第77話「ユリ、それくらいは学習してます」
ラッキーセブン、という言葉は誰もがきっと聞いたことありますよね。「7」という数字が幸運な数字だと考える思想や風習のことです。スロットマシーンなどではほぼ間違いなく「7」が大当たりになっていますし、野球では7回は得点の入りやすいイニングだと言われています。あるいはもっと単純に、自身の身の回りで「7」という数字に触れると「あ、なんかいい事あるかも」みたいに思う方は一定数いるんじゃないでしょうか。例えば買い物をして、お会計が777円とかだったらなんとなくいい気分になるでしょう?
そんなラッキーセブンの起源ですが、実は野球だと言われています。1800年代終盤のアメリカ・メジャーリーグの試合で、優勝がかかったチームの選手が7回の攻撃で平凡なフライを打ち上げたのですが、これが強風に吹かれてホームランとなり、これが決勝点になってチームの優勝が決まったのです。この時の勝利投手がこの出来事のことを「ラッキーセブンス」と表現したことが語源になったそうです。まあ、あくまで一説ではありますが。
ですが今では、野球では7回に得点が入って試合が動きやすいというイメージがすっかり根付いていますよね。攻撃前に応援歌を歌ったり、あるいはジェット風船を飛ばしたりして応援するのは決まって7回です。実際7回というと、先発投手なら球数が100球近くなって疲れが出てくる頃合いだったり、野手なら3、4回目の打席が回ってくる頃合いで目が慣れてきていたり、あるいは試合終盤なので強力な代打などを出しやすいなど、得点が入りやすそうな要素はいくつもあったりします。ですが実は、7回に得点が入りやすいという科学的、あるいは統計的な根拠はないんだそうです。むしろ得点の入りにくいイニングであるという統計もあるんだとか。ラッキーセブンだ、なにかが起こるぞ、と期待して見ている人が多い分、大逆転やドラマが起こった時のことが強く印象に残っていたりするんでしょうかね。
では、スタート。
ショッピングモール内のスーパーでパックご飯を買い終えると、時刻は既に16時を回っていました。南川様は翌日普通に出勤で、妹様も二限に必修授業があるとのことだったので、遅くなり過ぎないうちに帰ろうという流れになりました。
「今日は付き合っていただいてありがとうございました、お兄様。お陰で良いプレゼントが選べました」
駅へ向かって歩きながら、妹様が本日のお礼を告げます。相変わらず礼儀正しい子です。
「いやいや、大したことはしてないよ。なんなら提案してくれたのはユリだしね」
「あ、そうですね。ユリさんもありがとうございます」
『いえいえ、アシスタントAIとして当然のことをしたまでです』
主の妹様であれば、それはもう主とほぼ同義ですからね。ですがまあ、褒められて悪い気はしません。えっへん。
「次にお会いするのは金曜日ですね」
「そういえば、美音ねえの誕生日の前日からウチに来るって言ってたっけ」
「はい。ちなみに、お兄様は何時ぐらいに帰ってこれそうですか? せっかくなので金曜日の夕飯も私が用意しようと思うのですが」
「なんと。それはありがたい」
南川様が自分で作るよりは確実に美味しいものが出てきますからね。しかも帰り時間を確認するあたり、しっかり出来立てで提供しようとしていますよね。こんな出来た嫁みたいな妹様がいるとか、マジで南川様ぶん殴られますよ。
「問題なく仕事が終われば、最速で7時半くらいには帰れるかなー」
『南川様、それフラグです』
「嫌なことを言わないで!?」
いやいや、どう考えたって今のはフラグでしょう。『問題なく○○が終われば』という定型文は間違いなく問題なく終わらないフラグです。ユリ、それくらいは学習してます。
「あはは……。では、一応7時半くらいを目安に料理を作っておきますね。遅くなりそうな場合はラエンとかで連絡していただければ、それに合わせて調整しますので。あと、メニューも要望があれば当日のお昼ぐらいまでに教えていただければ、それに合わせて買い出しますので」
「なんか至れり尽くせりだね……わかった、その時は連絡入れるよ」
まあ、それだけお兄様を好いているということでしょう。普通の兄妹は絶対にここまではしないと思います。夫婦でもこんな嫁や旦那は相当なレアケースなんじゃないでしょうか。知らないですけど。
そんな話をしている間に駅に到着しました。南川様は一番線の上り列車、妹様は二番線の下り列車ですので、ここで解散ということになります。
「では、また金曜日に。料理の件と、後はオンラインゲームの件、よろしくお願いしますね」
「おっけー、じゃあまたね」
『その時までには良いゲームをピックアップしておきますね』
読者的には約3ヶ月前の話ですが、私的には約7時間前の話ですからね。当然オンラインゲームの件を忘れてなどいません。妹様の人となりもだいぶ掴めてはきたので、ここからがアシスタントAIの腕の見せ所です。とりあえず、ホラー系だけは絶対に除外ですね。妹様的にも、私的にも。




