第39話「口は無いのでスピーカー遊みですが」
カラオケで一番最初に歌う曲というのは重要ですよね。自分一人で行く場合は好きな曲から好きに歌えばいいだけですが、複数人で行く場合その選択にはかなり気を使うと思います。私や南川様も悩む部分です。
理由は大きく二つあって、一つはジャンルですね。さほど仲良くはない人や職場の人などとカラオケに行った際には大いに悩む点です。全力でアニソンを歌ってもいいのか、歌っていいとすればどの辺までがセーフラインか、自分の中では有名だと思っているが誰も知らなかったらどうしよう等々。アニメ好きなら一度は経験があるかもですね。そうでなくても、マイナーな歌手が好きだったりする方はわかってくれるでしょう。自分はこういうのが好きなのだ、自分の趣味はこうだと宣言する機会でもありますが、それには相応の勇気がいりますからね。今後の関係形成にも響きますし、折角の楽しい雰囲気を自分のせいで微妙なものにしてしまう可能性を孕んでいるかと思うと、冒険はしづらいです。かといって大衆に迎合した曲ばかり歌っても今度は自分が楽しくないんですけどね。
もう一つは曲調です。自分の好きな曲を歌うにしろ、周りに合わせるにしろ、初っ端からバラードや泣ける曲を歌うのは流石に空気が読めない人認定待ったなしでしょう。特に複数人で行く場合は、場の雰囲気を盛り上げるような曲が望まれるわけですからね。しかもなるべくなら全員が乗れる曲が望ましいとなると、選択肢が一気に狭くなります。その上一曲目だと喉が出来上がっていないなので、大きな声を出したり叫んだりするとすぐに咳き込んだり掠れたりしますからね。そうなるとまた興を削いでしまうかもしれないので、その日の一発目でもしっかり声の出る曲をチョイスしなければいけません。くそ面倒です。
結論、カラオケは気心の知れた仲の良い人同士で行くべきでしょう。楽しい娯楽で気を遣いまくるのは間違っています。
では、スタート。
南川様に続いて私がカラオケ端末にログインし終わると、まず最初にやるのはミュージックやマイク音量の調整です。店舗にもよるのでしょうが、大抵のカラオケ機のデフォルト設定音量では9割がた個室の外に音漏れしますからね。大人数で楽しむ際にはそれでも良いのでしょうが、本日のように一人(私も込みで二人)でカラオケをする際には、音漏れしない程度に調整を入れます。まあ、他の客にずっと自分の歌声を聴かれているのは恥ずかしいですよね。
音量の調整が終わると、今度は端末を操作して採点モードの設定です。ヒトカラ(私も込みでフタカラ)の際には毎回採点をつけますね。点数どうこうというよりは、画面に音程が表示されるのがありがたいからつけているようです。なお、採点モードは『アニムス採点』です。これについては後ほど説明機会があると思いますのでその時に。
採点の設定が終わると、いよいよカラオケスタートです。
「さて、じゃあ歌い始めよっか! 今日はどっちからだっけ?」
『前回は私から始めたので、今回は南川様からです』
「おっけー」
先に歌う方は毎回交代しています。2週間前に来た時は私から歌い始めたので、今回は南川様から歌い始めて、そこから交互に歌いつつたまにデュエットしたり、という感じです。
「よーし、じゃあこれから行こう!」
南川様が端末を操作して一曲目を送信します。曲は……なるほど、『ファンコ』のプレリュードの主題歌ですね。良い選曲です。前奏のギターがいい感じにテンションを上げてくれますね。ちなみに『ファンコ』というのは、スマホ用のクイズゲーム『魔法使いと黒猫のバニル』内のイベントの一つ『ファンタジーコード』のことです。和音の名の通り、主人公たちが音の力を合わせて戦う良イベントですが、その話はまあ置いておいて。音を主題に置いたイベントなので、続編が出る度に毎回主題歌が付いていて、今南川様が歌っているのは『ファンコ』シリーズの一番最初のイベントの時の歌です。こういう、一アプリゲーム内のイベントに付けられた主題歌というマイナーな曲でも漏れなく収録されているのが、アニムスの強みであり南川様が迷いなくこの機種を選ぶ理由ですね。ジョンソウンドやドムではこんな曲は収録されていません。名曲なのに。
「♪高く響け響け響け!未来を切り開く音色〜」
そんな解説を入れている間に一番のサビですね。やはりサビが一番盛り上がります。思わず一緒に口遊みたくなります。口は無いのでスピーカー遊みですが。
そしてアニムスの更なる強みはやはり映像ですね。今もサビの盛り上がりに合わせて『ファンコ』の主人公が武器であるギターを構えて戦うイラストが表示されていて、いまいち乗り切れない映像が流れることの多い従来の機種に比べれば遥かにテンションが上がること間違いなしです。『ファンコ』は映像化もしていなければゲーム内映像もあまり無いのでこの様なイラストやゲーム画面の静止画が切り替わりで表示される感じになりますが、映像のある作品の関連曲ではその作品の映像が流れますし、アニメ好き社員の神編集で大変曲にマッチした映像になっているので、同じ曲が他機種に収録されていてもアニメ好きならこちらを選びますよね。アニムス様々です。




