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2章 43話 聖女の凱旋

 そよぐ風が気持ちいい。

 聖樹の上でお空を見ながら私は一人でぼーっとしてた。

 悪い人もグールもみんな倒したよ。

 悪い人はクレアの恋人さんだったけれど、もう真っ赤だったから殺したの。

 私を聖女と知っていて真っ赤だということは、つまりはそういう事。

 この騒ぎの犯人の一部だっていうことだから。


 カルディアナ様の下で騒ぐ声が聞こえるけれど、きっと神官の人たちが後処理をしているんだと思う。 


 でもね。王都のみんなを見る勇気はないの。

 だってきっとみんな黒いもの。

 みんな私の事を怖いって思ってるはず。


 グールを倒した時のクレアの顔が思い浮かんで泣きたくなる。


 私の事を真っ黒なオーラを纏ってみてるの。


 クレアに嫌われちゃった。

 あんなに仲良くしてくれてたのに。

 初めてできた人間のお友達。

 でもクレアの恋人を殺しちゃったからもうバイバイで。

 私の事を嫌いだからもう会えない。


 寂しいな寂しいな。


 私は考え方が人と違う。

 だからきっとみんなリーゼの事を嫌い。


 わかってた。ファルネ様が記憶を消そうとしたのも、私が普通の子になれないから。

 だから本当なら記憶を消したほうがよかったのもわかってるの。


 でもそれでも、記憶を消さない道を選択したのは私だから。

 だから受け止めなきゃ。


 嫌われても、避けられても、野次られても。

 

 これはリーゼが決めた道でリーゼが望んだことだもの。

 みんなに好かれる事よりも。

 

 ファルネ様への気持ちを大事にしたいから。

 ファルネ様やシリルやリベルとの思い出が、大事。

 他の誰かに嫌われるよりも大事なの。


 だから寂しくないよ。泣くのをやめなきゃ。


「リーゼ」


 ぐしぐし涙をぬぐっていれば、リベルに背負われたファルネ様が来てくれる。


「ファルネしゃま」


 名前を呼ぶけれど、嗚咽が止まらなくてうまく言えないの。

 ファルネ様の姿をみたら、涙がいっぱいいっぱいでてきちゃって止められない。

 泣いちゃダメ泣いちゃダメ。

 止めなきゃ止めなきゃと思うほど止まらない。


「頑張りましたね。偉かったですよ」


 言って抱きしめてくれるファルネ様の匂いはいつものファルネ様のいい匂い。

 頭をなでなでしてくれて。

 それでとっても安心できる。


『リーゼ偉かった!偉かった!!!』


 リベルも後ろでアワアワしながら私を慰めようとしてくれてるの。

 うん。私は聖女だもの。

 他の人と一緒じゃなくていいってシリルが言ってたの。

 だから泣かない。

 人と違うのはわかるの。

 違うということはわかっても、何がどう違うのか根本的にわからない。

 違うという事はわかるだけで何が違うのかは理解ができないんだ。

 だから私はこの生き方しかできないと思う。

 

 悲しいけれど後悔だけはしてないよ。

 だってファルネ様を大好きな気持ちが一番一番一番大事だから。


「大好き大好きファルネ様」


「はい。私もですよ。好きです。愛してます」


 言ってくれる言葉は本当に優しくて。

 私は元気をもらうんだ。


 ぎゅーーーーっと抱き着けばぎゅーーーとしてくれて。私は嬉しくなる。


『リベルは!?リベルは!?』


「もちろん大好き!」


 言って私はリベルにも、もふっと抱き着いた。


『うれしい!うれしい!リベルもリーゼ大好き!』


 と、リベルが私の両脇を抱えてくるくる踊ってくれる。

 

 クレアには嫌われちゃったけど。

 リーゼには大事な大事なお友達がいてくれるもの。

 元気をださなきゃ。

 

「何をやってるんだい?さぁ帰るよ」


 リベルに抱きついてきゃきゃとはしゃいでいれば、ラーズ様を乗せたシリルが聖樹の上にきた。


「シリル!ラーズ様!」


「リーゼ様。申し訳ありませんがこのローブを」


 言ってローブを渡されるの。

 真っ白できれいなローブ。


「これなぁに?」


 下に聖女様を一目見ようと、民衆が集まっております。

 顔を隠すために着用してください。


 ラーズ様に言われて私はぎゅっとなる。

 そうだベールとかはいつのまにかなくしちゃった。

 でも……また、真っ黒な人を見ないといけないの?

