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電子少女でも恋がしたい  作者: 古河 聖
2030年6月21日(金)
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第18話「はい、めっちゃ」

 南川様のコミュ力を5段階評価で表すと、2.2くらいになります。5段階じゃねえじゃんというツッコミはなしです。何故こんな微妙な評価になるのかと言うと、仕事モードのオンとオフで別人かと思うくらい人が変わるからです。

 仕事モードがオフの場合だと、評価は1に届くか届かないかというレベルです。超のつく内弁慶で、基本的にはあまり喋りません。「普通に喋ってたような気がするけど?」と思ったそこの貴方の目は節穴です。確かにここまで計17話、それなりのセリフ量はあったかと思いますが、その相手は全て私です。約3ヶ月もの間常に一緒にいるわけですから、私相手には普通に話せて当然です。カテゴリーで言うなら既に私は南川様の家族枠にいるのです。これが私を含めた家族以外の人との会話となると、自分から発話する事がほぼなくなります。相手の話に相槌を打つだけのマシーンと化します。仲のいい友人たちとの集まりであっても、友人たちの楽しげな会話をひたすら聞きながら一緒に笑うだけの置物と化していることが殆どです。

 そんな南川様ですが、仕事モードがオンの場合は評価が4ぐらいまで跳ね上がります。本人曰く「仕事だから仕方がない」と完全に割り切っているらしく、上司やお客さんには自分から積極的に話しかけに行きますし、相槌を打つだけでなくきちんとキャッチボールもします。最初にその変わり身を見た時は心底驚いたものです。普段からそれが出来ればガラッと世界が変わりそうですが……正直私としては、今のままの南川様でいて欲しいですね。その方がらしい気がします。

 では、スタート。



 電車に乗るまでにバタバタと色々ありましたが、本日もいつも通りの時間に会社へ到着します。時刻は8時45分。始業時間まではまだ15分ほどあります。この15分が、南川様がずぶ濡れになってまで急いで電車に乗った理由です。曰く「会社に着いてすぐ仕事とか無理。しんどい」との事で、仕事モードに切り替えるための時間が必要なのだそうです。過ごし方は様々で、曲を聴いたりソシャゲーをしたりする時もあれば、軽く仮眠を取る時もあります。が、生憎本日はそのどれでもないようです。

「南川せんぱーい!」

 自席に座ってのんびりしようとした南川様に声をかける人物がいました。

「町田さん……朝から元気だね」

 彼女は町田。南川様の1つ下の後輩にあたる女性です。呼びかけの声だけでわかるように、元気の有り余っているタイプの方です。超内気な南川様とは見るからに正反対の性格で反りが合わなそうに見えますが、何故か南川様は懐かれています。南川様の方は苦手としているみたいですけどね。

「そりゃ金曜日ですからね! という訳で今日飲みに行きませんか?」

「またか……町田さん、完全にたかってるでしょ」

「いやいや、そんなわけないじゃないですか! ……まあ確かに、給料日前でお財布は軽いですけど」

 ……失礼、懐かれているではなくたかられているでしたね。給料日前になるとよく南川様をはじめとした先輩たちを食事に誘うようです。中でも南川様は人が良さそうに映るのか、よく声をかけられています。確かにその分析は正確で、南川様はそういうのを断るのが苦手ですからね。本気で嫌なら私が出ていって断ってもいいんですが、そこまで本気で嫌がっている訳ではないようです。何故でしょう。希少な女性との接点だからでしょうか。あ、なんかそう考えるとムカついてきました。後で問い詰めましょう。

「まあ、そういうわけなのでお願いしますね! お店は私が探しておくので!」

「いやどういうわけだよ……というか、朝から夕飯の話とか気が早すぎない?」

「だって先輩、仕事終わると光の速さでいなくなるじゃないですか。お昼も席にいないことがほとんどですし。そしたら朝捕まえるしかないじゃないですか」

 南川様、朝にしか登場しないレアモンスターみたいな扱いですね。まあ、否定はできませんけど。

「なので、今日はさっさと帰らないで待っててくださいね?」

「はぁ……わかったよ」

「ありがとうございます! よっし、夕飯ゲット!」

「ねえ、今聞き捨てならないセリフが」

「じゃあ、また後で!」

「あ、ちょっと!」

 約束を取り付けると、町田はたったとスキップで自席へと帰って行きました。最後に本心をばら撒いていきやがりましたね。やはり要注意人物としてチェックしておきましょう。

『……嫌なら嫌とはっきり言った方が良いですよ? あの手の輩はNOと言わないとどんどんつけ上がります。なんなら私が言いましょうか?』

「んー……とりあえずは大丈夫かな。こうやってご飯を奢るのもせいぜい月に2、3回だし。それに、僕だけじゃないだろうしね。いつもの感じなら水戸も一緒だから、僕の負担はそこまで重くないよ」

 確かに、町田と2人で飲みに行かれているのは記憶にないですね。大体が南川様唯一の同期の水戸様という男性も一緒です。先輩2人で後輩1人分を奢る形になるので、1人あたりの負担は軽めでしょう。そこまで計算して断りにくくしているのだとしたら相当な策士ですね、町田。

『それはそうですが、いざという時にきちんとNOと言えるようにしておいた方がいいですよ。南川様、なんだか騙されやすそうですから』

「ええ!? そう見える!?」

『はい、めっちゃ』

「めっちゃ!?」

 まあ、そういう人のことをあまり疑わないあたりが南川様の良さでもあるんですけどね。それを悪い人に利用されたりしないか、私としては心配なのです。

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