試合の後
今回は少し主人公の一人語りが入ります
「「「ありがとうございました！」」」
試合の終わった両校は列に並び挨拶を交わした
「してやられたよ・・・まさかあんな選手がいるとは思ってなかったぜ」
大本は純也と握手をするときにしてやられたと称賛する
「それは俺もだよ・・・マジであいつなんなんだ・・・」
しかし純也も蓮のあの強さにはマジで驚いていた
「おいおい・・・自分達ですら知らない人を使ったのかよ・・・」
その発言に大本は本気かよと驚きを露わにしていた
「まぁ・・・今回は引き分けだったが・・・次は絶対に勝つ」
「！ああ・・・望むところだ」
「・・・ところで・・・あっちは大丈夫なのか？」
そう言って純也はとある場所を見る
「わははははは！！」
そこにはただひたすらに笑っている匠真と
「・・・・・」
それをずっと無言で見ている猪口の姿があった
（（・・・あそこだけ異様すぎる・・・））
二人はその光景を見てあそこだけ異様すぎると思ってしまった
「何してんだよあの人たち・・・」
それを宗孝も見ており思わず口に出してしまっていた
「本当に何がしたいんだろうねあの二人」
するとそこに五十嵐がやってきて笑っていた
「なんだ・・・勝者の余裕か？」
宗孝はそんな五十嵐に対して勝者がなにを言いに来たと言っていた
「別にそんなつもりはなかったんだけど・・・
てか今回の試合に関しては引き分けでしょ？」
確かに今回の試合は五十嵐の言う通り結果だけを見れば引き分けだろう
・・・しかし・・・
「それはレギュラーメンバーじゃなかったからだ・・・
それを引き分けとは言わない・・・」
「やれやれ・・・相変わらず頑固だね君は・・・」
五十嵐はそれを聞いて予想通りだったらしく笑っていた
「ああ・・・だから地区大会・・・覚悟しておけ」
そう言って宗孝は自陣のベンチに向かっていく
「・・・楽しみにしてるよ・・・」
「すごいね行町くん！私あんなにすごいプレー見たの初めてだよ！！」
そして肝心の立役者である蓮はベンチに戻って早々に桃に詰め寄られていた
「別に大したプレーじゃねぇだろ・・・
おまけに蹴ったのはあの一回だけだしな」
蓮は恥かしがりながらもちゃんと受け答えをする
「それにしても・・・よく覚えてたな・・・大翔」
そして思い出したかのように大翔の方を見てそう言った
「そりゃあいつもやってた攻撃のパターンだしお前なら出来ると思ってたよ」
大翔はこれくらいなら朝飯前だと言わんばかりだった
「だとしても相手はあの桐山高校だぞ？止められないとか思わなかったのか？」
それに対して錦次は相手がすごい人達だったのに
止められるとか思わなかったのか聞くと
「全然！あいつなら絶対に止めてくれると信じてましたから！」
大翔は蓮なら絶対に止めてくれると信じて疑っていなかったらしい
それを見た錦次は目を見開いて驚いていた
（おいおい・・・どんだけ信頼してんだよ・・・
あいつ全然サッカーしてなかったのに・・・）
錦次は何故あんなにサッカーをしてなかったのに信頼できていたのか
疑問に思ってしまった
「はぁ・・・それにしてもあの監督ちょっとは悔しそうにしろよな・・・
こんな弱小チームに引き分けたんだからよ・・・」
そして錦次はもう一つ気にくわないことがあった
それは相手の監督である大明寺監督が今回の試合に関して
何も思ってないことだった
「そりゃあそうだろ？試合が始まる前にも言ってただろ？
あまり試合の結果は気にしないって」
それに対して真樹が試合前に言っていたことを思い出し
それはそうだと錦次に向かって言うと
「お前に正論言われるのだけはマジで腹立つな！」
なぜか理不尽に錦次に怒られてしまい
真樹は何で怒っているのだろと首を捻った
「まぁそれもあるだろうが・・・本当にあの監督が何も言わないのは
多分こうなる事を予測してたからだと思う・・・」
するとそこへ庄司が来て大明寺が何も言わない理由がわかると言っていた
「どういう事っすか？」
錦次は意味がわからずその理由を尋ねる
「桐山高校の猪口と匠真は一年生の時からライバルだからな
実力も同じぐらいだしそんな奴がいるチームが
今年はどんな感じなのか知りたいと思うのは自然な事だ・・・
つまり相手にとって今回の試合はただの偵察・・・
俺たちはただ実力を測られていただけってわけだよ」
庄司の言う通りこのチームはそれなりに実力のある奴が揃っている
エースストライカーの匠真に
司令塔の宗孝
そしてディフェンスの要である純也と道成
この四人は間違いなく全国に行けるだけの力がある選手だった
それがちゃんと機能するチームになればこれほど脅威になるだろう
（そして今回の試合・・・相手にとってはさらに厄介な相手が増えたわけだ）
そう思い庄司は蓮と大翔の方を見た
（・・・でも・・・蓮に関しては正式な部員じゃないんだよな・・・）
