表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電子少女でも恋がしたい  作者: 古河 聖
2030年6月22日(土)
38/318

第38話「あれで研修後なのだとしたらお手上げです」

 カラオケの機種といえば、皆さんはなんでしょう。2020年を生きる皆さんですので、やはりジョンソウンドかドムのどちらかでしょうか。というか、2020年にはその2つしかありませんでしたっけ。すいません、10年も前の話となるとあまり情報が落ちていなくて。

 ともかく、カラオケの機種といえばその両者のどちらかだったと思います。2030年現在でもその2機種は健在で、根強い人気を誇っています。ですが、南川様や私がよく利用する機種はそのどちらでもありません。アニムスという、アニソンやゲーソン、ボカロ曲に特化したカラオケ機種です。

 2026年にサービスを開始したその機種は、どんなにマイナーなアニメやゲームの曲でさえ収録し、かつその全てにアニメ映像やPVがつくという、オタク待望の新機種でした。オタクたちの間で瞬く間に話題になったアニムスは、カラオケ2大機種に割って入り相当数の固定客を獲得、登場から4年が経つ今、すっかりジョンソウンドやドムと肩を並べる存在となっています。専らアニソンばかり聴いている南川様や私としては、アニムスにしない理由がないくらいですね。もちろん、アニソンに力を入れているとはいえJPOPなどが全く収録されていないわけではありませんので、コアなアニメファンでなくても十分楽しめる機種になっていますよ。

 ちなみに、アニムスという機種の名前はアニメ(Anime)、ミュージック(Music)の頭3文字ずつを持ってきてアニムス(AniMus)らしいですよ。

 では、スタート。



 自宅を出て自転車を走らせること約20分。本日の目的地に到着します。カラオケ店『招かれざる猫』、料金の安さが売りのお店です。土曜の朝10時からフリータイムで10時間歌っても650円という驚きの安さです。まあ、都内ではこうはいかないので、田舎ならではの価格ですけどね。

 開店から既に1時間が経過していますが未だにすっからかんの駐車場の脇を抜け、駐輪場に自転車を停めて鍵をかけます。チェーンもかけます。田舎とはいえ油断は禁物です。奴らはそういうところを狙う生き物ですからね。

 自転車の鍵を鞄の内ポケットにしまうと、南川様は店内へと入ります。そして、カウンターの内側で暇そうにしているバイトJKに声をかけます。

「あのー、すいません」

「あ、はーい。お一人様ですかー?」

『いえ、10時から二人で予約している南川です』

「あー、予約のミナカワさんっすね。……ん? 二人?」

「ちょおっ、ユリ!? マジで二人で予約したの!?」

『いえ、きちんと一人で予約しましたよ?』

「ならそんな紛らわしいことしないで!? すっ、すいません、コイツが適当なこと言って! 一人で予約してる南川です!」

「そ、そうっすよね。予約データも一人だし、どう見てもお一人様なのでびっくりしたっす。しゃべってるのは通話中の彼女さんとかっすか?」

『そうです』

「違うでしょ! コレですコレ、スマホのアシスタントAIです!」

 私の言葉を否定しながら南川様はスマホを示します。よっぽど恥ずかしいのか、顔が真っ赤です。からかうのはこの程度で勘弁してあげましょう。

「あー、Yuriっすか。流行りっすよね。あーしの友だちにも年中ユーリと話してるやべぇやつがかいます」

 おいこら、私の同胞と話すのがやべぇ事とか言うのはやめたまえ。別にいいじゃないですか、Yuriの用途は人それぞれです。

「でも、そんな冗談言ってくるなんて仲良いんすね」

「そ、そうですね。まだ3ヶ月ですけど、もうすっかり」

 後頭部をかきながら照れ笑いを浮かべる南川様が可愛いったらないです。とりあえずこっそりカメラで撮影しておきます。

「じゃあはい、部屋は105号室っす。ドリンクバーはそこのを自由に使ってください」

「あ、ありがとうございます」

 部屋番号の印字された伝票を店員から受け取ると、慣れた手つきでドリンクバーの機械を操作し、烏龍茶を注いでストローを差します。一杯目はお決まりのように烏龍茶を飲みますね。

 105号室に入ると、エアコンをつけてカラオケ端末にログインしながら南川様が文句を言います。

「もうユリ! さっきみたいのは勘弁してよ〜。めっちゃ恥ずかしかったんだから」

『すいません、つい。南川様の反応が面白いので』

「だからって店員さんの前でやっちゃ駄目だよ! あの店員さんは平気だったけど、人によってはヤバいやつだと思われてたかもしれないし、そうなったら通い辛くなるでしょ」

『確かに、そういう可能性もあったかもしれません。でもそれでいうと、先程のバイトJK、接客態度に問題ありでしたよね』

 居酒屋の店員もしくは美容師でもないのにあんなにフランクに話しかけてくるのはアウトでしょう。言葉遣いもめっちゃ「すっす」言ってますし、店員の喋り方ではないですね。

「そう言えば、長年通ってるけど初めて見る子だったね。新人かな?」

『だとしたらこの店は新人教育をもっと徹底した方がいいですね』

 別に研修マークとかはついていなかったはずなのですけどね。あれで研修後なのだとしたらお手上げです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