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93話 コボルト

用語説明w

クエスト:地域住民から防衛軍に依頼されるモンスター退治等の依頼


デモトス先生:ゼヌ小隊長が紹介した元暗殺者で、ラーズの戦闘術の指導者。哲学と兵法を好む


「いい天気だな…」


「ふむ、天気を確認することは、今後の環境の変化を予想する上でも大事だね」


「…」


俺は、デモトス先生とクエストを受注した

クエスト内容は、コボルトの退治と装備品の確保だ


コボルト:Eランクモンスター

犬のような頭部を持つ人型モンスターで、武器や防具を使い、更に噛みつきで攻撃してくる

小規模な集団で行動するため注意が必要


そして、このモンスターは装備品によって文化レベルが推定できる

文化レベルが上がりすぎていると、危険な武器を作り始めるため、その集団を人類のために滅ぼす必要があるのだ


「今日は、ナイフ術とブービートラップででコボルトを仕留めたまえ」


「ナ、ナイフだけですか!?」


なんか、デジャヴを感じるぞ?

サイモン分隊長に連れていかれたノムルウルフのクエストを思い出す


「そうだ。一対一の状況を作り出し、正面からは戦わない。今回の訓練テーマは、状況の支配だ」


「は、はい…」


そんなわけで、俺達は森の中を進んでいる

集落からそこまで離れていないが、すでにコボルトの痕跡は発見した


足跡の数から数は三匹、木に付いた痕から武器は金属の刃物と推測される


「さ、トラップを仕掛けてしまおう」


「分かりました」


コボルトが通れる木と木の間に蔦を結び付け、足掛けトラップ

竹のしなりを利用した、鞭トラップ

木を尖らせて地面に刺しただけの柵トラップ


俺は教わったトラップを仕掛けていく


「戦闘においてのブービートラップの利点が何かわかるかね?」


それは情報だ

爆薬や魔法を使用していないトラップは、殺傷能力が低い

かわりに、金属探知機や火薬の臭い、魔素探知に引っ掛からない


仕掛けた場所を把握し、誘導し、意表をつくことに使える

トラップを仕掛けたこの周囲の場所で戦う限り、トラップを把握した俺が圧倒的に有利になるのだ


「終わりました」


俺は、念のためデータにトラップの位置をマップに落としてもらう


トラップは自分で仕掛けることが大事だ

複数を仕掛けても、自分でやれば角度や方向を確認するため、印象に残り覚えやすい


「よし、では待つとしようか? 昨日教えた事を頭の中でで復習しておきなさい」


「来ますかね?」


「間違いないなく来るよ。ここは集落の偵察に一番便利だ」

デモトス先生は、確信を持って頷いた




・・・・・・




ガサガサ… ザザ…



遠くから何かが近づく音がする

デモトス先生を見ると、親指を立て、頷かれた


「行ってきます」の意味で頷きを返し、行動を開始する



「…ご主人、偵察カメラで姿確認! 数は三匹、武装は映らなかったよ、ごめん」


データからの情報

データが映像から切り取ってくれたコボルトの静止画を確認する


「オッケー、ありがとうデータ」


静止画にはコボルトの上半身が写っている

肩掛けの革製の鎧を身に付けているように見える


方向と人数を把握できた、意表もつける、行くぞ


俺は予め拾って集めた拳くらいの石を足元に積んでいる

この石を紐とタオルで作った投石器に挟み、振りかぶって投げる


紐を持ち、その先の布に入れた石を振って投げることで遠心力が増し、威力がアップするのだ



ゴガッ!


「ギャンッ!」



一発目はゆっくり狙えたことで、しっかりコボルトの顔にヒット

もう一発投げるが、今度は外れる


もっと練習しないとな…


投石を続けて何回か命中させるが、石が尽きた

コボルトは鼻をひくひくさせて俺の臭いを察知し、広がって囲んでこようとしている


俺は、わざと音を出して撤退、トラップエリアへご招待作戦だ



「ガウッ!」

コボルトは仲間同士の距離をとって追ってくる


投石をされたら目標を分散させるために距離をあける

つまり敵を分散させたいなら投石は有効ということか

勉強になります、実戦訓練!


