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94話 報告書

用語説明w

サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)

ロゼッタ:MEB随伴分隊の女性隊員。片手剣使いで高い身体能力を持つ(固有特性)

カヤノ:MEB随伴分隊の女性隊員。思念誘導弾を使い、飛行ユニットによる空中戦が得意なサイキッカー(固有特性)

エレン:獣人の女性整備隊員。冒険者ギルドの受付も兼務


もって帰ってきたコボルトの装備を冒険者ギルド担当のエレンに渡す

クエスト完了の報告だ


「お疲れ様でした。ラーズ、この後少し手伝ってもらえませんか?」


「え、何かあるの?」


「コボルトの装備の報告書作るの手伝ってほしいんです。今日、バタバタしてて時間がなくて」

エレンは申し訳なさそうに言う


俺はデモトス先生を見る


「うん、手伝ってあげなさい。私は今日はもう上がらせてもらうからね。この後はいつもの訓練をやったら上がっていい」


「あ、やっぱり訓練はしますよね…。分かりました」


デモトス先生は行ってしまった


こうして、エレン手伝うことになった

コボルトの装備は、青銅の剣が二本、鉄の剣が一本、石槍が三本、革製の鎧が三つだ


「鉄はともかく、青銅製はあまりよくないですね…」

エレンが、眼鏡を直しながら言う


「鉄より青銅の方がよくないの?」


「鉄はゴブリンから奪ったり、元は人間の物だったりと説明がつくんですが、青銅製だと何者かが意図的に作った可能性が出てきます。それがコボルトの技術者だったら、それだけ文化レベルが上がったってことなので、調査要請が来ちゃうかも…」

エレンがため息をつく


青銅製の剣など、脆いし硬度もないので、人間がわざわざ作ることはない

しかし、モンスターが作ったとなると、金属加工の技術を持ったモンスターの集落ができてしまった可能性があり、それは人類にとって危険なことなのだ


「報告書を作りましょう」


そう言って、エレンの指示通りにコボルトの装備を並べて写真を撮っていく


「次は重さと金属の硬度を計って終わりですね」


「報告書作るのも結構大変なんだね。今まで全部やらせちゃっててごめん」


「いえ、私の仕事ですから。後は大丈夫です、ありがとう」

そう言って、エレンは報告書作成に取りかかった


この報告書は研究機関にも回されるらしく、いろいろ書くことが多いらしい

次からは俺も手伝わないとな




・・・・・・




「疲れたけど、先生がいないと精神的に楽だったな」

いつもの訓練を一人でこなし、帰る支度をする



「あっ、ラーズいた!」


振り替えると、カヤノとサイモン分隊長がいた


「おう、ラーズ。飲みに行こうぜ」


「ロゼッタも誘ったわ。ご飯おごるんでしょ?」


「え、今日ですか?」


「フィーナちゃんと何かあったんでしょ? 聞いてあげるわよ」


「う…なぜそれを?」


正直、クエストと訓練でかなり疲れている


だが、ロゼッタにはナイフの訓練、カヤノにはサイキックの訓練を付き合ってもらっているお礼もしたい


フィーナの件もあるし、飲みに行くことにするか

俺達は着替えて、いつもの居酒屋「四季」に向かった




…目の前の席でロゼッタがカツ丼を掻き込んでいる

居酒屋でカツ丼って


「うん、美味しぃ。ラーズ、唐揚げも頼んでいぃ?」


「よく食べますね。好きなだけ食べてください」


ロゼッタは、店に入ってからひたすら食べ続けている


「で、フィーナちゃんと何があったのよ?」

カヤノが、乾杯後にいきなり本題をぶち込んでくる


グビグビ…

「…デモトス先生の十日間の訓練を終えて帰った日にフィーナと家飲みしたんですよ」


「うん」 「それで?」

サイモン分隊長とカヤノが先を促す


パクパク…

ロゼッタは唐揚げをパクつきながら、ピザを注文している

本当に飯食いに来たんだな


「いつもより、フィーナとの距離がやたら近いなって思ってたら…」


二人は息ぴったりで頷く

野次馬属性持ちなのか?


