表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電子少女でも恋がしたい  作者: 古河 聖
2030年6月23日(日)
58/318

第58話「え、そこですか!?」

 電車の遅延というのは、2030年においてはほとんど発生しなくなりました。というのも、電車の自動運転化により最高速度が引き上げられたわけですが、その際に最も懸念されたのが事故の増加です。電車の速度が軒並み1.5~2倍になるわけですから、その分悲惨な事故も起きやすくなるというのは当然の懸念事項です。なので対策はきちんと講じられていて、例えばホームドアの設置もそのうちの一つです。ホーム上からの転落による人身事故は自動運転化以前から問題になってましたからね。他にも沿線や踏切から人や動物が侵入しないよう策を高くしたり路線を高架化したりすることによって、人身事故は数年前と比べて格段に減りました。沿線火災も建築技法の進歩により減少傾向にありますし、電気系統のトラブルも技術進歩によりほぼなくなりました。これらのお陰で遅延の原因になっていたものは大きく取り除かれ、電車遅延というのは今では滅多に見かけなくなりました。

 発生頻度としては、全国の全路線を合わせて週に数回あるかどうかというレベルです。関東圏に絞るなら1ヶ月に2、3回くらいですね。なので、自分が乗っている電車が遅延した場合は相当に運が悪いということです。私が南川様と出会ってからはまだ一度も遅延したことはありませんね。10年も前なら週に5回も6回も遅延していた路線なのですが、技術の進歩というのは素晴らしいですね。

 では、スタート。



 朝食を簡単に済ませた南川様は、着替えと出かける準備を済ませると9時前に家を出ます。予定より少し時間が早いですが、電車はありますし早く着く分には問題ないでしょう。妹様も予定時間より早めに来るみたいですしね。

 通いなれた駅までの道をいつも通り音楽を聴きながら歩きます。雨も降り始めていますが、まだ小雨程度なので傘を差していれば問題はありません。駅に到着すると、改札をくぐっていつもと同じ方角の電車のホームに向かいます。

「ねえユリ、途中で乗り換えるんだけどどこに乗るのがいい?」

 どこで乗り換えるんですか、と聞き返しかけましたが、目的地はわかっているのでそこから逆算すれば聞くまでもありませんでしたね。ええと、この駅で乗り換えることになるわけですから……。

『8号車付近ですね。前から3つ目のドアから降りると階段が目の前にある感じです』

「おっけー、じゃあそこに乗ろうか」

 先頭車両方面に向けていた足をくるりと回転させると、8号車の方に向けて歩き始めます。3分後にホームへやって来る列車を待ちながら、ちょっと暇なので南川様に今日の話を振ってみます。

『ところで、お姉様への誕生日プレゼントはなにか考えてるのですか?』

「うーん、実は全然決まってないんだよねぇ……。毎年色々考えるんだけど、女の人が喜びそうなものって未だに全然わからないんだよ」

『あのお姉様なら、南川様があげたものならんなんでも喜びそうな気がしますけど』

 妹様と同レベルのブラコンですしね。

「そう、だから余計にわからないんだよ。僕のプレゼントで本当に喜んでるのか、内心「えぇ~」とか思いつつも弟からのプレゼントだから喜んだフリをしてるのか区別がつかないからさ」

『なるほど、それは確かに』

 なんでも喜ばれてしまうと知識が蓄積されていきませんからね。だから女性の喜びそうなものが未だによくわからないというわけですか。

「だから今年は愛海が誘ってくれて助かったよ。愛海に聞きながら選べば間違いはないからね」

『まあ、現役女子大生ですからね』

 流行りものなどには敏感な年頃でしょう。ですが、その言い方をするということは昨年は違ったのでしょうか。

『昨年は一緒に選んだわけではないのですか?』

 あの妹様なら毎年のように「一緒に誕生日プレゼントを選ぼう」という名目でデートを要求していそうな気がしたのですが。

「そうだね。去年も誘われてはいたんだけど、確か仕事の方がトラブってて日程が合わせられなかったんだよね」

『あー、そればっかりは仕方ありませんね』

 自力ではどうしようもない部分ですからね。妹様はさぞ落ち込んだことでしょう。

『すると、昨年は何をあげたのですか?』

 南川様が自分のセンスで選んだということですよね。どんなチョイスをしたのか気になります。

「なんだっけかな……肩こりに効く枕だかクッションみたいなやつだったかな。その時肩こりがひどいって愚痴ってたのを聞いてたから」

『なるほど』

 普通に悪くないチョイスなんじゃないでしょうか。女性がどうこうというよりは、その人が喜びそうなものをきちんと選べていると思いますけど。しっかり事前リサーチに基づいた選択ですし、下手にコスメだとか衣類、小物類を贈るよりは断然良いと思います。

『良いんじゃないですか。昨年同様「女性が喜びそうなもの」ではなく「お姉様が喜びそうなもの」に重点を置いて選べば、そんなに的外れなものを選ぶことはないと思いますけど』

「……なるほど、それもそっか。ちょっと難しく考えすぎてたのかも」

 ふむ、我ながらアシスタントAIとして悪くない仕事ができたのではないでしょうか。……ところで電車が全然来ないですね。

『――えー、3番線の上り列車ですが、現在沿線火災の影響で運転を見合わせております。運転再開まで少々お待ちください』

 と思った瞬間に駅のアナウンスが流れてきました。どうやら遅延したようです。

「そんな……! めったにないのにこんなタイミングで!?」

 月に2、3回が運悪く本日のこの路線に当たってしまったようですね。これは不運としか言いようがないです。妹様との約束に遅れてしまうかもですし、これにはさすがの南川様もお怒りでしょう。

「どうせ遅れるなら仕事のある平日にしてよ!」

『え、そこですか!?』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