行町 蓮
第二話目です!
主人公の身の上も聞けます!
「えっと・・・本当に行町 蓮くんで間違い無い?」
まさかの展開に思わず桃はもう一度本人なのか確認をしてしまった
「何度言わせる気だよ・・・正真正銘俺が行町 蓮だよ」
聞かれた張本人はなぜ本人かどうか確認されているのか謎でしか無いだろう
「ごめんなさい!何度も確認してしまって・・・私は喜乃夢 桃って言います!
行町くんに会って伝えて欲しいことがあると帰家くんに言われてきました!」
桃はここに来た理由を話すと何故か蓮は顔を強張らせていた
「・・・なるほどな・・・あいつの使いってことはサッカー関係か・・・」
どうやら蓮は桃が伝えに来たことについて大体の察しがついているらしいが
その顔はあまり良いものではなかった
「はい!『また一緒にサッカーをしよう!』と言ってしましたけど・・・
行町くんもサッカーをやっているんですか?」
桃は失礼だとは思ったが明らかに見た目では優等生な感じがする蓮が
サッカーのような激しいスポーツをするような人には見えなかった
「昔の話だ・・・クラブに入ってたわけじゃないし中学に入ってからは
部活自体してないから運動ができるわけじゃない・・・
悪いけどサッカーなんてできないよ」
蓮は自分がサッカーをする人間ではないときっぱりと断りを入れた
それを聞いた桃はまるで他にもサッカーをできない理由がある気がし
(これは帰家くんに事情を聴く方がいいかな?・・・)
そう思って今日のところは引き上げることにした
「そうですか・・・では戻ってそう伝えておくね・・・」
桃は蓮に頭を下げた後図書室を後にしグラウンドへと向かうことにした
(どうしてそこまでサッカーをしたくないんだろう?・・・
それにあの顔・・・
私にはサッカーをやりたくてしょうがないように見えるんだけどな〜)
「そっか〜・・・やっぱりあいつは来ないか〜・・・」
桃から結果を聞いた大翔はやはりと言って項垂れていた
「やっぱりって・・・帰家くん結果が分かってて私に行かせたの?!」
しかし桃は断られるとわかっていながら行かせられたことに対して怒っていた
「ごめんごめん!一応可能性はないわけじゃないし言わないよりはいいかな〜
・・・って思って・・・」
大翔は一応可能性はあると言っていたのを聞いて
桃は先ほどの蓮の顔を思い出していた
「・・・あのさ・・・なんで行町くんはサッカーをしないの?」
先ほどの顔を見る限り別にサッカーが嫌いなわけではないだろう
しかしそれなのにサッカーをしないのはなぜなのか
その質問に対して大翔はしばらく考えた後何かを決心し口を開き始めた
「実はあいつ・・・親が交通事故で死んじゃってさ・・・
それからの後見人は祖父母がしてくれてるらしいんだけど
やっぱり歳だから負担を掛けたくなくて一人暮らしを始めてさ・・・
その生活費を稼ぐ為にバイトとか掛け持ちでしてるらしいんだよね・・・」
桃はその話を聞いてようやく彼がサッカーをしない理由を理解した
しないのではなくできないのだと・・・
「なるほどな・・・確かにそんな理由があるのなら
無理やり入部させるわけにはいかないか・・・」
話を聞いていた純也はそれでは仕方ないと諦めて
また部員の募集をするかと思っていると
「うぉぉぉぉぉ!!なんて苦労をしてるんだそいつはぁぁぁぁぁ!!」
同じく話を聞いていた匠真が全力で号泣している顔が目の前に来て
驚いて転んでしまった
「いいからそのグチャグチャの顔を避けろぉぉぉぉぉ!!」
「全く・・・新種のホラーかと思ったぞ・・・」
匠真に涙を拭くようにタオルを渡した純也はまだ心臓が高鳴っていた
「しかしまぁ・・・そいつを諦めないとなると・・・
いよいよサッカー部は廃部になるかもしれないな・・・」
それを聞いて話を知らない桃が立ち上がった
「え?!それってどういうことですか?!」
純也は先ほどきていた顧問の先生の話を教えた
「そんな・・・大会に出て結果を残さないと廃部?!!」
桃はその話を聞いて今日一番驚いていた
「ああ・・・なんでも教頭が
『毎回大会に出ても碌な成績を出せれないのならなくてもいいだろう』
って言ってたらしくてな・・・
それで校長が今回の大会で判断するってことになったらしい」
純也はそう言われても仕方ないと思っていた
確かに全国大会はおろか地区予選の最初で負けている弱小校だ
そんなサッカー部の人数が減り続けているのなら尚更だろう
「はぁ〜・・・これはいよいよサッカー部も終わるかもしれないな〜・・・」
純也はさすがにもうダメだと思っており遠い目で空を見上げていた
「安心しろ純也!一人くらいならすぐに入ってきてくれるはずだ!!」
そんな純也に対して匠真は部員の一人くらいなら
すぐに入ってきてくれるはずだと言っていた
「お前な〜・・・部員が入ってきて人数が足りたとしても
最低二回戦は突破しないとどの道廃部だぞ?」
純也はおそらく自分たちがいつもくじけるであろう
二回戦は突破しないとダメだと考えていた
「大丈夫だ!今年こそはシード校とは当たらん!
二回戦など余裕で突破できる!!」
「・・・それ・・・根拠ないだろう?・・・」
「もちろんだ!!」
匠真の自信満々なその答えを聞いて純也はがっくりと項垂れた
(だが・・・確かに匠真の言う通りシード校と当たりさえしなければ
十分に勝算はある・・・!)
