表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電子少女でも恋がしたい  作者: 古河 聖
2030年6月21日(金)
27/318

第27話「私が録音しているので大丈夫です」

 何故、パソコンのキーボードがあんなキー配列なのか、考えたことはありますか? 南川様のように仕事で毎日接しているとかですっかり慣れてしまった人たちにとっては別に気にもならないことですが、パソコン使い始めの初心者にとっては、その規則性も薄いキーボードの配置にさぞイライラすることでしょう。なんでUIOは並んでるのにAとEはそんな離れた場所にあるんだ、みたいな。もちろん、最初からこんな変な配列で作られたわけではありません。

 パソコンのキーボードの起源は、タイプライターという昔の印刷機械です。文字盤を打鍵することで活字を紙に印字するというもので、その文字盤こそがキーボードの原点です。タイプライターが作られた当初の文字盤はアルファベット順を少し変更した程度の感じで綺麗に並んでいました。一段目には数字を、三段目にはAからM、四段目はOからZを、その中から母音であるA、E、I、O、U、Yを抜き出して二段目に配置したのがキー配置の原型です。現在のキーボードを見るとその名残が見えてくるかもしれませんね。で、ここからどうやって今の形になるのかというと、大きな何かがあったわけではなく、小さな改良の積み重ねなのです。これだと使い辛い、紛らわしいと言ったその時その時の意見に合わせてキー配置を調整していった結果、今の形に落ち着いたようです。と言ってもアルファベットを普段使いする人たちに合わせた調整なので、日本語を使う私たちにとっては別に使いやすい配置でもなんでもないんですがね。

 では、スタート。



 蟹は人を無言にさせるなんて話がありますが、ほろ酔い町田がその程度で静かになるわけがなく、蟹をもきゅもきゅと食べ進めながら喋り倒します。

「あ、そうだ聞いてくださいよ先輩! 私この間水戸先輩に怒られたんですよ!」

「水戸に? あの、穏やかの権化みたいな水戸に? 一体なにやらかしたの、町田さん」

 そうですね。水戸様はある種仏のような人物なので、よっぽどのことがない限りは怒らないと思うのですが。

「私は悪くないですよ! ただメモ帳の中身をエックスェルに貼り付けるために、マウスの力をフルに使ってチマチマ頑張ってただけです! そしたら水戸先輩が「ショートカットキーを使え! その単純コピーに何時間かける気だ!」って言うんですよ! 酷くないですか⁉︎」

「うん……それはまあ、酷いね」

「ですよね! 南川先輩ならわかってくれるとおもーー」

『もちろん、貴女のPCスキルが、ですよ?』

「え゛。……まぢですか、先輩」

「ええと……うん。SEなんだし、ある程度のショートカットは使えるようにした方がいいかな」

「そんな……バカな……。私史上最高に頑張ったあのマウス捌きは無駄だったと言うんですか」

 そのマウス技術自体は無駄ではないかもしれませんが、少なくとも時間は無駄にしましたね。貴女がマウスのみで頑張ったそのコピー作業、多分マウス一切使わずに出来ますよ。しかもその方が圧倒的に速いです。

「無駄ではないかもだけど、ショートカット覚えた方が町田さんも楽だよ」

「じゃあ教えてくださいよ! 先輩として!」

 何故南川様がキレられているのでしょう。自分の立場が分かっていないのでしょうか。まあ、馬鹿な上に酔っ払いですから仕方ないのでしょうか。後で酔いのさめた本人に聞かせる為に録音しておきましょう。ポチッと。

「別にいいけど……今教えて覚えてられるの?」

「メモ取るから大丈夫です! 頭の中のメモ帳に!」

「ダメな予感しかしないな……」

『南川様。私が録音しているので大丈夫です。そんな話をした覚えはない、みたいな言い逃れはさせません』

「用意周到すぎるよ、ユリ……。でもまあ、そういう事ならいいか。じゃあ町田さん、今知ってるショートカットを教えて」

「ウェンドゥズキーを押すとウェンドゥズメニューが開きます! Tabって書いてあるやつを押すと次の項目に移動してくれます! でも前にしか進めないので行き過ぎるとめっちゃ連打しなきゃいけなくて面倒です! この2つしか知りません!」

「………………お、おう」

 これは想像以上に酷いですね。さすがの南川様も絶句です。いくらなんでもCtrl+Cでコピー程度は知っていて欲しかったのですが。その2つだって、ショートカットと呼んでいいものかどうか……。

「取り敢えず、行き過ぎてもTabは連打しないで。Shift押しながらTab押せば1つ前に戻るから」

「えっ……⁉︎ 一方通行じゃないんですか⁉︎」

「そんな不便な構造してるわけないでしょ」

 この調子では死ぬほど先が思いやられますね。

「じゃあ初歩的なところからいくよ。まず、Ctrl+Cでコピーができる。テキストはもちろん、ファイルもコピーできる。で、コピーしたものはCtrl+Vで貼り付けられる」

「マウスを右クリックしなくていいんですか⁉︎」

「うん。なんならキーボードの右下らへんにあったりするメモ帳みたいなキーを押すと、右クリックした時と同じメニュー開けるし」

「キーボード、万能ですか……!」

 そりゃ、マウスがないと使えないパソコンなどポンコツもいいところですからね。 

「他にも、切り取るならCtrl+X、中身を全部選択するならCtrl+A、間違えたと思ったらCtrl+Zで1つ戻る、Ctrl+Sなら保存、エクスプローラー上とかでCtrl+Nすれば同じエクスプローラーをもう一つ開ける、Ctrl+Shift+Nなら新規フォルダを作成できる、Alt+Tabなら今開いている全ファイルを一覧出来るからファイルの切り替えをするなら必須だ。ウェブ上とかでCtrl+Tなら新しいタブが開く、Ctrl+Wでページやファイルを閉じることができる、F5を押したら画面更新だ。ファイルを選択している状態でF2なら名前の変更、エックスェルのセル上でF2ならセルの中身を編集する状態になる。他にもーー」

「ストップ先輩! 情報過多です! 私の頭の中のメモ帳にはそんなページ数はありません! 書き漏らしまくってます!」

「いや、まだまだ序ノ口だけど……」

「キーボード怖い!」

 これは一覧表とか作らないとダメなやつですね。口頭指南はあまりに無謀でしょう。時には諦めが肝心です。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