7話 指導者
用語説明w
ゼヌ小隊長:1991小隊の小隊長
サイモン分隊長:MEB随伴分隊の分隊長。巨人族の血を低く巨漢で丸坊主。蒼い強化紋章を使う(固有特性)
ゼヌ小隊長に呼ばれて部屋に行くと、サイモン分隊長も来ていた
「ラーズ、あなたの指導はサイモン分隊長にお願いすることにしたの。いろいろ教えてもらって、早く一人前になってね」
「おう、ラーズ。 ビシバシいくからしっかりついてこいよ!」
サイモン分隊長はいい笑顔で言う
「は、はい! よろしくお願いします」
軍隊の訓練…、緊張するな
「ただ、訓練は明日からにして、今日は見学に行ってらっしゃい」
「見学ですか?」
「ええ、ちょうど今日、うちの小隊の管轄内でBランクの戦闘員がモンスター退治を行う予定なのよ」
「闘氣を使う、上位戦闘員を見れる機会なんかなかなかないからな。勉強だ」
「わかりました」
向かった先は、立ち入り制限地区の森の中
立ち入り制限地区とは、モンスターが出現する地区ということだ
立ち入り制限地区から出てきたモンスターは、安全のため防衛軍の駆除対象となる
俺の初陣の相手だったオーガ達は群れで移動してきたらしく、俺達が倒したオーガはただの斥候役だったらしい
オーガの群れは二十体ほどいるらしく、小隊規模で対応すると大きな被害が出る可能性がある
そこで、Bランクの戦闘員を呼び一気に壊滅させるとのことだ
俺達が戦車まで持ち出して倒したオーガが二十体
それをBランクとはいえ一人で倒すだって…?
興味あるじゃないか!
「お、あれじゃねぇか?」
サイモン分隊長が指す方を見ると、大きなバスタードソードを背負った男が見えた
「え!? あの人、近接武器でオーガと戦う気ですか!」
「闘氣を使うBランク以上が近接武器を使わないわけないだろうが」
「いや、でも敵は二十体ですよ!?」
「まあ、見てろって。オーガくらいならすぐだろうからよ」
………
……
…
「…何ですか、あれは?」
凄かった
魔法と特技と闘氣で強化された身体能力から繰り出される斬撃
一撃で数匹のオーガが肉塊に変わり、高速移動してまた繰り返す
あっという間にオーガの群れが全滅した
「あの高速移動ができれば、確かに遠距離攻撃なんか必要ないですよね。私のホバーブーツより早かったです…」
「Bランク以上はやっぱり特別だな」
魔導法学における人間の体とは…
魂を中心に、肉体、霊体、精神の三重構造となっている
魔導法学では、この肉体、霊体、精神にそれぞれ働く力を三大基本作用力と呼んでいる
それぞれ、精神の力である「精力」、肉体の氣脈の力である「氣力」、霊体の力である「霊力」のことである
この三大基本作用力は互いに合力を成すことで、魔導法学の三大元応力となる
それぞれ、魔力、輪力、闘力である
魔力とは、精力と霊力の合力で魔法の源の力
輪力とは、霊力と氣力の合力で特技の源の力
闘力とは、氣力と精力の合力で闘氣の源の力
魔法とは、魔力に法則性を持たせることで超常現象を起こす術のこと
属性魔法、召喚魔法、精霊魔法など、自己の魔力の使い方によって魔法の名前が変わるが、魔力を消費して発動する点は同じである
範囲魔法や投射魔法など、同じ魔法でも発動の仕方や威力が違う場合もある
特技とは、輪力を使った技術のこと
単純に身体能力を強化する特技から攻撃の特技まで幅広い
人間限定のものではなく、モンスターの特殊な攻撃やオーガが輪力で腕力を強化して行う投石なども特技に含まれる
また、竜種が吐くブレスも体内で練った輪力で発動するので特技の一種である
輪力はチャクラとも呼ばれる
闘氣とは、闘力で肉体や武器防具を包む技術だ
包まれた人体は強化され、身体能力と肉体強度が飛躍的に上がる
さらに、包まれた武器防具の強度も飛躍的に上がる
その結果、武器の場合は攻撃力も上がる
闘氣を使った人間は並みの攻撃力ではダメージを与えられず、結果として同じ闘氣使いでないとダメージを与えることが難しい
上位戦闘員と呼ばれるBランク以上になるためには、この闘氣の習得が必須となる
最強の戦力とは、闘氣を纏った戦闘員が、特技や魔法を使うことなのだ
…俺は、魔法も特技も闘氣の使えない
魔法はモ魔と魔石装填型の杖で、特技の変わりにホバーブーツや銃火器などの装備があるわけだけど
「サイモン分隊長、どうやったらあんなに強くなれるんですかね?」
「最初から強くなろうとする必要はないさ。上位戦闘員ほど強くないからこそ、俺達は連携や作戦で勝負してるんだからよ」
「はい…」
そうだ、その連携や作戦をしっかり学ばなければ
訓練頑張って、早く一人前になろう