「今日はどうもありがとう・・・おかげで一年生達にはいい刺激になった」
大明寺は今回の試合は良かったと純也に握手を申し出る
「いえ・・・こちらもいい経験になりましたよ」
純也はその握手を快く受け握りかえす
「地区予選でまた会おう」
「はぁ・・・それにしてもマジでいい経験になったよ・・・全く・・・」
帰り道で純也は今回の試合で本当に色々学ばされたと思いながら歩いていた
（やっぱり問題になったのは人数の不利と質か・・・
質に関しては練習で補えるが・・・人数不足に関してはさすがにな・・・）
そう思い純也は自然と蓮の方に目線をやってしまう
（無理と分かっていても・・・なんとか入れたいと思っちまうよな・・・
あのプレーを見せられれば・・・）
純也は先ほどのプレーに見惚れてしまっていた
桐山高校のエースである五十嵐のシュートをあっさりとキャッチした挙句
そこからさらに大翔にパスを出し同点ゴールのアシストをしてしまったのだ
（しかしな〜生活かかってるのにバイトを辞めされるわけにはいかんし〜）
純也は本当にどうしようか悩んでいると
「蓮と言ったか？！やはり我々と一緒にサッカーをしないか？！」
またも空気の読めない人が突っ走ってしまった
「いや・・・さっき今日だけの助っ人って言ったじゃないっすか・・・」
蓮はそれに対してやはり無理だと嫌そうな顔をしながら断る
「そうだよね〜！ごめんね！急にこいつが変なこと言って！！」
純也は急いで匠真を引っ張り離す
「馬鹿なのかお前は？！そんな単刀直入に言っても意味ないだろうが！
もうちょっと仲良くなってからそういうことは言うもんだろうが！！」
純也はこそこそと匠真のことを怒る
「しかしそれでは時間が掛かりすぎてしまうぞ？
夏の大会に間に合うのか？」
匠真はそんなんで本当に大会に間に合うのか疑問に思った
「・・・それに関したはなんとも言えないな・・・」
「あの〜・・・本当に行町くんはサッカーしないんですか？」
（マネージャーァァァァァ？！お前もかぁぁぁぁぁ！！）
まさかの匠真と同じ行動をした桃に対して驚いていた
「・・・できない・・・俺にそんな時間はない・・・」
蓮も返事も変わらずそんな時間はないと言う
「それはそうなんですけど・・・
本当に行町くんのプレーを見て感動したから・・・さ・・・
だからもっと見てみたいな〜と思っただけなんだよね・・・あははは・・・」
桃は少ない希望を満ちながら勇気を振り絞って誘ったらしい
「・・・悪いな・・・希望に添えなくて・・・」
蓮もその言葉に嘘偽りはなくただの善意で言ったのだとわかり
少し罪悪感が出てしまう
「俺も本当はもっとお前とサッカーやりたかったけど
今日の試合ができただけでも嬉しいよ！」
大翔も本当はもっとサッカーをしたいらしいが一回でも試合ができたので
それだけで満足だと言っていた
「・・・そうか・・・」
蓮はそれを聞いて少し安心したようだった
「まぁ気にすんな！これからは俺達でどうにかするからさ！！」
大翔はこれ以上は迷惑は掛けないと言って安心するように言った
（うんうん！いいフォローだ帰家！・・・でもそれ俺のセリフ・・・）
「はぁ・・・結局参加しちまった・・・」
家に帰ってきた蓮は今日のことを思い出していた
（なんで参加しちまったんだろうな・・・
てかなんで行っちまったんだろう・・・）
蓮は自分がなぜ自分があの場所に行ってしまったのか考える
（いや・・・考えるまでもないか・・・結局俺は・・・
サッカーがしたかったんだ・・・）
それはサッカーの試合を見てさらに高まってしまい
そして重国が退場になり蓮はその気持ちだけで試合に参加したのだ
（先輩達や大翔には悪いが・・・自分の都合でサッカーしちまったな・・・）
蓮はそんな不純な気持ちで試合に参加してしまったことを後悔していた
しかしそのおかげで結果的には試合ができ
しかも同点にするという快挙すら達成したのだ
おそらく蓮が思っているほど彼らは怒ってなどおらず
むしろ感謝している方だろう
「はぁ・・・まぁもう関わることはないだろうから大丈夫だろ」
蓮はもうサッカーはすることはないだろうと思いそのまま眠りについた
「・・・ぬぉぉぉぉぉ！めちゃくちゃ筋肉痛だぁぁぁぁぁ！！」
「うるさい・・・少し黙ってろ・・・！」
昨日の試合の影響でサッカー部全員が筋肉痛になっていた
「これでは今日の練習は無理だな！！」
匠真は清々しいくらいにそう言ってみせた
「何を嬉しそうにほざくか・・・そんな余裕はないんだぞ？
この前の試合でどんだけ実力の差があるのかわかったし
それに人数だって結局足りてないんだぞ？」
純也はむしろ筋肉痛さえなければ今からでも練習するべきだと考えていた
「でも仕方ねぇか・・・どのみち明日から
テスト期間で部活できないしな・・・」
「・・・なんだとぉぉぉぉぉ？！！」
次回は学校では定番のテスト！
一体どうなるのか？！
