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8話 基本研修・クエスト準備編

用語説明w

回復薬:細胞に必要なエネルギーを与え、代謝を活性化

カプセルワーム:ぷにぷにしたカプセル型で、傷を埋め止血と殺菌が出来る

PIT:個人用情報端末、要はスマホ

クエスト:地域住民から防衛軍に依頼されるモンスター退治等の依頼

冒険者ギルド:クエストを受注するシステムの通称


サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主

エレン:獣人の女性整備隊員。冒険者ギルドの受付も兼務


「…今日は基本を教える!」

サイモン分隊長が腕を組ながら言う


今日から、俺は見習い兵士としての訓練を受ける


「初陣後に基本を教えるのはおかしくないですか?」

俺はすかさず質問する


「むしろ教えてもらえるだけありがたく思いやがれ! 昔は実戦で覚えてきたんだぞ」


「それで何人も死ぬんで、訓練制度を作ったと聞きました」


「いきなり臨機応変の大切さを学べたんだ。貴重な体験が出来てよかっただろ」


下手すると死んでたのに納得できるか、このハゲ!


「…お前、今失礼なこと考えただろ」


「考えてません。また突発の出撃が来る前に早く基本をお願いします」



サイモン分隊長が、疑わしそうな目をしながら回復薬とカプセルワームを取り出す


「最初に回復についてだ。これを知れば、生き残る確率が跳ね上がる。しっかり理解しろよ?」


以下要約


回復方法は二種類

習得した魔法等の技術と回復アイテムだ


当たり前だが、魔法等は習得が必要で俺には不可能だ

軍では医療担当が回復魔法を使える場合がほとんどで、うちの小隊ではエマという医療担当の女性隊員がいるらしい



回復アイテムには「回復薬」と「カプセルワーム」の二種類がある


そもそも、怪我をして、出血して、なぜ人が死ぬのか


血液は各細胞に酸素や栄養を運び、細胞はその酸素を使ってエネルギーを生み出すことで生きている

出血や怪我で酸素や栄養が運ばれなくなった場合に、細胞は機能を停止…すなわち「死ぬ」のだ


回復薬は生命力を増す聖属性を帯びており、このエネルギーを直接細胞に与える

酸素や栄養が運ばれなくなった細胞の生存を維持し、代謝し続けて傷をふさぐのだ


しかしデメリットとして、短時間に一定量以上使い続けると効果がどんどん落ちてくる



次はカプセルワームだ

これは、代謝では塞げない大きな傷や出血時に使う


芋虫みたいな、ぷにぷにしたカプセル型をしていて患部に貼り付けて使う

小さい細胞の集合体で、傷と同化し、自身の細胞の変わりに傷を埋め、血管を一時的に補完、さらに雑菌の消毒までする優れものだ


小さい傷や疲労には即効性の回復薬、大ケガや出血にはカプセルワームという使い分けだ


余談だが、伝説の「神らしきもの」の封印作戦時は、この回復薬やカプセルワームが開発されて劇的に死亡率が減ったという逸話が残っている



「理解できたか?」

サイモン分隊長が聞いてくる


「正直舐めてました。スゲー分かりやすかったです」


「何で舐めてるんだ? 現場でもちゃんと教えてたよな」


「必要なことを事前に教えない、外れ上司だと思ってました」


「あれは急に出撃になったからだろ。だがお前、本気で何も知らないの問題だからな?」


「いや、普通は防衛軍学校に入って習うんですよね? 私はいきなり配属になったから軍用アイテムのことなんて習ってないんですよ!?」


「分かった分かった。じゃ、実戦訓練のためにクエストに行こうぜ」



…実戦って、実はスゲー怖い言葉じゃね?



