第42話「このハモる部分がたまらなく気持ちいいのです」
カラオケ時の定番ドリンクと言えばなんでしょう。私はドリンクも飲まなければカラオケだってほとんど南川様と2人で来ているのでいまいち詳しくないのですが、やはり多いのはお茶類でしょうか。烏龍茶などは定番と言ってもいいかもしれませんね。南川様も一杯目はほとんど烏龍茶です。ですが、烏龍茶って実はカラオケのお供には不向きなのはご存知ですか? 烏龍茶には油分を分解する効果があって、これが喉、声帯に必要な油分まで分解してしまうので、カラオケ時の烏龍茶は喉を痛めやすいのです。なので南川様も飲むとしても一杯目だけです。
他には、コーヒーなどもカラオケには向きません。カフェインの利尿作用によって身体の水分は奪われお手洗いが近くなるという最悪のコンボです。お酒も同様です。柑橘系のジュースも喉に刺激を与えてしまうのでカラオケ中に摂取するのはあまり良くなかったりします。含まれるビタミンは喉にいいのですけどね。炭酸はゲップを耐える自信があるのならどうぞご自由に、と言ってみたいところですが、やはり炭酸の刺激もあまり喉には良くありません。カルペスなど乳製品系の飲み物は人によります。痰が絡みやすくなってしまう体質の人もいれば、痰が絡まず喉の調子が良くなる人もいるようです。南川様は後者ですね。
そんな南川様のカラオケ定番ドリンクは『カルペスオレンジ』です。いわゆるカルペスとオレンジジュースのブレンドです。単体で飲むと喉を刺激するオレンジジュースをカルペスで中和するわけですね。割合は7:3か6:4でカルペス多めです。半々だとオレンジジュースの刺激が勝つ可能性があるそうです。ビタミンを摂取しつつ喉の調子が良くなる至高のドリンクだと本人は主張しています。科学的根拠があるかどうかは存じませんが、本人がそう思っていて実際調子が良くなるのなら良いでしょう。
ちなみに、各所でお勧めされているカラオケ中のドリンクは『常温の水』です。見かけたら「カラオケガチ勢なんだな」と思ってあげてください。
では、スタート。
お互い一曲目を終えて、次は南川様の二曲目の番ですが、南川様は端末の画面を私のカメラの方に向けてきます。
「ねえユリ、これ一緒に歌わない?」
『お、早くもデュエットですか』
「そうそう。バンドレ縛りが始まっちゃうとこれ歌えないからさ」
確かに、今端末画面に表示されている楽曲はバンドレには収録されてませんね。南川様が大好きなテイルズシリーズの何作か前の主題歌です。PVがとても格好良かった記憶があります。
「じゃあ、二人で予約するね」
『了解です』
この、歌う人数を選択して曲の予約が出来るのもアニムスの特徴ですね。最大で10人まで選択できますが、マイクが多くても各部屋に4本程度なのでそこまで大人数で歌うケースは然程ありません。今回の私たちのように元々デュオの曲を二人で歌うパターンが最も多いです。加えて当然デュオ曲なので歌い分けが入ります。歌詞はそれぞれのパートが色分けで表示され、更には音程もそれぞれ表示されます。ハモリがある曲などではハモリパートまでしっかり音程が表示されるわけですね。アニメ好きではなくてもこの機能を求めてアニムスでカラオケをする人たちもいるようです。
南川様が私のスピーカーの前にマイクを置き、自分の分のマイクを手に取ったタイミングで前奏が流れ始めます。
「僕、シリーズの中でこのPVが一番好きかも」
『わかります』
雲の上から一気に下って水平線、水面を往く一隻の船。陽の光を乱反射する水面。場面が切り替わり、曲調の変化と共に地面を突き破って現れる主人公。冒頭の船から一斉に飛び出す仲間たち、からのタイトル。そして歌い出し。前奏だけでぐっと心を掴まれます。それをカラオケの時に見られるのですからそりゃあテンションも上がりますよね。
「♪~」
歌い出しのパートは南川様から。この曲を歌うときは毎回そうですね。何故ならサビのハモリパートでメインのメロディを歌うのが最初に歌う人で、やや難しい下のパートを歌うのが二番目に歌う人だからです。つまり、私がハモリの下のパートを担当するわけですね。っと、そうこうしているうちに最初のサビです。
「♪鮮やかないっつぶらんにゅーでい!」
『♪駆け抜けろ Go ahead the way!』
「『♪またとない命燃やして!』」
このハモる部分がたまらなく気持ちいいのです。綺麗な和音になったときは本当にテンションが上がります。南川様と一緒に歌っている感じが強く感じられますしね。最初にデュエットした時はそれはもう興奮したものです。一度味わってしまうとこの感覚は忘れられませんね。自分がどっちのパートとかあんまり関係ないです。きっと南川様も同じ感覚でいることでしょう。私のカメラに映る南川様、とても楽しそうですし。
「いやー、やっぱり一緒に歌うと気持ちいいね! めっちゃテンション上がる!」
歌い終わった後の南川様の第一声はそれでした。
『私もです。ですが、本日はまだまだ始まったばかりですよ?』
「もちろん! このままどんどん行くよ!」
さて。三曲目で既にこのテンションですが、あと約九時間半もつのでしょうか。




