秀扇VS桐山 練習試合2
先制点は秀扇高校が決め勢いに乗りたいが・・・
「やっぱり男虎さんはさすがだな〜」
そう呟いたのは桐山高校のエースである五十嵐 仁だった
「あの人ってそんなに有名な人なんですか?
確かにさっきのシュートはすごいものでしたけど・・・」
入部したばかりの一年生はそんなに有名な人だとは思っていなかった
「うん!とても有名な人だよ
多分ウチであの人と渡り合えるのは主力ストライカー・・・猪口さんだけだ」
それを聞いた一年生はそれほどまでに評価しているのだと匠真の方を見た
「おぉぉぉし!!とりあえず一点取ったぞぉぉぉぉぉ!!」
肝心の匠真はそんな事を気にも留めず先ほどのゴールを喜んでいた
それは匠真だけではなく他のみんなも嬉しそうにしていた
「はいはい!まだ一点取っただけだ!これじゃあまだ相手のレギュラーは出てこないぞ!」
そこを純也が一声掛けて気持ちを切り替えさせる
(確かに・・・さっきのプレー・・・まだ五十嵐は本気を出してない・・・
あいつが本気を出したら今のままでも負ける可能性はある・・・
今の内に出来るだけ点を取っておきたいな・・・)
それほどまでに五十嵐という男は警戒すべきだと宗孝は考えており
どうやって点を取ろうか考えていると
「白石先輩・・・次は俺にパスをくれませんか?」
後ろから大翔が近づいてきて次は自分にパスをくれと言ってきていた
宗孝はその目を見て静かに頷いた
(まぁ普通にその方法しかないからな・・・
おそらく男虎先輩はさっきの攻撃で警戒されるはず・・・
そうなったらパスは出せないからな・・・)
宗孝は囮としてパスを出せばいいと思っていたが
すぐにその考えは間違いだと気づかされることになった
その後リスタートし早速相手は五十嵐にボールを渡す
(さすがに一年生にこの守備を抜くのは無理だよな・・・)
五十嵐は先ほどの守備を思い出し
今の一年生にあれを抜くだけの力はないと考え
「仕方ない・・・自分で抜くしかないか・・・」
「「?!」」
そのまま自分でボールを持ってゴールにドリブルしていく
(来たっ!でも彼を止めない限り僕たちに勝機はない!!)
そう思って瑛は少しでも足を止める為に目の前に立ち塞がる
それにより五十嵐は少し手前で足を止める
「もらった!!」
そしてその横から庄司がボールを取ろうと思ってスライディングする
「・・・悪いけど・・・一度見てるから通用しないよ」
「「?!!」」
なんと五十嵐はヒールにボールを引っかけて
ジャンプしそのスライディングを躱す
そして一人になった瑛は彼を止めるだけの力はないので
そのままあっさりと抜かれてしまう
「さて・・・まずは一点返させてもらいましょうか?」
そう言って五十嵐は枠ぎりぎりの場所に向かってシュートする
「舐めんな!!」
しかしこのシュートはなんとか純也がパンチングして弾き飛ばす
「・・・なるほど・・・いい守備ですね・・・」
五十嵐は今のシュートがなぜ弾かれたのかすぐに理解した
今のシュートの蹴る前に助っ人である重国がフォローに回っていたのだ
さすがにボールを取るまではいかなかったが
それでもシュートコースを狭めるだけの仕事はしてくれていたので
それにより五十嵐のシュートは枠ぎりぎりに放たれることになったのだ
「やっぱり一人で一点を決めるのは難しいですね・・・」
五十嵐は今の攻撃で自分一人で点を取るのは難しいと判断した
(でも・・・さすがに秀扇の皆さんもそう簡単に次の点は取れないでしょう)
そう思い五十嵐は次はどうやって抜こうかを考えながら自分の持ち場に戻っていく
「行くぞ!!」
自分たちにボールが渡ってきた秀扇高校は
すぐさまリスタートにボールをスローイン
そのボールを受け取ったのは先ほど五十嵐にあっさり抜かれた錦次だった
「おっしゃぁ!さっきの汚名返上と行かせてもらうっすよ!!」
そう言って錦次は勢い良くフィールドを駆け上がっていく
「それじゃあもう一回やらせてもらおうかな?」
「っアブね?!」
錦次は先ほどまでの勢いを殺して急停止した
なぜなら目の前に先ほど抜かれた五十嵐が目の前に立ち塞がったのだ
しかもそのまま走っていればボールが取られてしまうくらいの場所にだった
間一髪でそれに気付きなんとか止まることはできたが
完全に五十嵐の狙い通りになってしまった
(チィ!なんとかして誰かにボールを渡したいが全員にマークが付いてる・・・
こいつの指示ってわけか・・・どうする?・・・)
なんとかこの状況を打破できないかと考えていると
「俺にパスしろ!!」
後ろから声が聞こえてきてすぐさま錦次は後ろを向きボールを渡すと
そこにいたのは真樹だった
「あぁぁぁぁぁ!しまったぁぁぁぁぁ!!」
しかしなぜか味方にパスをしたというのに錦次は落ち込んでいた
その理由は意外と単純で錦次は部で一番モテる真樹が恨めしいからなのだ
「宗孝!!」
そんなことはさておいてボールを受け取った真樹はそのまま駆け上がり
宗孝にボールを渡す
「よし・・・そこだ!!」
ボールを受け取った宗孝は相手の守備位置と味方の位置を見てから
とある場所に蹴り込む
「何してんだ?確かにそこには誰もいないけど味方もいないだろ?」
宗孝が蹴ったボールは大きく浮かび上がり誰もいないスペースに落ちた
いや・・・正確に言おう・・・
「?!!」
誰もいないはずの大翔の前にある
スペースに蹴り込んだのだ
「ありがとうございます!白石先輩!!」
ボールをしっかりと受け取った大翔は
そのまま凄まじい勢いでフィールドを駆け上がっていく
(嘘だろ?!なんだよあのスピード?!!誰も追いつけないぞ?!!)
