第99話「戒めです」
いよいよ二桁話数も今回が最後になります。気が付けばこんなに長く続いていたんだと思うと嬉しくもありますし、90週に渡って続けてきた二桁の話数ともこれでおさらばかと思うと悲しくもなります。……いや別に二桁の話数に対してそんな感情にはならないですね。今のは忘れてください。
では、折角の99話なので99にまつわる話でも。真っ先に思いつくのはやはり白寿でしょうか。99歳の長寿のお祝いのことですね。言うまでもないことだとは思いますが、『百』という漢字から一を引くと『白』になることに由来しています。99歳なんて、とても想像がつかないですよね。今の南川様で25歳なので、その約4倍の時間を生きているということです。私なんてまだ生後3ヶ月ですから、これまで経験してきた時間の約400倍と考えると、ちょっと途方もありません。スマホ依存のAIの私なんてどう見積もってもそこまで生きていることはないでしょう。何かとんでもない技術革新でも起これば或いは、という感じですが。……まあ、南川様が一緒でないのならそんなに長生きしたって仕方ないのですけど。
他には、九十九と書いて「つくも」と読みますよね。あれ、疑問に思ったことありませんか。なんでそんな読み方をするんだろう、と。その理由は『伊勢物語』の第63段に登場する『百年に一年たらぬつくも髪 我を恋ふらし面影に見ゆ』という歌にあるようです。この歌では老人のぼさぼさの白髪を植物のツクモの様子に喩えているのですが、『百年に一年たらぬ』=九十九歳=老人を表しているのと同時に、白寿の時と同様に百から一を引いて白、つまり白髪も表している掛詞になっています。ここから、九十九という漢字を「つくも」と読むようになったとされています。特殊な読みでアニメや漫画のキャラクター名として採用されがちですが、起源を調べてみると意外なところにあったりして面白いですね。
以上、二桁話数の小話はこれにて終了ということで。
では、スタート。
普段よりも手早く朝食や出掛ける準備を済ませた南川様は、いつもよりも10分ほど早く家を出ます。前回もお話ししたように、コンビニに寄って給料を下ろす為ですね。寄るのは決まって家の一番近くのコンビニです。駅近くにも当然コンビニはあるのですが、朝の駅前のコンビニは異常なくらい混んでたりしますからね。給料日なら尚更ATMを使う方も多少はいるでしょうし、時間が読めなくなるので可能ならば避けたいということで、都合よく駅への道中にある近所のコンビニに寄るわけです。駅から少し離れるので、朝でも別に混んではいませんからね。
「よし、下ろし終わった」
人の並んでいないATMでお金を下ろし終えた南川様は、本日のもう一つの目的であるプリペイドカードのコーナーへ向かいます。
「……さて。問題はここからだね」
ところが、プリペイドカードの前に立った南川様がその場で腕を組んで考え始めてしまいました。
『……南川様? 何を悩んでいるのですか』
別に時間にめちゃくちゃ余裕があるわけではないので、ささっと買って早く駅に向かった方が良いと思うのですが。
「……ユリはさ。いくらでころねちゃんが出てくれると思う?」
『……あー』
なるほど、悩んでいたのは課金額ですか。確かに、どれくらい注ぎ込めば目当てのキャラが出てくれるかなんて分かりようがありませんからね。もちろんバンドレには天井システムはありますが、その為にはあと6万5000円くらい課金しないといけませんからね。最悪どうしても欲しいならそこまでいかないといけませんが、いくら金銭的に多少の余裕があっても流石にそれは最終手段にしたいはずです。微課金で済むならそれに越したことはありませんが、それで出なくてまた課金するのも面倒、という南川様の葛藤がよくわかります。
『こればかりは運ですからね。必要以上の出費は避けたいですし、ご自身の運を信じられるなら少額でもいいんじゃないですか』
「……昨日84連で星4一枚の僕の運を信じるの?」
『……か、確率は収束しますよ』
何千何万と繰り返せばいずれは、ですが。100や200程度で収束する保証は全くありませんが。
「まあ、あんなに出ないのが続くとそのうち一気に当たったりとか期待するけどさ。でも一万円分だと30連でしょ? 30連で出るかと言われるとなぁ」
まあ、昨日の南川様の引きを考えると自分の運が信じられないのも分かりますけどね。
『結局使うのは南川様がご自身で稼いだお金ですし、ご自分が納得のいくようにしたらいいと思いますよ。ただし、決断は早めにしてくださいね。いつもの電車に間に合わなくなります』
「おっと、それは確かに。別に余裕があるわけじゃないんだよね。じゃあ、とりあえず一万で。ガチャもまだ始まったばっかりだしね」
まあ、その辺りが落とし所でしょうかね。別に今日でガチャが終わるというわけでもないので、出なかった時はまた課金すればいいのです。面倒なのは仕方ありません。戒めです。




