種類と組織内の魔属性濃度、土壌中の魔属性濃度を測定していく


「うーん…やっぱり…だんだん高く…」

エマが測定結果を記録しながらいう


森林とは、生態系が確立され属性的にも均衡が保たれている環境だ

ある特定の属性だけが強くなることは通常あり得ない

何か原因があるということだ



「…っ!?」 「これは…!?」


その時、突然空気が変わった

世界が一変したような感覚を肌で感じる


草の種類が急に変わった

検知器の魔属性の数値も跳ね上がっている


「ここから先は更に慎重に進もう」


エマと俺は、デモトス先生の言葉に大きく頷いた




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