しかもそのスピードは凄まじく相手側の守備陣は誰も大翔に追いつけなかった
「二点目もらったぁ!!」
そしてそのまま誰も追いつけずGKとの一騎打ちになった大翔はシュートを放ち
GKが反応できぬままそのボールはゴールネットに突き刺さり
秀扇高校は二点目のゴールを決めた
「へぇ・・・あんな選手が入学してたとはね・・・これはさすがにやばいかな?」
「選手交代!」
五十嵐はこのままではさすがにまずいと思っているとそれに気づいたのか
監督である大明寺もすぐに動き選手交代をさせることになった
「いよいよ出てくるか・・・!」
そしてこの選手交代こそ秀扇高校にとって始まりの一歩なのだった
選手交代により交代されたのはFW、MF、GKの三人だった
「おいおい・・・本当に本気じゃねぇか・・・!」
しかも純也はそのメンバーを見て驚愕していた
その出てきたメンバーはなんと桐山高校の三年生レギュラーだったのだ
先ほど話に上がっていたFW 猪口 進吾
MF 大本 一樹
そしてGK 田口 正護
彼らこそ桐山高校の主力なのだ
(ヤベェな・・・猪口さんと大本さんが出てきたら
二点なんてすぐに返されるぞ・・・
かと言ってゴールを狙うにしても
あの田口さんからはそう簡単に点は取れない・・・
これは・・・マジで詰みかもしれねぇな・・・)
さすがの宗孝もこの状況までは予測できてはおらず
もはやこれまでかと思っていると
「ようやく出てきたか!!これでやっと思う存分戦えるぞ!!」
空気を読まない匠真が相手を煽るかのようにそう叫んだ
「ちょっ!あんたバカなのか?!!」
思わずクールなキャラのはずである宗孝もツッコんでしまった
「ん?何か変なこと言ったか?俺」
しかも言った張本人は何がダメなのか全然わかっていなかった
「あんたな〜・・・今の発言は完全に相手を挑発してるもんだろ・・・
今はまだ舐めててもらわないといけないんだよ・・・」
宗孝は最後の希望にと相手が油断してくれることを願っていたのだが
「・・・ないな!あの猪口が相手を舐めるなどするわけがない!!」
(まぁ・・・確かにな・・・)
匠真のその言葉を聞いて宗孝もその通りだと思っていた
なぜなら猪口 進吾という男は
ただひたすらサッカーに熱中しているだけである
なので相手がどんな弱小校や無名校であろうと自分のサッカーを貫く
そういう男なのである
(わかってはいたが・・・やっぱりそうなると打つ手がないな・・・)
宗孝は必死で何か何かと模索する様子を
相手のフィールドで五十嵐がじっと見ていた
「そんなに気になるか?・・・あいつのことが」
するとその後ろから先ほど加わった大本が声を掛ける
「ええ・・・あいつはこんな絶望的な状況でも
必ず何かしてくるはずですからね・・・
用心するに越したことはないんですよ・・・」
五十嵐はそう言って自分の持ち場に戻っていく
(やれやれ・・・それだけじゃないだろ・・・お前のそれは・・・)
しかし大本は本当は何で五十嵐がじっと宗孝の事を見ていたのか
察しておりそれを見て今度は猪口の方を見た
(お前はあいつと一緒だからな・・・そうだろ?・・・進吾)
肝心の猪口はただじっと相手のフィールド
と言うよりは向こうにいる匠真の事を見ていた
そして再び試合は開始されボールは再び五十嵐に渡った
「もうさっきみたいに自分で上がらなくてもいいからね・・・
ゆっくり攻めさせてもらおうか?」
そう言って五十嵐は本当にゆっくりとボールを蹴って
フィールドを上がっていく
「いいのか?そんなにゆったり構えていると前半戦が終わるぞ?」
そんな五十嵐の前に立ち塞がったのは宗孝だった
「あれ?珍しいね?君が僕の目の前に来るなんて」
五十嵐はその様子を見て珍しいと思っていた
なぜなら宗孝は攻撃的なMFなので基本は守備に参加することはないのだが
(今は相手に好きにされないようにする・・・
勢いに飲まれるのだけはごめんだからな・・・)
今のこの状況では攻撃をするよりは守備をしなくてはいけないと判断したのだ
・・・しかし・・・
「さっきも言ったろ?もう自分で上がらなくていいって」
「っ!しまった!!」
少し油断させた隙に五十嵐はボールをパスする
そしてそのボールは吸い込まれるように猪口の足へと行った
「止めるぞ!!」
真樹と瑛はそれに反応してすぐさま猪口の前に立ち塞がったのだが
「・・・・・!!」
猪口は圧倒的な力で二人を吹き飛ばしそのままゴールに直進し
「・・・ヌゥン!」
シュートを放った
「チィ!!」
純也はそのボールに反応しきれず
秀扇高校は一点を許してしまった
二点取った秀扇高校だったが
本気を出してきた桐山高校の反撃が始まってしまった!