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電子少女でも恋がしたい  作者: 古河 聖
2030年6月21日(金)
21/318

第21話「貴女の女子力暴落中ですよ」

 先週がちょうど20話だったのでその話題を優先しましたが、世間的には母の日でしたね。せっかくですので1週遅れですが南川様のお母様の話をしましょうか。……え? 最近メタ発言に抵抗がない? ははは、何のことでしょう。

 南川様のお母様は、実際にお会いした事はないので南川様のお話やラエンのやり取りなどからの推測になりますが、ドが付くレベルの天然なお方です。砂糖と塩を間違えるなどという可愛いレベルではありません。曰く、砂糖と小麦粉を間違えるそうです。小麦粉入りのコーヒーを飲まされた経験を持つ南川様が苦い顔で語っていました。他にも、近くのスーパーに買い物に行ったはずが二駅先の本屋に居たり、お父様にお酒を頼まれてみりんを提供したり、授業参観にパジャマで登場したり、「体育倉庫」と打ちたかったはずなのに「体位糞羽子」になっていたりします。天然エピソードには事欠きません。ところで、どういう文脈なら息子に対して体育倉庫というメッセージを送るのでしょう。私のAIとしての全能力をもって会話の分析にあたりましたが、さっぱり分かりませんでした。文脈ゼロです。恐らくこういうところも含めてド天然なのでしょう。実際にお会いするのが楽しみなような、対処できるか不安なような……。

 では、スタート。



 時は流れ、午後6時。今週の勤務の終了時刻です。

「んあ〜、やっと終わった〜!」

 退勤の打刻をした南川様が背もたれに身体を預けて思いっきり伸びます。普段ならもう鞄を抱えてオフィスを飛び出している頃合いですが、町田との約束があるのでこうして自分の席で待っているようです。

『きちんと覚えていたんですね』

「そりゃあね。忘れて帰ると後で死ぬ程グチグチ言われるし」

『やらかした事があるんですね』

「ユリと会う前にね。水戸経由でラエンが鳴り止まなくて怖かった」

『なるほど』

 将来ヤンデレ化しそうですね、町田。扱いには注意した方が良いかもしれません。

 そんな話をしていると、仕事を終えた町田がリュックを背負ってこちらへやってきました。

「お待たせしましたー! 帰らずに待っててくれましたね」

「帰ったらまた鬼のようにラエンが飛んでくるからね」

「えー? そんなことありましたっけー?」

「惚けてやがるな……」

 ……側から見ているとイチャついているようにしか見えませんね。不愉快です。

『南川様。寄るところもあるので早めに出た方が良いのではないですか?』

「あ、そうだね。じゃあ町田さん、そろそろ行こうか。あと、途中でコンビニ寄って平気?」

「あ、はい。それは大丈夫ですけど……先輩、誰かと会話してました?」

「ユリのことかな」

「え、誰ですかその女」

「女って……まあ、女性か。ユリっていうのは、スマホ搭載のアシスタントAIの事だよ」

 説明しながら、南川様は耳に入れっぱなしのワイヤレスイヤホンを取り外します。これを機に、私も一応挨拶をしておきましょうか。

『こうしてお話しするのは初めてですね。ユリです。南川様のサポートをしています』

「おおっ、これが噂の! え、先輩いつからこのスマホなんですかっ?」

「3ヶ月くらい前かな」

「そんなに⁉︎ という事は、前に飲みに行った時もユリちゃん搭載してたんですか⁉︎」

『そういう事になりますね』

 あと、なに気軽にちゃん付けで呼んでるんですか。さんを付けなさい、さんを。

「なんで言ってくれなかったんですか! 私もユリちゃんと色々話してみたかったのに!」

「いや、別に聞かれなかったから」

「ぶーぶー!」

 その歳でその言動はどうなんでしょう。ですが、元々子供っぽい人なので似合っていなくは無いですね。あと、さんを付けろと言ったでしょう。

「今日の飲みの席では死ぬ程色々聞きますからね!」

『勘弁してください』

「「本人からの否定⁉︎」」

 町田の質問攻めは休まる暇がなさそうなので嫌です。


 私達のやり取りがオフィス内で注目を集めてしまっていたので、そそくさと逃げるようにオフィスを出ます。傘を差して向かったのは居酒屋ではなくコンビニです。昼間に話していたように、念のため現金を引き出しに行くそうです。コンビニに行く前に「今日のお店はカード使える?」と町田に聞いてしまえば寄らずに済むかもしれないのに、と思いはしましたが、どうやらそれ以外にも用事があるようです。

 やって来たのはセボンイレボン。全国的に有名なコンビニチェーンです。

「ごめんね、わざわざ。予約の時間とか平気?」

「6時半で予約してるので平気ですよ。それより、なんの用なんですか?」

「ちょっとポケットティッシュが切れてて、忘れないうちにと思って」

 そう言えば午後にコーヒーを軽くこぼした時に使い切っていましたね。家に帰れば在庫はありますが、道中で鼻水が垂れても垂れ流しにするしかなくなってしまいますからね。確かに大事な買い物です。

「マメですねー、先輩は。ポケティなんて持ち歩かない人も多いですよ。私とか」

「いや持ち歩いてよ……鼻水とかどうするの?」

「んー……すする?」

 それでいいんですか、23歳女子。貴女の女子力暴落中ですよ。


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