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電子少女でも恋がしたい  作者: 古河 聖
2030年6月21日(金)
33/318

第33話「今までミラーを知らずにプレイしてたなんて、なんと間抜けな」

 ある特定の分野だけ飛び抜けて能力が高い人というのは、往々にして存在するものです。例えば、陸を走らせたらクラスでも後ろから数えたほうが早いくらいなのに、水の中を泳がせたら全国クラスの人とか。古代史や近代史はからっきしなのに戦国時代だけやたらと詳しい人とか。偏差値は低いのにIQは恐ろしく高い人とか。要は向き不向きや得手不得手、好き嫌いなどによって似通った分野であっても著しい差が生じたりするという話です。

 何故急にこんな話をしたのかというと、我が主、南川様がまさにそういう人だからです。南川様がアクションゲームが得意ではないという話は以前どこかでしましたよね。私なりにその原因を分析した結果、南川様は同時に複数のアクションを処理するのが苦手なのです。左スティックでキャラを動かし、右手側の4種類のボタン、あるいは左手側の方向キーも使って技を繰り出し、右スティックで画面回転、LR等で回避やガード、加えてスティック押し込みで特殊アクション等々、山ほどあるコマンドを敵の動きや状況に合わせて入力するのが恐ろしく下手くそなのです。そのため難易度ノーマルでも苦戦を強いられることが度々あります。

 ところが、これが音ゲーになると別人のようになるんですね。「アクションよりも考えること少ないから楽なんだよ。流れてきたものに反応するだけだし」と本人が語るように、コマンドが少なくなる事と音楽による聴覚的補助がある事などから、その腕前は一気に化け物クラスになります。全国で通用するほどではありませんが、見かけた人が「何アレやば」となる程度には上手いです。

 場合によってはアクションというジャンルに分類されることもある音ゲーですが、こういう例を目の当たりにすると、音ゲーは音ゲーというジャンルであるべきですよね。

 では、スタート。



 お風呂から上がると、南川様はバンドレを起動します。どうやら相当やりたかったようです。私に起動してと言うのではなく、自分で操作して起動しましたからね。

「今のイベント、確か明日までだよね。ポイント報酬のキャラは……あ、まだ取れてないや。今回のイベント、手持ちキャラと相性悪いからなぁ」

 バンドレはイベント登場キャラやイベント毎に指定される属性のキャラをパーティに組み込むと有利にポイントが稼げるのですが、今回の南川様はイベント有利キャラがだーれもいなかったので、最終日前日でも報酬キャラが取り終わってないのです。

「明日は一日カラオケだろうし、できれば今日取っておきたいなっと」

 言いながら南川様は曲を選択し、演奏を開始します。いつ見ても鮮やかにノーツを捌いていきますね……っと、ラエンが来ました。音ゲー中なので通知は出しませんが……うげ。面倒な方から来ましたね。

 南川様の演奏が終わるのを待ってから声をかけます。

『南川様。町田様からラエンです。本日のお礼と、バンドレのフレンドコードが来てます』

「あ、ほんと? じゃあちょうどいいからフレンド登録しようか。番号は?」

『00114514です。最低な番号ですね』

「え? どの辺が?」

『南川様は知らないままで大丈夫です』

 まあ、町田も狙ってこの番号になったわけではないでしょう。こういうのは自動で割り振られるものですし。にしたってひどい偶然があったものです。

「入力完了っと……これだね。プレーヤーネームは「たまちゃん」だって。どこから来て……えっ、レベル1572⁉︎」

 それは中々のガチ勢ですね。確かにリリースから13年経ってますが、そのレベルは異常です。同じく初期勢の南川様でも550ですよ。

「町田さんのガチっぷりがすごいね……あ、でも、ゲームの腕前ではそうでもなさそう」

 バンドレのフレンド欄ではフレンドの楽曲クリア状況とか見れますからね。どれどれ……うわ、これは悲惨ですね。全楽曲872曲のうち、難易度エキスパートのクリアが589曲でフルコンは156曲。13年間やってて、しかも南川様の3倍近く遊んでいるのにこの腕前はやばいです。よっぽど苦手なのでしょうか。

「このプレイヤーにフレンド申請すればいいんだね。ユリ、申請したって返しといて」

『了解です』

 注文通り『申請しておいたよ』という短い一言だけを送信すると、一瞬後には既読になり、程なくして返事が来ました。

『『先輩の腕前はバケモノですか⁉︎ エキスパート全872曲クリア済でフルコンが863曲って! へっぽこな私にアドバイスでもくださいよ!』という返信が来ました』

 この量が15秒程度で返ってくるとは、町田の入力速度の方が化け物では。と一瞬思いましたが、この速さは恐らく音声入力ですね。Yuri(わたし)でなくてもその程度はかなり前からできます。

「アドバイスって言われてもなぁ。……あ、そういえば町田さんって左利きだよね。ミラーは使ってるの?」

 南川様の質問をそのまま投げかけてみると、やはり数秒で返ってきます。音声入力確定ですね。

『『ミラーってなんです?』という信じられない返答が来ました』

 今までミラーを知らずにプレイしてたなんて、なんと間抜けな。というか、13年もやってれば利き手関係なく慣れそうなものですけどね。

「マジか……。ええと、日本人って右利きが多いから、どうしても色んなものが右利き用に作られてる事が多いのは、左利きの町田さんなら分かると思うけど。それって実は音ゲーの譜面にも言える事で、右手側の方が複雑な処理をしなきゃいけない譜面が流れてくる事が多い傾向にあるんだよ。町田さんが苦戦してるであろう中難易度の曲は特にね。これが高難易度になると左手側も複雑な処理を迫られるんだけどそれは置いといて。でもそれってさ、左利きの人には辛いじゃん? 利き手じゃない方で複雑な譜面を処理しなきゃいけなくなるわけだからさ。それは理不尽だし不公平だよね。だから大抵の音ゲーには「ミラー」っていう、譜面の左右を反転する機能がついてるはずなんだ。もちろんバンドレにもついてるし。左利きなら絶対に使ったほうがやりやすいよ」

 ……長いですね。取捨選択が面倒くさいので原文そのまま送ってしまいましょう。えい。

 長文だったせいなのか、あるいはミラーを試しているのか、次の返信は約5分後でした。

『『急に世界が変わりました! めっちゃやりやすいです! その調子でバンバンアドバイスお願いします!』と来てますが』

「え、まだアドバイス続けなきゃなの?」

 次週、南川様による音ゲー教室基礎編が開講です。多分。


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