 私を怖がってる人たちの前にいかなきゃいけないの?


 ファルネ様に振り返れば、ファルネ様がふわりとローブをかけてくれた。


「私が一緒ですから。大丈夫ですよ」


 そう言って手を握ってくれる。


『リベルもいる!リベルに乗る!』


 私をリベルが背中にひょいっと乗せるの。


 その後ろに手をつないでローブをかぶって顔を見えなくしたファルネ様も一緒。


「さ、胸を張んな。聖女様の凱旋だ」


 言ってふわりとシリルがラーズ様を背にのせて聖樹から飛び降りればリベルもそれに続く。


 そして――聖樹の下で待っていたのは真っ青な人たちが、一生懸命私に手を振っている。


「わあぁっー」って歓声が聞こえて「聖女様!」「ありがとうございました!」と口々に笑顔で感謝の言葉を言うの。



 クレアを助けた時は周りにいた人達はみんなリーゼを怖がって真っ黒だったのに

 聖樹の周りに集まった人達はなぜか真っ青で。


 そんな人たちを見ながら私は思うんだ。




 人間って本当によくわからない。




 難しい。グールを倒した時と何が違うの?

 あの時だってぐちゅぐちゅにしたよ?

 やってる事は同じなのになんでこんなに反応が違うの?


 難しい。難しい。私には難しい。

 私は頭が悪いから理解できない。

 もっと勉強したらいつか理解できるようになるのかな?

 普通の生活を送っていればわかるようになるの?


 ふと。


 私は観衆の中にクレアの姿を見つけて息をのんだ。

 神官の人たちに囲まれながら、私の方をじっと見てる。

 オーラは青い。黒じゃない。よかった。


「どういたしますか?」


 ラーズ様が私に聞くので私は首を横に振る。

 もう、あの目で見られるのは嫌。

 私はクレアの大事な人を殺しちゃったからきっと恨まれてる。


 無視して通りすぎようとした瞬間。


「聖女様!!!ありがとうっ!!!!!!楽しかったです!!!」


 いっぱい声援があって聞き取れないはずなのに。

 何故か、クレアの声が聞こえた気がして振り返った。


 でもリベルが走る速度がはやくて、もうクレアの姿はだいぶ遠くで。


「リーゼ?」


 手を握ってくれていたファルネ様が不思議そうに聞くから私は首を振ってほほ笑むの。


 私も楽しかった!

 一緒にお菓子をつくって、いっぱいいっぱいおしゃべりして。

 初めて出来た人間のお友達。ありがとうクレア。


 私はぎゅーっとファルネ様に抱きつく。

 そうするとね、頭をなでてくれるんだ。


 これからもずっと、普通のお友達は私にはできないかもしれない。

 この事件でよくわかったの。

 やっぱり私は普通の子じゃないって。


 でも、もう一つ分かってることもある。


 普通の子はみんなを守れない。

 悪い奴は、普通の子を上手にだますから。

 クレアがアルベルトに騙されちゃったみたいに。

 痛い痛いって言って気を引いたり。

 仲間のふりをして後ろから刺してきたり。

 好きなふりをして本当は悪者だったり。

 普通の子のクレアも騙された、だから普通じゃダメなんだ。


 私はね。誓ったの。

 ファルネ様を守るためなら、悪い子でもいいって。


 だってファルネ様はすぐ危ない目にあうんだよ。

 私が守らなきゃ。

 ファルネ様を守るためなら悪い子でいいの。

 悪いやつと戦うにはもっと悪くならないとダメなんだ。


 ファルネ様を守れるなら悪い子と言われてもいい。


 大好き大好き大好き。

 ファルネ様ずっと一緒にいてね。

 私がずっとずっとずっと守るから。


 だからもう死なないで。ずっとずっと一緒にいようね。

 ファルネ様。

 


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