・・・・・・



整備班の事務室

サイモン分隊長と俺はクエストの受付をしに来ている


「冒険者ギルドへようこそ」

クエストの受付担当のエレンだ


クエストは、地域住民の依頼でモンスターを討伐する依頼が大多数だ

防衛作戦以外に、危険なモンスターの討伐も防衛軍の大切な任務なのだ


依頼を受けるシステムが大昔の冒険者ギルドに似ていることから、クエストの受付システムを冒険者ギルドなどと呼んでいる


俺は自分のPITを操作して、小隊の共有サイトを確認する

隊のデータ共有のためのサイトだ


「共有掲示板に冒険者ギルドの掲示板がある」

サイモン分隊長に言われて、俺は冒険者ギルドのページに飛ぶ


「依頼が結構ありますね」


「うちの小隊は管轄区域が広いからな。田舎だからモンスターも多い」


「どのクエストに行くんですか?」

エレンがサイモン分隊長に尋ねる


「ノムルウルフの討伐だ」


エレンが自席のデスクトップコ型情報端末を操作する

「はい、登録完了。ラーズはクエスト初めてですよね? 気をつけて」


「うん、マジで気を付ける」


「今回は回復アイテムの使い分けと、近接戦闘の訓練だ。無傷で済むと思うなよ?」

サイモン分隊長が軽く言ってくる


怪我前提の任務って軍としておかしくない?


「サイモン分隊長、ラーズは正式採用になったとはいえ、まだ見習いですからね? 無理させちゃダメですよ」

エレンがサイモン分隊長をたしなめるように言う


そうそう! もっと言って!


「大丈夫だって、ただの訓練だ。早い目にやっときゃいけないしな。さ、ラーズさっさと行くぞ!」

サイモン分隊長はエレンの言葉に、特に気に留めた様子はなかった



・・・・・・



クルスとホンが車で送ってくれた

隊の公用車をメンテナンス工場に持ち込むついでということで、帰りも迎えに来てくれるらしい


「気を付けてな」「頑張って」

二人の声に送られて車を降りる


装備を持って軽い山道を登る

ここが今回のクエストの現場で、訓練場所だ



依頼内容は、ノムルウルフ10匹程の群れの討伐

小さい洞穴に巣を作っているらしい


町の住人に一人、防衛軍の訓練生に一人死者が出ているらしい

つまり、一度クエストは失敗しているってことだ


「サイモン先生、言わせてください」

俺は手を上げて言う


「誰が先生だ。言ってみろ」


「分隊長は私のことを、超優秀な勇者様と勘違いしていませんか? クエストの選び方おかしいでしょ」


「クエストが失敗してることを言ってるなら、あれは功名心にかられたバカが突っ込んで囲まれたからだぞ。報告書読んだのか?」


「報告書ってどこで読むんですか?」


「エレンが共有フォルダに入れてくれてるぞ」


…だから、先に言ってよ

すぐにPITで小隊の共有サイトにログインし、クエスト資料を読む


ノムルウルフ、Eランクの狼型モンスター、数匹の群れで生活。拠点を作ると、子供を育て、巣立つまで拠点を守る。

主な攻撃方法は噛みつきで、複数に同時に噛まれると非常に危険

クエスト情報

失敗数1

失敗内容:

単独で群れに近づき、周囲を囲まれ同時に複数に噛みつかれた

仲間の助けも遅れ、首を噛みつかれて死亡

死因、出血性ショック死


…囲まれたらダメってことだな

ありがとう、知らない先輩



「作戦は単純だ。一匹づつ確実に殺す。怪我したらその都度回復だ」


「分かりました。二人で分けたら一人五匹くらいってことですね?」


「そうだ。但し条件がある。今回は、刃物だけで対処しろ」


「え!? 銃は…」


「刃物だけだ。そのために、そのロングソードやハンティングナイフを持ってこさせたんだろうが」


「いや、敵複数で刃物で対処とか無謀です! しかも、剣でまともに切ったことないんですよ!?」


「俺が補助するから大丈夫だ。回復の使い方、刃物での対処方法は身につける必要があるからな」


「えー…」


「さ、行くぞ! ノムルウルフは巣からは離れない。飛びかかってくる敵を順番に切っていけ! カウンター狙いが有効だからな」

そう言って、サイモン分隊長が先陣を切る


不安だけど仕方ない

欲を出さずに一匹ずつ、深追いはしないように…、自分に言い聞かせる


俺は覚悟を決めてついていった


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