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97話 戦果

用語説明w

ゼヌ小隊長:1991小隊の小隊長

メイル:1991小隊の経理と庶務担当、獣人の女性隊員

ジード:情報担当の魔族の男性隊員、補助魔法が得意

エマ:医療担当隊員。回復魔法を使える(固有特性)

リロ:MEBパイロットの魚人隊員。十歳程度の容姿をしている

エレン:獣人の女性整備隊員。冒険者ギルドの受付も兼務

デモトス先生:ゼヌ小隊長が紹介した元暗殺者で、ラーズの戦闘術の指導者。哲学と兵法を好む


俺達の防衛作戦が終了し、猩猩(しょうじょう)討伐のミッションが終了した


帰ってきた俺達を集めて、ゼヌ小隊長が声をかける


「みんな、よくやってくれたわ。救助任務達成、人と装備共に大きな損害なし、猩猩(しょうじょう)の素材はかなり綺麗な状態で手に入ったわ。この成果は百点ね」


猩猩(しょうじょう)の脳ミソは早速入札があったぞ。毛皮は急がないが、損傷が少ないから高値が期待できそうだ」

シリントゥ整備長が報告する


猩猩(しょうじょう)の脳ミソは高級食材として需要がある

だから、すぐに入札を募集して売り出したのだ


「救助した隊員達は、あの超振動魔法でやられたらしいですよ。猩猩(しょうじょう)の情報を渡さなかったから、向こうの小隊も嫌がらせで情報を隠したんでしょうね」

ジードがため息をつきながら言う


完全に先発の小隊を人身御供に…


「…仕方ないわ、リロが戻って来て初めての防衛作戦だもの。うちに任せたら今回のような高難度のミッションも成功させられるってアピールできないと、確実にリロをとられちゃうもの」


実は、リロは優秀なMEBパイロットとして本部でも有名になっており、引き抜きの話が出ていたらしい

その前準備として、リロを消防防災庁に出向させられたのだ


ゼヌ小隊長は、その人員の穴埋めの条件に新人を一人要求し俺が新たに配属されたそうだ

だが、ゼヌ小隊長はそもそもリロを手放すつもりはなく、MEBの有効性と必要性を本部に見せつけてリロの異動を白紙にするつもりとのこと


「…それって、私の分の人員を騙して増やしたようなものじゃ?」


「予定や状況は常に変わるからね。ラーズもリロも1991小隊に必要な人材だっただけ。中隊本部の連中も今日の戦闘で理解できたでしょ?」


「あたしは1991小隊のままままがいいです!」

真っ黒いゼヌ小隊長と純真なリロの笑顔が対照的だ


うん、余計なことは考えないようにしよう

人事に関する政治的な話なんかどうせ理解できないし


「今回の防衛作戦で、特別報酬が出るのは確実。更に猩猩(しょうじょう)の素材の売却収入も期待できるわ。みんなにも特別ボーナスを出せると思うから期待してね」


「やった!」 「きゃー!」 「何買おう!?」

みんなの歓声が響く


「それで、恒例の貢献褒賞なんだけど。サイモン君とジードと相談して、先見性を重視してリロとラーズに送ろうと思うんだけど、みんなどうかしら?」


貢献褒賞

高難度の戦闘において、その成功のための貢献者に贈られるボーナスだ


リロのMEBの腰部アクチュエーターの交換、そして俺の式神導入の資金にそれぞれ充てていいとのことだ


「お前ら今度何か贈れよな!」 「皆にも感謝するようにな」


サイモン分隊長とジードに声をかけられ、リロと頭を下げる

大変ありがたい


こうして、大成功でミッションを終えた




・・・・・・




経理室は、地獄の様相を呈している


「ラーズ、疲れているのにごめん! 助かる!」


必死の形相でメイルが作業を続ける

電話もひっきりなしだ


素材の入札、特別報酬や俺達の貢献褒賞の手続きとてんやわんやだ


「メイル、入札を一回止めてくれって電話が! 中隊の本部が猩猩(しょうじょう)の素材を買いたいって言ってきてますよ?」

電話をとったエレンがメイルに報告する


「はぁ!? 今さら無理に決まってるでしょ! こっち回して!」

メイルが荒んでいく


エレンが回した電話をメイルが取る

「もしもし? 入札やるって報告はしたでしょ! 欲しかったら入札に参加して競り落としなさいよ! …だから、一般入札の停止なんて無理なのは…!」


という電話のラッシュと、報告書や手続きが続いていく


俺は、いつもの通りみんなが買った物品の集計をポチポチと続ける


「今日はいつになく忙しいよね、経理」


「高額素材が手に入ると、お金も動きますからね。私は仕事終わったのでそっち手伝いますよ」


「もう終わったの?」


猩猩(しょうじょう)の測量と処理、冷蔵保存も終わって報告書も作りました。入札は出品手続きまでが私の仕事なので…、終わりです」


「ありがとう、じゃあそっちの領収書の束の入力お願いしていい? ファイルは共有フォルダの中に…」


俺とエレンは入力作業を続けた




・・・・・・




医療室で、エマの診察と検査を受ける


「ラーズ、この数値…!? 」

エマが驚いた声を出す


「どうしたの?」


「多分だけど、ナノマシン集積統合システムの2.0が発動してる…」


「え!?」


ナノマシン群の含有量の変化が、2.0の発動条件の値を維持している

コアの解析結果でも、2.0が一時発動したという結果が出ている


吹き飛ばされた時に感じた、下半身の違和感のことか?


「2.0は発動できる…?」


エマに言われて、試してみる


「…はぁぁぁぁ」


「…」


俺の体には何の変化もない

エマの冷めた目がきつい


「無理みたいだ、何も変わらないよ」


「そう…、何かきっかけが必用…?」


真相は結局分からない

だが、2.0の発動は近いかもしれない


成果が出てきて嬉しい




・・・・・・




俺は自主訓練をする


下駄を履いて岩を持つ、これは体幹の使い方の訓練

ボールの上腰を落として壺を持つ、これは体幹の維持の訓練

筋トレ、これはフィジカルの強化とナノマシン群の含有量増加


全ての訓練が俺に劇的な変化をもたらした


ナノマシン集積統合システム2.0の発動は近い

ホバーブーツの高機動戦闘のバランス強化と安定感

単純な身体能力と集中力の強化


俺は変われるかもしれない

Bランクの必須技能である、魔法、特技(スキル)闘氣(オーラ)が使えなくても、Bランクに匹敵する何かを得られるかもしれない



「ほお、感心だね。出撃後なのに自主的に訓練とは」

どこかに出掛けていたデモトス先生が帰って来た


「はい、もちろんです! それに、今日に出撃で効果を実感できたんです」


「それはよかった。では、その訓練が終わったら実戦訓練をしようじゃないか」


「う…、は、はい!」



こうして今日も血塗れにされるのだった


Cランクの猩猩(しょうじょう)の攻撃は見えるのに、デモトス先生のナイフは全然見えない

化け物だ…



3話の後に閑話を挿入しました

一緒に読んで頂けると嬉しいです

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