俺は、最初に右端のコボルトを狙う

近くには三つほどトラップがある


また石を拾い、思いっきり投げつける

腕で防がれるが、多分かなり痛いだろう


俺はナイフを二本抜き、姿を表して待ち構える

コボルトの武装は木の棒に尖った石を巻き付けた石槍と腰に着けた金属の剣だ


「ガアッ!」


俺はナイフで迎え撃つ…と、見せかけて、コボルトの接近を待つ


「グガ!?」


木と木の間に張ったロープに引っ掛かり、コボルトは前のめりに思いっきり転倒


俺は転倒を予想してた分すぐに接近し、ナイフを逆手に持ち背中に差し込む

更に膝の後ろにナイフを差し、移動力を奪う


武器を取りあげ植物の枝の中に隠す

まだ、とどめは刺さない


「グギャッ」


コボルトの悲鳴は無視

鎧を掴んで一気に引きずり、別のトラップの近くに転がす


後は、距離をとって投石の準備だ

投石は馬鹿にできない


近距離で投げられると、高威力で避けづらい、弾はどこにでも転がっていると優秀な攻撃なのだ



投石器に石を入れて待機

来たのは顔から流血しているコボルト、さっき投石を喰らった奴だろう


俺はナイフで目の前の紐を切る



ヒュンッ


「ギャイン!」



しならせて固定していた竹が、鞭のようにコボルトの肩を直撃

不意を疲れたコボルトは尻餅をつく


俺は、投石器の石を投げずに叩きつけた



ゴギャッ!



コボルトは頭を陥没させ、痙攣しながら倒れる

やはり、紐や棒を使うことで得られる遠心力の力は凄い

素手では出せない威力を簡単に素早く出せるのだ


よし、後一匹だ

俺は頭を砕いたコボルトの槍を奪う


向こうから、最後の一匹が近づいて来た

俺は正面に姿を見せる


俺の後ろには、背中を刺された仲間と頭を砕かれた仲間が倒れている

当然、助けに来るしかないだろう


「グルルル…」


コボルトは、槍を構えて牙をむき出しにして唸る

怒っているのだろう


仲間を傷つけられているのだし、当たり前だ


俺は、コボルトが逃げないと確信し攻撃に移る

まず、正面から投石器による投石

もう一回投石、更にもう一回


そして、石が無くなったら逃げる

逃げる場所は当然…、次のトラップだ


「ガアッ!」


大きな木の前で、俺を追い詰めたと思ったのだろう

コボルトが槍を突いてくる


俺は避けて、今度は手で石を投げつける

ここまで近づかれると、投石器を使う隙はない


槍はナイフよりも射程が長いが、投石の射程は槍よりも長いのだ

そして、何回かの攻防の後それは起こった



ドシャッ


「ガウッ!?」



三十センチメートルほどの小さな落とし穴

これにコボルトは片足を突っ込み、大きく体勢を崩したのだ


俺は、デモトス先生とナイフによる実戦訓練を続けてきた

ナイフも慣れてきて、チャンスの大切さも身に染みている

このチャンスは逃さない


俺はコボルトが持っている槍を踏みつけて、更にもう一歩踏み出す

コボルトはとっさに両手で顔を守る


ここで踏み込みすぎてはいけない

距離を詰めすぎるとナイフを掴まれたり、体を掴まれて取っ組み合いになるからだ


正解は、腕を切る

手の平、手首、指や肘、ザクザクと刺していく


「ガアッ!」


たまらずコボルトが噛みついてくる

俺は、()()()()()その瞬間にカウンターで喉にナイフを突き刺した




・・・・・・




「今回は上出来じゃないか。落ち着いたいい立ち回りだった」


「先生の殺気に比べれば、あれくらいのプレッシャーじゃなにも感じません。わざと一匹殺さないで囮にするとか、作戦も昨日教えてもらえましたし」


「ふむ。非人道的な行為だが、コボルト相手ではどう思った?」


「思ったより抵抗が有りませんでした。モンスターだし自分のリスクを減らせると思えば割り切れました」


「うむ、そういうことだよ。つまり、相手も必要があれば、割り切って使って来るということだ」


「…はい」


戦場は汚い

なぜか、死にたくないからだ

そして、それは相手も同じということなのだ



23話の次に閑話を挿入しました

一緒に読んで頂けると嬉しいです

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