純也は自分のチームの強さについてはそれなりに信頼していた
「あの〜・・・失礼ですけど私はみなさんのプレーを見たことがないので
どのくらい強いのかわからないのですが・・・」
すると桃がこのサッカー部がどのくらい強いのかを聞いてきた
「そういえばそうだった!ちゃんとウチの部員を紹介してなかった!!」
純也は桃に何も教えていなかったことを思い出し急いで他の部員を集合させた
「これがウチの部員!さすがに名門校と比べたら
見劣りするけどそれなりにうまい奴らが揃ってるぞ!」
そう言って純也は一人一人部員を紹介していく
「まずは言わずもがなウチの部長FWの男虎 匠真だ」
紹介された匠真はなぜか汗だくで筋肉アピールをしている
「続いては三年MF 三宅 庄司」
紹介されたその人は細い目の優しそうな人だった
「同じく三年MF 秋田谷 周平」
次に紹介されたその人は野性味あふれる人物だった
「そしてウチで一番パスがうまい二年MF 白石 宗孝」
紹介されたその人は不機嫌な顔をしておりまるで怒っているようにも見えた
「同じく二年MF 松本 錦次」
次に紹介された人は頭を金髪にしておりチャラそうな人物だった
「続いては守備陣!まずはこの人!三年DF 大塚 道成」
紹介されたその人は本当に高校生かと思うくらい老けた顔の人だった
「次に二年DF 橋本 真樹」
紹介されたその人はおそらくこのサッカー部で一番のイケメンだった
「同じく二年DF 四十万 瑛」
次に紹介されたその人はこれまでの人達とは違いあまり特徴がなかった
「そして最後・・・三年DFの俺が今のサッカー部の面々だ」
「・・・確かにみなさん実力は高そうですね!!」
全員の紹介が終わり桃が最初に言った言葉がそれだった
「「「「「・・・ガハァ?!」」」」」
その天然で放たれた一言は何人かの心を抉ってみせた
「・・・純也さん・・・先ほど確認してなかったんですけど・・・
今日から入ったそいつはどこに入るんですか?」
すると宗孝が今日入ってきたばかりの大翔がどこのポジションに入るのか確認する
「こいつは昔からFWをやってたらしくてな・・・
匠真と組ませて点を取りに行ってもらう」
純也は大翔をFWにして匠真とのツートップで行くつもりらしいのだが
「・・・それじゃあうちの最後の砦・・・GKはどうするんですか?」
宗孝にそう聞かれた純也はハッとした顔をしていた
「そうだった!GKをやっていた人も卒業したから今は誰もいないんだった!!」
どうやら全ての部員を紹介していたはずなのに
GKが誰もいないことに気がついていなかったらしい
「参ったな・・・こうなるとGKをできる奴を入部させるか
DFの誰かをGKにしないといけないぞ・・・」
純也はまさかの展開に思わず考え込んでしまっていた
「・・・あの〜・・・」
すると大翔が申し訳なさそうに手を挙げていた
「ん?どうかしたのか?」
純也はどうしたのか確認すると
「えっと・・・蓮は昔GKをやってたからあいつならできると思いますよ?」
「・・・マジか・・・」
「うむ!こうなるとますますそいつを入部させないといけなくなったな!!」
話を聞いた匠真は蓮を入部させないといけないと言って純也の方を叩く
「しかしな〜帰家の話を聞く限り入ってはもらえないぞ?
名前だけ入れても練習に参加してくれないんじゃ
大会でどうすればいいのか俺たちもわからんし」
そう・・・学校での練習は個人がうまくなる為ではなく
チームワークを上げる為でもあるので一人でも欠けては意味がないのだ
「かと言って生活費を俺たちが出すわけにはいかないしな・・・
やはり大翔には悪いが他の奴を探す以外に方法はないだろうな・・・」
純也は後々のことを考えてやはり別の新入部員を確保するしかないと思った
「この際素人が入ってきても仕方ない・・・
その時は俺たちができる限りフォローするか・・・」
純也は最悪素人を入部させてそのフォローをしようと考えていたが
「それ・・・結局強豪のところと当たったら意味がないですよね?」
宗孝の的確な指摘を聞いて言葉を詰まらせた
実際に試合をすればシュートを蹴る人間はFWだけではないのだ
MFはもちろんの事DFも上がってくる可能性もある
そうなれば数の上で不利になるのはこちらなので素人が最後の壁では心許ないのだ
「はぁ〜・・・やっぱり今年で廃部かな〜・・・」
そしてとうとう純也は考えることを諦めて再び遠い目で空を見つめ始めた
「お〜う・・・お前らちゃんと練習してるか〜?」
するとそこへ先ほど来ていた顧問の先生が来た
「どうしたんですか先生?・・・まさか新入部員ですか?!!」
純也は淡い期待を持って顧問の先生に詰め寄ると
「いや・・・お前達に練習試合の申し込みが来ただけ」
それを聞いて純也はがっくりと項垂れる
「これがその高校の名前だ・・・時間と場所も指定されてるから目を通しておけ」
そう言って顧問の先生が一枚の紙を取り出す
それを受け取った純也は書かれていた内容よりも先に驚愕する文字が見えてきた
「桐山高校・・・だと?!」
それはこの地区で一番強いと言われている高校の名前だった
廃部のピンチになんと地区最強からの練習試合!
一体どうなる?!!