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電子少女でも恋がしたい  作者: 古河 聖
2030年6月21日(金)
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第16話「ゴーグル大先生はそう言っています」

 南川様曰く、最もテンションの上がる曜日は金曜日らしいです。完全週休二日制を採用し、必ず土日が休みの会社に勤めている南川様にとって、金曜日というのは「今日が終わったら休みじゃー!」となる日だそうです。そりゃあ、テンションも上がるでしょう。朝に弱い南川様など特にです。無理に早起きせず、心ゆくまで寝ていられるわけですからね。いつもしんどそうに起きる南川様を見ているので、その気持ちは十分に理解できます。これが好きな仕事・やりたい仕事であったり、好きなもののための仕事などであればまた少し違ってくるのでしょうけど、南川様の場合は生活費や趣味、将来の為に仕方なく別に好きでもない仕事をしている感じなので、週末の2連休を心から待ち望んでいるのです。

 ちなみに、私のテンションが最も上がるのも、連休前の金曜日の夜です。休日というと南川様がスマホを使う時間も平日よりも長くなりますので、アシスタントAI(わたし)の仕事量は逆に増えて大変そうに思われるかもしれませんが、その分南川様との会話も必然的に増えるわけです。それも、仕事とは無縁のプライベートな会話です。そりゃあ、前日の夜から明日はなんの話をしようかしらと妄想を膨らませてはーーけほん。失礼、つい余計な事を口走りそうになりました。

 では、スタート。



 朝6時。アラームの設定時刻になったので、いつものように南川様を起こします。

『南川様、時間です。朝6時です。起きてください』

「……うーん……あと3時間……」

『要求が大胆すぎます。そんなに寝たら大遅刻ですよ。ほら、いいから起きてください』

「いやだぁ……」

『駄々っ子ですか。本日は金曜日ですよ。今日を頑張ったら明日明後日はお休みですから、なんとか今日だけ頑張ってください』

「うぅ……仕方ないから頑張る……」

『その調子です』

 金曜日や祝日前などはこの魔法の言葉が使えるので、普段よりも起こしやすいです。その分、平日の脅し文句を考えるのが大変なのですが。

 布団から這いずるようにどうにか出た南川様は、洗面所で軽く顔を洗って目を覚ますと、いつものようにキッチンへと向かいます。

「近々期限が切れそうなものって、昨日使い切ったよね?」

 冷蔵庫の扉を開きながら南川様が聞いてくるので、私も内蔵カメラで冷蔵庫内を精査しながら回答します。

『そうですね。少なくとも数日内に期限が切れるような食材は……あ』

「ん? 何かあった?」

『冷凍庫に入れてある冷凍ご飯ですが、入れてから1週間になるのでそろそろ消費した方がいいですね』

「あ、そうなの?」

『はい。冷凍ご飯の賞味期限は約1ヶ月と言われますが、1週間も経つと徐々に味が落ちてくるのです。なので、美味しく食べたいのであれば早めに消費するべきかと』

 ゴーグル大先生はそう言っています。

「そうなんだ、初めて知ったよ。じゃあご飯を使おうか。うーん……あ、おひゃ漬けでいっか」

『……念のため確認しますが、それはお茶漬けを噛んだのですか? それとも、冷やし茶漬けの事を指してその間抜けな名称を使ったのですか?』

「ま、間抜けとは失礼な! お冷やとお茶漬けを混ぜた、いい感じの名前でしょ⁉︎」

『いえ、噛んだようにしか聞こえませんが……』

「まじかぁ……これは名案だと思ったんだけどなぁ」

 ぼやきつつ、冷凍ご飯を取り出した南川様はそれをそのままレンジに突っ込みます。しかし微塵もレンジを操作しようとはしないので、私にやれということなのでしょう。まあ、知識のない南川様が適当に解凍するよりは私がやった方が美味しく解凍出来ますからね。賢明な判断です。

 私が解凍用に設定してレンジを動かす間に、南川様はお茶漬けの素と茶碗、水を用意します。種類は鮭茶漬けですね。南川家には常備されていて、よく朝食のメニューになります。簡単に作れますからね。ちなみにお茶漬けではなく冷やし茶漬けを作るのは、今が夏場だからという理由ではなく、お察しの通り南川様が極度の猫舌だからです。たとえ真冬であろうとこの人は冷やし茶漬けを作ります。多分。

 と言っている間にご飯の解凍が終わります。レンジから取り出したそれを「あちゃちゃっ」とか言いながら茶碗に盛り付け、お茶漬けの素と水をぶっ込んで軽く混ぜれば、はい完成です。料理と呼ぶのもおこがましいほどのお手軽工程ですね。

 それをリビングのテーブルの上まで運ぶと、手を合わせて「いただきます」と宣言してから冷やし茶漬けを箸で食べ始めます。しかし、南川様は別段箸の扱いが上手いわけではないので、水を含んだご飯は掴んだ先からボロボロと茶碗の中へダイブしていきます。

『……あの、以前も申し上げたと思いますが。箸ではなくスプーンを使われてはどうです?』

「いや、それはなんか負けたような気がするし」

『何にですか……。そうやって食事に無駄な時間をかけると、電車に間に合わなくなりますよ?』

「いいの、最終的にはかきこむから」

『それは負けにはならないのですね……』

 共に過ごして3ヶ月、南川様の謎のこだわりは未だに解析不能です。

 

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