第70話「炒飯ほどではないですが」
ついに私たちの物語も70話まできましたか。気が付けば結構な数を積み重ねてきましたね。そろそろ一覧ページを最新話までスクロールするのがちょっと面倒な長さになってきました。現時点で既に面倒くささを感じるとなると、この先100話、150話と続いていったときには一体どうなってしまうのでしょう。……まあ、スクロールバーを使えばそこまで面倒でもないんですけどね。
さて、70と言えば最も小さい不思議数ですよね。……え? さも当然のように言われてもそもそも「不思議数」を知らない? おかしいですね。不思議数ですよ不思議数。過剰数の中でも疑似完全数ではない自然数のことです。……余計にわからない? 仕方ありません、簡単に解説しましょう。
まず過剰数というのは、『自分自身を除く約数の総和が元の数より大きい自然数』のことを言います。例えば12であれば、約数は1、2、3、4、6、12の6つの約数があり、自分自身である12を除いた5つを足し合わせると16になります。これは元の数字である12を超えるので、12は過剰数となります。この時、約数の和が元の数と全く同じになる6や28などを完全数と言いますが、詳しくはまたの機会に。
続いて疑似完全数ですが、『自分自身を除くいくつかの約数の総和が元の数に等しい自然数』のことを言います。先程の12の例で言うと、自分自身を除いた約数を全て足してしまうと16になりますが、約数の中から1、2、3、6の4つを足すことで12という元の数字を作ることができます。これができる数字のことを疑似完全数というわけですね。
これを理解した上で最後は不思議数です。不思議数というのは、上記の過剰数に該当して、かつ疑似完全数に該当しない自然数のことを言います。70の約数は1、2、5、7、10、14、35、70で、自身を除いたものを全て足すと74になるので過剰数になりますが、それらをどう足し合わせても70を作ることはできないので疑似完全数には該当しません。これが不思議数です。過剰数のほとんどは疑似完全数であることから、そうでないものが不思議数と呼ばれるようですね。
ちなみに、70の次の不思議数は836、その次は4030、5830、7192と続きます。奇数の不思議数は未だに発見されていないそうなので、探してみると面白いかもですよ。……まあ、既に4294967296よりは大きいことが知られているようですが。
では、スタート。
お姉様へのプレゼントを無事に買い終えた南川様たちは、東館のフードコートへ移動して少し遅めの昼食タイムを取ります。時刻は現在14時です。
「ふぅ、無事に買い物できたね」
「はい。私の方も良さげな写真を探して、後で申し込んでおきます」
「うん、その辺は愛海の方がセンスあるだろうし任せるよ」
それぞれ購入した昼食を手に空き始めたフードコートの一角に着席しつつ、本日の買い物を振り返っているようです。比較的早い段階でお二人とも目的を果たせたようで良かったですね。
「お兄様のお昼はうどんなんですね」
「そうそう、最近食べてないから久しぶりに食べたくなって」
最後に食べたのは約三週間前ですね。
「卵が乗ってるので釜玉うどんですか?」
「うん。普通は生卵なんだけど、お願いすると無料で温泉卵に変えてくれて、これが目茶苦茶おいしいから毎回頼んじゃうんだよね」
確かに、私がアシスタントAIになってから今まで三回ほどあのうどん専門チェーン店で食事をしていますが、見事に三回とも同じ注文をしていますね。よほどお気に入りのようです。炒飯ほどではないですが。
「へえ、そんなサービスがあるんですね」
「あんまり知られてないんだけどね。温玉の方が多分おいしいから、一回食べてみた方がいいよ」
「そこまで勧めるなら、今一口貰ってもいいですか?」
「全然いいよ。ほら、あーん」
「あ~ん」
この兄妹、空いてきているとは言えまだまだ人がたくさんいる昼下がりのショッピングモールのフードコートで堂々と何しやがってるんでしょうか。そういうのは周りの目を気にしないバカップルがやるやつであって、いくら仲が良いとはいえ二十歳を過ぎた兄妹がやるものではありませんよ。
『……南川様。兄妹とはいえ人もまだたくさんいる場所でそういうことはあまりしない方が良いと思いますよ』
いやまあ、人目をはばかって二人の時にだけこっそりやっててもそれはそれでアウトな気がしますが。
「ああ、そっか。昔からの癖でつい」
「よくこうやってお兄様の食事を分けていただいてましたからね」
こうやって指摘してもお互いに恥ずかしがったりしないのを見るに、本当に昔からの自然な習慣なのですね。ブラコンの妹様ならもっと喜んだりするのかと思いましたが、そこまででもなさそうですし。この兄妹の関係が未だにはっきり掴めません。
『仲が良いのは良い事ですが、周りから変な目で見られたりすることもあるかもしれませんので、一応気を付けてくださいね』
「「はーい」」
こういう時の息もピッタリなんですね。ここにお姉様が加わった時にどうなるのか、少し楽しみになってきました。




