第84話「要はやってること課金ですからね」
みなさんは、どうしてひと月の日数は30日だったり31日だったりするのか、7月8月はどうして31日が続くのか、その理由を考えたことはありますか。もうそういうものだから考えたことなかった、あまりにも当たり前すぎて気にしたことなかった、という方も多いのではないでしょうか。
現在日本で使われているのはグレゴリオ暦という暦の数え方ですが、そのもとになっているのは太陰太陽暦というものです。太陰太陽暦では月が地球の周りを一周する周期である29.5日に合わせて、29日の月と30日の月を交互に繰り返していました。これが今のグレゴリオ暦にも影響を及ぼしているため、現在も30日ある「小の月」と31日まである「大の月」がおおよそ交互に繰り返されるような形になっているわけですね。
ですがそうなると当然疑問になるのが、どうして7月と8月は31日まである「大の月」が続くのか、ということですね。その答えは「ユリウス暦」というグレゴリオ暦の前身にあります。その名前から分かるように、かの有名なジュリアス・シーザーことカエサルによって制定されたものです。実はこのユリウス暦が制定された当初は、大の月と小の月が綺麗に交互になるようになっていました。8月は30日までで、9月は31日まであって……というような感じです。しかしその後、8月の英語名「August」に名を残す皇帝アウグストゥスが、自分の名が冠されている月が、同じくカエサルの名が冠されている7月よりも日数が少ないことを嫌ったため、8月に1日を足して31日にしたと言われています。そのため8月以降の大の月と小の月は入れ替わることになり、今の形になったわけですね。
そんな理由で、と思う方も多いと思いますが、これが真実です。皆さんが当たり前だと思ってなんとなく受け止めていることの中にも、調べてみたら意外な理由があるかもしれませんよ。
では、スタート。
午前中の仕事を終えて昼休み。本日はお弁当を用意するわけでもなく通勤時になにかを買ってきたわけでもないので、どこかに食べに行く流れになりそうです。今日は何を食べに行くのか南川様に尋ねようとしたところ、私よりも先に南川様に声をかけた人物がいました。
「先輩! 一生のお願いなので今日だけお昼ご飯奢ってください!」
このやかましい声は、言わずもがな町田ですね。まーた南川様にたかりに来たんですか。というか貴女、一生のお願いなら先月も使ったじゃないですか。
「……一生のお願いは先月も聞いた気がするんだけど」
「じゃあ今生のお願いです! 今日だけご飯奢ってください!」
「それ意味一緒じゃない!?」
一緒ですね。言い方変えただけですね。
「……お昼も買えないくらい金欠なの?」
「引き落としが口座の残高を超えるギリギリです!」
「なんでそんなになるまで使うの!?」
「そこに推しがいるからです!」
「いやそんな山みたいに言われても!」
要はやってること課金ですからね。
「……お財布に少しくらい入ってたりはしないの?」
「17円だけあります!」
「少なっ!」
でもうんめえ棒買えるじゃないですか。お昼ご飯が決まりましたね、良かったですね町田。
「というわけなので、今日だけ奢ってください本当にお願いします! 明日になれば給料日でどうにかなるので!」
「うーん……奢るのは別に構わないんだけど町田さん、毎度反省の色が見えないからなぁ」
給料日前は毎月のようにこんな感じですからね。歳の近い後輩とご飯に行くのはまあ別に普通のことですが、毎月こうでは改善する気なしでしょう。普通の人ならとっくに愛想をつかしていても不思議ではありません。人の好い南川様だからこそこれまで町田の財布を助けてあげていたわけですが、流石に今回は南川様も呆れ気味のようです。
「は、反省はしてます! 夏のボーナスを機に改善する予定です!」
「……その言葉、信じていいんだね?」
「町田に二言はありません!」
「ユリ、さっきの録音できてる?」
『もちろんです。言質は取りましたよ』
こんなこともあろうかと録音機能を作動させておいて良かったです。
「ええっ!? そ、そこまでするんですか!?」
「うん。なんか町田さん、それくらいしないとずるずる課金し続けそうだから」
「私の性格が読まれてる!」
まあ、読みやすそうな性格してますからね、町田。良く言えば素直、悪く言えば馬鹿です。
「それに、このままだと割と本気で町田さんの未来が心配だし。借金とかに手を出す前になんとかしないと本当に危ないよ」
「先輩……そんな、私との未来のことまで真剣に考えて……!」
貴女との未来ではありません、貴女単体の未来です。馬鹿故の言い間違いのようですが、勝手に貴女の未来に南川様を加えないでください。ぶっ○しますよ。
「今日は仕方ないから奢ってあげるけど、来月は改善が見られなかったら奢らないからね」
「ありがとうございます先輩! あとで絶対になにかお礼します!」
「期待せずに待ってるよ」
ということで、本日の昼食は町田と食べることになりました。町田の未来を本気で心配した上に結局奢ってあげるだなんて、優しさの塊ですね。さて、ならば私は南川様の財布に響かないようやっっっっっすいお店でも検索しますかね。




