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閑話10 世界拡張

用語説明w

ゼヌ小隊長:1991小隊の小隊長

メイル:1991小隊の経理と庶務担当、獣人の女性隊員

サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)

カヤノ:MEB随伴分隊の女性隊員。思念誘導弾を使い、飛行ユニットによる空中戦が得意なサイキッカー(固有特性)

リロ:MEBパイロットの魚人隊員。十歳程度の容姿をしている。現在は消防防災庁に出向中

データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AI。明るい性格?


夏の直前と冬の直前に、1991小隊には乗り越えなくてはならない行事がある

通称、道掃除だ


掃除とは言うが要は草刈りだ

隊舎周辺から港までの道と、近くの農家までを繋ぐ道の周囲の草を一斉に刈っていく

刈らないと、道路にまではみ出して通行の邪魔にってしまうのだ


ガソリンで動く、棒状の先端についたヘッドから出たワイヤーを回転させる草刈り機の音が響いている


バババババババ…


「暑いなー…」


土ごと草を刈り飛ばしながら、独り言を呟く


「ご主人! 休憩命令が発令されたよ! 至急港に集合せよ、だって!」

データが、届いたメッセージを読み上げた


「了解、ありがとうデータ」

俺はまだまだ先に見える港と、その脇に生い茂る草にため息をついた




港に着くと、バーベキューの準備が進められていた

回りには隊員達が集まっている


「ラーズ、こっちー!」

メイルが手を振ってくる


俺は手を上げて答え、メイル達の方に向かった


隊舎の南側には農地と港があり、うちの小隊はそこの農家さんと漁業組合の人達とはいい関係を築いている

うちの隊内で何かの飲み会をするときは、招待することがあるほどなのだ


この道掃除も、いつもお世話になっている地域住民に対するお礼という形で昔からの伝統となっており、代わりに農家と漁協がバーベキューなんぞを用意してくれるのだ


小隊としても隊舎の周囲の民間人とは仲良くしておきたいこともあり、重要なイベントである



「兄ちゃん、ありがとな。暑かったろ?」


漁師のおっちゃんからヒョイと手渡される冷たいもの


「…ビール?」


俺が周りを見渡すと、サイモン分隊長を初めゼヌ小隊長までもが飲み始めていた


「兄ちゃんは今年が初めてだもんな。大丈夫、今日は当番以外は休みになってるからよ! 思いっきり飲んでくれよ」


「え、そうなんですか!?」


何で漁師のおっちゃんが俺より勤務状態に詳しいんだ


「そうよー、毎年のことだからね。最低人員以外は非番にしてるから飲んで大丈夫よ」

メイルも缶ビールを喉に流し込みながら肯定する


グビグビ…

「ブッハァーーー!」


そういうわけなら、俺も体を中から冷やすしかないな


平和な日常って素晴らしい

たまには出動がない、こんな日があってもいいよなー


海を見ると、沖の方を空母と大型タンカーが進んでいく

東の方にあるシグノイア最大の港、トウク大港に入港しに行くのだろう


「あー、ビールがうまい!」


「サイモンさん、どんどん飲んでくれよ」


「あれ、去年いたちっちゃい子はいないのかい?」


「リロのことかしらね? 出向中なんですよ。あと数日で戻ってくるんですけどね」


「そりゃ残念だな。ほら、隊長さんもこの魚食べて下さい」


ゆっくりと船を眺めながら、バーベキューを楽しむ1991小隊の面々

ほどほどに仕事を頑張る、これって凄く大切なことなのではないだろうか?



この世界には、科学拡張という概念がある

これは物質文明がもたらした、科学で世界を拡張するという考え方だ


例えば、それは深い深海、そして超深度の建造物、そして宇宙開発などだ

人類は、人類自身が生まれた地上から、新たな場所に次々と到達した


実際、地下を掘り多層構造の地下建造物を持つ国もあれば、海底や海上に都市を作り、更には海溝に進出し資源を採掘するプラントを作った国もある


また、宇宙に進出した例もある

宇宙ステーションやウルとギアにある衛星上の拠点基地は建設済みで、現在も稼働中である


更に、竜族の一部が太陽系第五惑星の衛星にまで進出し、新たな文化と技術を持ったという例まである

さすがにこれは、第三惑星であるペアを離れた唯一の例ではあるが



更にもう一つ

ペアは物質文明と魔法文明からなっており、科学拡張に対して魔法拡張という概念もしっかり存在する

これは魔法文明がもたらした、魔法で世界を拡張するという考え方である


魔法拡張は、次元を越えて世界を拡張する

人類の存在するこの次元をゼロとすると、その隣には1の次元と-1の次元があり、そこにはより肉体の比重が下がり霊体の比重が上がった世界がある

そして、10や-10の次元ともなれば、そこは天界や魔界と呼ばれる世界となる


更に、天界や魔界とは()()()に重なる次元をたどると死後の世界である幽世(かくりょ)に行けたりする


実際に人類は、こういう場所から力や資源、知識を得ることに成功している



これらの科学と魔法による拡張の概念は、合わせて世界拡張と呼ばれている


少し世界拡張の概念をかじると、人類は何でも出来ると思うかもしれない

だが、世界拡張が言いたいことは真逆だ


隕石やブラックホールなどのスペースハザード、自然現象などの大災害、名も知らぬ神々、魔王、冥界の住人など、数え上げれば切りがないほど、人類ではどうしようもない力が存在している


世界拡張の結論は、人類は無力だという事だ


そもそも、なぜ世界を宇宙や他次元に拡張する必要があるのか?

それはペアに存在する複数の秘境に人類が手を出せないからだ


竜や巨人、強力なアンデッドや魔獣、天使や悪魔

人類が勝てる見込みがない強敵が多数存在しており、どうしようもないからこそ、そこを無視して世界を拡張するという考え方に至ったのである


人類が調子に乗るということは、強大な何者かの領域(なわばり)を脅かすことになり、下手すると滅亡の危機となりかねない


世界拡張がいうように、分をわきまえるべき

欲も仕事もほどほどにしろってことなのだ




「うっまー!」


「お、兄ちゃんは魚が好きなのか?」


漁師さんが、朝摂ってきた魚を焼いてくれた

更に、刺身にもしてくれ、どかっと皿に盛る


まさに漁師飯ってやつだ

うますぎる


「このネギは海沿いの畑でとれたやつだ」


「甘い! 海沿いでも野菜って採れるんですね」


「塩に強い野菜だけだけどな。防風林を兼ねたマダラキイトは、種から絞った油が霊薬の原料にもなるんだよ。冬には種拾いを手伝ってくれよな」


こうして、二時間ほど飲んで、食べた



「あれ、そう言えばみんなガッツリ飲んで食べてるけど、まだ後で草刈りするんですよね?」


「ラーズの場所以外はほとんど終わってるわよ?」

メイルがイカ下足を咥えながら言う


「え? 早すぎないですか!?」


「ああ、カヤノが雷属性範囲魔法(中)で広範囲焼却してたからじゃないかな」


「ま、魔法ですか…!」


「大丈夫だよ。後はラーズがやってた道沿いだけだから、みんなでやればすぐ終わるわよ」


「良かったー。助かります」


酔っぱらってるのに、俺一人であの草全部刈るのはきついすぎる


こうして午後は、みんなで道掃除の仕上げに取りかかっていった

挿入する閑話はこれで終わりです

閑話を入れたい!と、後から思い付いて、何度も挿入となってしまいました

今後は、定期的に閑話を新規で作れたらと思います

読んでもらえたら嬉しいです

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