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電子少女でも恋がしたい  作者: 古河 聖
2030年6月20日(木)
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第14話「あなたのアカウントはBANされますが」

 アシスタントAIである私はスマホ内に関しては全権限を持っている、というお話は以前どこかでしたと思います。具体的には第5話あたりでしたと思います。その時は情報アプリやSNSについて触れましたが、全権限と言うからには当然ゲームアプリにも当てはまる訳です。……勘のいいソシャゲーマーさんは既におわかりですね?

 そうです。私がゲームアプリを操作できると言うことは、あなたが仕事中などでスマホを弄れない時でも自動で素材の周回などが可能だと言うことです。ソシャゲーマーの皆さんにとっては革命でしょう。体力全回復の通知の度にアプリを起動し、決まったクエストへ決まったパーティで出撃し、決まった手順で敵を倒す作業のようだった時間を、AIが代わりにやってくれるのです。周回好きの変態には余計な機能ですが、大抵の人は重宝するのではないでしょうか。ただ私たちAIに「スタミナがたまり次第、このパーティでこのクエストをやっといて」と言うだけで勝手に素材が集まるのですから。

 ですが、ゲーム制作サイド的にはあまりAIに自由にやられても困ります。ガチャの乱数調整とかされてしまっては商売あがったりですし、高難度クエストをAIの力だけで突破されては悲しい気分になります。制作意欲もなくなります。勿論、AIサイド的にもそのような使われ方は望まないところです。なので、この問題についてはゲーム制作側・AI側で協力して対策が立てられています。AIによるゲーム内乱数の調整は一切出来ないように制限されていますし、未クリアのクエストやAIにやらせたくない任意のクエスト等はAIの操作では遊べないようにゲーム制作側で設定できるようになっています。なので私たちが手伝えるのは、前述したクリア済みのクエストの周回作業ぐらいになります。まあ、そうしないとゲーム本来の楽しさを奪ってしまいますからね。それは「アシスタントAI」の仕事ではありません。

 ……え? それじゃあ「全権限」じゃないじゃないかって? いや別に、制限を無視して乱数調整したりは出来ますよ? 代わりに運営に通知が行く仕組みになっているので、あなたのアカウントはBANされますが。

 では、スタート。



 23時少し前。プレイしていた『テイルズ・オブ・フラペチーノ』をきりの良いところでセーブし、プラステ6の電源を落とした南川様は、日課の筋トレを軽く15分程こなした後、寝室代わりに使っている和室に敷かれた布団の上に寝そべります。……毎度思うのですが、今のように筋トレ直後で多少なりとも汗をかいている状態は気持ち悪くないのでしょうか。もう一度お風呂に入りたくならないのでしょうか。「もう慣れちゃったからなー」と南川様はおっしゃいますが、実際はどんな気分なのか、汗をかかない私には分かりません。

 布団に転がった南川様は私を手に取って、最近よく遊んでいるゲームアプリを立ち上げます。アプリゲームが普及し始めた頃から続く、かなり古株のゲームですね。確か今年で15周年くらいだったかと。回転の速いゲームアプリ業界ではぶっちゃけ異例のロングセラーです。

「今日の周回も問題なかった?」

『はい。マネークエスト12周で、180万4203マネーになります』

 南川様は、仕事中の素材周回をよく頼みます。キャラクターの強化でしょっちゅう金欠になっているので、マネークエストの周回を頼む頻度が高いです。

「おお。それだけあればあのキャラの強化が終わるかも」

 こうして集めたそばからガンガン使うので、永遠に金欠です。好きなキャラが出たときのために貯めておくみたいな発想は微塵もありません。「その時死ぬほど周回すればいいんだよ!」ということらしいです。周回するのはきっと私なんですけどね。ああいや、別に周回が嫌なわけでも苦なわけでもないですよ? ただ、ちょっとキャラへの愛が足りねえな、と。あと私への愛も。

「……ギリ強化終わったけど、残高が7マネーになっちゃった」

『逆にすごいですね。スクショしました』

「僕何も言ってないのに!? 確かにそうそうあることじゃないから撮ろうとは思ってたけど!」

『察しのいいアシスタントに感謝してくださいね。あと、貴方の仕事中にせっせと敵を狩り続けた私をねぎらってくださいね』

「あ、うん、それは本当にありがとう。おかげでいつも助かってます」

『今週末はカラオケに行きたい気分です』

「あはは……わかったよ。そろそろ行こうと思ってたし、土曜日はカラオケにしよう」

 お、言ってみるものですね。まあ、前回カラオケに行ってから2週間経ちますし、他の予定も皆無なのでOKしてくれるとは思ってましたが。

『了解しました。予定に入れておきます。いつもの場所と時間でよければ予約も入れておきますが』

「あ、じゃあお願いしようかな。お一人様フリータイムで」

『……私は数に入れてくれないのですか』

「いや2名で予約して「僕とこの子の2人です」ってスマホ掲げながら言ったら店員さんドン引くでしょ!? あと料金も2倍になっちゃうでしょ!?」

『ええ。ですから、ぜひ2倍の料金を払った上にドン引かれてください』

「鬼畜の所業! 嫌だよ! もう怖いから自分で予約するよ!」

『あ、予約なら既に完了しましたよ?』

「のおおおぉぉぉぉぉ!!」

 ……まあ、冗談ですけどね。ちゃんとお一人様フリータイムで予約してますけどね。面白いのでしばらくは黙ってましょう。

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