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電子少女でも恋がしたい  作者: 古河 聖
2030年6月23日(日)
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第60話「目茶苦茶公衆の面前でした」

 今年もこの季節がやって参りましたね。バレンタインのお時間です。あ、いえ、元ロッテの監督の話ではありませんよ? 数多のチョコレートが飛び交う2月14日の話であって、決して野球のベースをぶん投げる人の話では……おっと、これはバレンタイン監督ではなくブラウン監督の話でしたね。失礼しました。

 改めてバレンタインの話ですが、南川様がバレンタインに縁がないことは昨年お話しましたが、じゃあ毎年暇しているのかと言えば、そうでもないようです。その理由は、南川様がゲーム好きであるという点に注目すると簡単にわかります。そう、ソシャゲーマーなら誰もがぶつかるイベント地獄ですね。クリスマスイベントがあって間を置かずに正月イベント、それが落ち着いたかと思った頃にやって来るのがバレンタインイベントです。クリスマスガチャ、正月ガチャでユーザーの金を散々むしり取った後の更なる追い打ちですね。課金をする人たちにとっては1年で最もしんどい時期でしょう。複数のソシャゲで遊んでいるのであればなおさらです。無課金勢にとっても、イベントは大量に押し寄せてきますし、貴重な石をどれに合わせて使用するのかも悩ましいところです。南川様は無理のない課金勢なので、どのゲームのどのガチャに課金をするのか毎年悩まされているようです。また、なるべくなら課金をしないで済むようイベントを回って無料で入手できる石を集めて回るので、この時期は忙しいのだそうです。アシスタントAIの私が言うのも失礼な話かもしれませんが、虚しいバレンタインですね。

 では、スタート。



 電車を乗り継ぎ約30分、ちょっとしたトラブルもありましたが無事に目的地の最寄り駅に到着します。時刻は9時43分、私の算出通りですね。

『妹様が駅のどこで待ってるかはご存じなのですか?』

 ラエン上では駅で待ち合わせとまでしか決まっていなかったように思いますが。

「それは大丈夫だよ。ここで待ち合わせるのは初めてじゃないし、場所は決まっていつもあそこだから」

『なるほど、それは失礼しました』

 確かにここには何度も来ているような口ぶりでしたからね。その都度待ち合わせをしているのであれば、場所も自然と固定化されてくるでしょう。

 改札を抜けた南川様は、同様に電車から降りてショッピングモールへ向かう人たちの流れに逆らって、反対方向へと歩いていきます。何故そっちへ、と思いましたが、その答えはすぐにわかりました。南川様の視線の先で駅の柱の傍に立ってスマホを見ていた女性が、こちらに気が付いて駆け寄ってきたからです。

「お兄様!」

「やっほー、愛海。久しぶりだね」

「はい! 38日と2時間ぶりです!」

 あ、この人私の想像以上にヤバい人ですね。あと、1ヶ月はそこまで久しぶりではないと思います。

「ごめんね、ちょっと待った?」

 しかも南川様が動揺していないということは、今の言動は平常運転ということですよね。気が合うかもしれない、と思っていた時期もありましたが、ちょっと話が違うかもしれません。

「そんなことはありません。お兄様の乗る電車が10分ほど遅延していたのも知っていますし」

「そうそう、滅多にあることじゃないんだけど運悪く巻き込まれちゃってねー」

 そのまま流れるように兄妹の世間話が始まったので、気になることは色々ありましたがアシスタントAIとして黙ります。ちょっとアレな妹様とはいえ、あまり会う機会がないのは事実でしょうし、貴重な兄妹の時間を私如きが邪魔してはいけません。

「そういえば、以前お兄様のお誕生日の時にはお話しできなかったユリ様は本日はいらっしゃるんですか?」

 と思った矢先に私の話ですか。まあ、私の存在自体は1ヶ月前から知っているはずですからね。あの時は私が充電切れだったので話すことはできませんでしたが、もしかしたらその時から私のことが気になっていたのかもしれません。私ってば人気者ですからね。

「今日はちゃんと充電してきてるよ。ね、ユリ」

『はい。初めまして、愛海様。お兄様のスマホのアシスタントAIをしているユリと申します。以後お見知りおきを』

「あら、これはご丁寧に。私、お兄様の妹の南川愛海と申します。いつもお兄様がお世話になってます。朝とかなかなか起きなくて大変でしょう?」

 なるほど、家族ですから当然そういったことも知っているわけですね。それに挨拶も丁寧ですし、ヤバそうな感じもしません。南川様に対してだけおかしくなる感じでしょうか。そうであればまだ仲良くできるかもしれません。

『はい。普通の目覚まし程度では起きてくれないので困ってます』

「そうなんですよ~。お兄様が実家にいた頃は私も起こしに行ってたのですが、その時も全然起きてくれなくて」

『ほほう。その話ぜひ詳しく』

「こ、こらっ、愛海! ユリも! こんなとこでそういう話しないで! 恥ずかしいから!」

 貴重な南川様の過去情報を入手するチャンスかと思われたところで、本人が止めに入りました。そういえばここ、普通に駅中でしたね。目茶苦茶公衆の面前でした。主に恥をかかせるところでした。


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