「気がついたらフィーナを押し倒していまして…」


「お、押し…!?」 「きゃー!?」

サイモン分隊長が驚き、なぜかカヤノは興奮


「いや、すぐに謝って離れたんですけど。俺、溜まってたんですかね…? それからフィーナと顔合わせるのが気まずくて」


「なるほど、ラーズも男ってことね…」

カヤノがニヤニヤと何かを納得したかのような顔をする


「そうか、ついにお前も男になったのか」

こっちのおっさんもニヤニヤ顔だ


ゴクゴク…

「いや、何もしてないですよ? 何ですか男って」


「だってお前、女知らないんだろ?」


ブフォッ

「はぁ!?」


俺は、飲みかけのビールを少し吹き出す


「ラーズって童貞でしょ? 分かりやすいし」


カヤノまで、分かってるような顔で言ってくる

この二人のしたり顔腹立つな


「ま、まあ、いや、そ、そうなんですけど…」


だが、事実だったりするのが…悔しい!


「で、これからフィーナちゃんとはどうするつもりなの?」


「それなんですよ、どうしたらいいんですかね? 今までフィーナを女として意識したことなかったんですけど。あんなことしちゃったら、さすがに一緒に住むわけにも…。俺は早く彼女でも作って落ち着かないとって真剣に考えてるんです」


一緒に住み始めた大学入学時、フィーナは完全に年下の女の子であまり意識もしていなかった

だが、さすがに四年も経つと完全に女として意識せざるをえない


そして、あの件で俺自身がフィーナを女として見ていることを自覚した

今後も危険な任務や訓練で心の余裕が無くなることもあるだろうし、もう俺自身を信用できない


「何で一緒に住めないの?」


カヤノはワイングラスをどんどん空にしていく

いや、もうボトル頼めば?


「え、だって妹を押し倒したんですよ? 最低じゃないですか。

もう一緒にすむ必要もないし、いい機会だからそれぞれ部屋借りた方がいいかなって…」


「あなたは何がしたいの? それって、フィーナちゃんの気持ちやあなた自身の気持ちを完全に無視した考えじゃない。お兄さんはこうあるべきだみたいな」


「え、いや、だって…」


「それが童貞丸出しの理論なのよ。お互いの気持ちを全て無視して、理想の自分像を最優先しているガキみたいな考えね」


「うぐ…!」


「あなたが訓練で隊舎に泊まり込んでいた時、フィーナちゃんは毎日私に様子を聞いてきたのよ? 心配だけど邪魔はしたくないからこっそり教えてって」


「え!? そうなんですか?」


「フィーナちゃんは、あなたの気持ちを大事にしながら、あなたを大事に思って行動しているってこと」


「…」


「あなたはどうなの? 兄としては一緒に住めない、これはいいわ。でも、ラーズ自身がフィーナちゃんをどうしたいのかが分からないし、フィーナちゃんの気持ちをどうしたいのかも考えていない」


「え…」


俺の気持ちと…フィーナの気持ち…?

好き…なのかな?

大切なのは間違いないが、好きとイコールなのか?


もちろん、かわいいとは思う

だが、これは性欲からではないのか…?


いや、そもそも好きってなんだ?

何をもって好きって言えるんだ?


「別居は簡単だけど、フィーナちゃんの気持ちにちゃんと回答しないなら、ただの逃避行動よ」


「え、だって…」


「だーーー! え、じゃねーよ。さっきから、え、と、だってしか言ってねえじゃねえか。男は黙って答えてやればいいだろうが! ごちゃごちゃうるせえやつだな」


「え…、じゃない! いや、そ、そうですね。 …かね?」


ダメだ、少し自分の考えをまとめよう

とりあえず、帰ってフィーナに謝って元の関係に戻る


それから、どうするかを考える

方針はこれで決まりだ





週末に一気にPVが増えて一万PVいきました

読んで頂きありがとうございます

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