2章 33話 神々
『結局犯人はわからなかったのかい?』
シリルの問いに私の部屋に入ってきたラーズ様が首を縦にふった。
「現在調査中です。
あのような古代に封じられた秘薬を持ち出せたということは、かなり大きな組織のはずなのですが。
国と神殿で総力をあげて調べています」
『禁呪を使った奴らとの関連性は?』
「現状はなんとも言えません。
ですが禁呪が生み出された時期と、あの巨大化するための薬が開発された時期は300年という大きな間があります。
また薬は食糧難を克服しようと人類が開発に着手したもので、聖樹教の保護下にもありました。
開発した組織は別の組織であり、両方の組織の秘術を手に入れるのは困難です。
同じ組織と結び付けるのはいささか強引ともいえます」
『そうか。ならよかった』
言ってシリルが頭をたれる。
シリルは何か心当たりがあるのかな?
『リーゼ、リベルこれから大事な話がある。
神官のあんたたちもよく聞いておきな――』
言うシリルの顔は真剣で。
私たちは押し黙るのだった。
■□■
シリルが説明してくれたのは――禁呪についてだった。
昔々。すっごく昔。
この世界には聖樹様より上の存在の神様がいたの。
昔一番偉い神様が消滅しちゃって、神様達は誰が次の大神になるかで争った。
その時人間も神々の戦いに巻き込まれ、互いに祀る神のため戦い、結局世界は滅んだ。
自分たちの私利私欲のために、神様達は世界を巻き込んで崩壊させた。
残ったのは神々の衝突で呪われてしまった浄化できない大地。
争った神々は力を使い切り――そして地中深くに封じられた。
戦いに参加しなかった神様の手によって、地上を滅ぼした罰として永久に地中の牢屋に閉じ込められたんだって。
戦いに参加しなかった神様の名前はアルテナ様。
大地と空と緑の神。
彼女は聖樹様の種を植えたの。
滅んだ世界が蘇りますようにって。
聖樹様達は力を吸った。
地中深くに封じられた神々の力を。
「それでは……聖樹とは……」
ラーズ様が驚いた表情でシリルに聞いてる。
ラーズ様も知らない事だったみたい。
『そうだ。神々の力を奪い大地に還元する存在だ。
神々の戦いで呪われた大地は、神々の力を使って常に浄化し続けるしかないんだよ。
浄化してもすぐに呪われる。永遠に解けぬ呪いが大地に刻まれているからね。
地下に封じられた神々は何もしなければいつかは力を取り戻す。
だから地下に封じられた神が力を取り戻さないように聖樹が力を吸い取り聖女を通して緑に還元し続けているんだ。
聖樹には二つの使命があるのさ。
神々が復活しないように力を吸い取る使命。
神々の力で呪われた大地を浄化し続け、緑豊かな土地を維持する使命。
禁呪はおそらく地下の封じられた神々が自らの力を吸い取る聖樹を滅ぼそうと、何らかの方法で人間をそそのかして授けたものだろう。つまり、禁呪は神々の魔法だ。 聖樹よりも巨大な力をもつね。
かつてファラリナの聖女が加護があったにもかかわらずグール化されて、魂まで乗っ取られたようにね。絶対グールに触れては駄目だ。それだけは覚悟しておいておくれ』
シリルの言葉に皆押し黙った。
「もし、グールが現れた場合、倒す術はないのでしょうか?」
ファルネ様が尋ねれば
「いや、グールの復元力には限界がある。復元力が追い付かないほど体をズタズタにすれば倒せるはずさね。私達や神官達が持っている聖樹の加護ほどの復元力はないから心配しなくていい。
倒すだけなら私たちの力で何ら問題はない。
問題なのはわずかでも触れられてしまえば聖女ですらグール化してしまうことだ。」
そう--リベルの母聖女クラウもグール達を倒そうと思えば倒せたのだ。
それが出来なかったのはかつて仲間だった者たちを傷つけるという罪悪感。
グール化を解き助けたいと願った優しさが足を引っ張った。
そしてグール達からリベルを守ろうと、自らを守る結界をリベルに集中させてしまい、自分の守りをおろそかにしてしまったタイミングで攻撃を受けてしまった。
彼女の死は不幸が積み重なったものだった。
「これだけ貴重なお話をしていただけるという事は……シリル様は禁呪が復活したと見ていらしゃるのでしょうか?」
ラーズ様が聞けばシリルは首を横に振った。
『確証があるわけじゃない。
でも野生のカンっていうのかね。嫌な予感がするんだよ』
そう言ってシリルは遠くを見つめるのだった。
■□■
あれから、シリルがそろそろ寝ようっていうから私たちは寝る支度をしてベッドに寝たの。
今日はベッドが4つあって隣にファルネ様がいて、シリルもリベルも同じ部屋で寝ているの。
でもリベルはシリルと寝るんだって。同じベッドで寝てるんだよ。
ぬいぐるみみたいな大きさのままシリルのしっぽにしがみついたままスヤスヤ寝てる。
リベルもリベルのママのお話で寂しくなっちゃったのかも。
私もファルネ様と隣のベッドで寝てて昔みたいで嬉しいはずなのに。
なんだかすごくモヤモヤして。
嫌な予感が心をしめる。
どうしよう。どうしよう。何でだろう?神様の話を聞いたから?
嫌な気持ちは蓋をしなきゃいけないのに。
どんどん溢れてきてとめられない。
ふかふかのベッドで何度も何度も寝返りをうってみるけど眠れなくてソワソワする。
「眠れないのですか?」
何度目かの寝返りをうったところでファルネ様が声をかけてくれた。
「ごめんなさい。起こした?起こした?」
「大丈夫ですよ」
不安げにしてたのが伝わっちゃったのかファルネ様が同じベッドにきて、座ると手をぎゅっとしてくれた。
「大丈夫ですか?」
「なんだかね。胸の奥がぞわぞわってするの。
ぎゅーっとしてモヤモヤして黒くなって」
久しぶりの感覚に私は思い出した。
もう少しで叔母さん達に暴力を振るわれそうになると、襲ってきた不安。
部屋の前に誰かがくるのが怖かった。
だって部屋のドアが開くと暴力を振るわれたから。
だからずっとずっとドアが開かないで。開かないで。ってお願いしてたの。
でもいつの間にか暴力が当たり前になっちゃって。
ああ、痛いのを我慢しなきゃっていうあきらめにかわっていたから。
久しぶりすぎて忘れてた。
「大丈夫ですよ。禁呪など復活させません。
そのためにラーズ様や国も動いています。
すぐに怪しい人物は捕まるでしょう」
言ってファルネ様が撫で撫でしてくれた。
うん。そうだよね。
ファルネ様もカルディアナ様もシリルもリベルもいるもの。
大丈夫だよね。
ファルネ様の手はとっても温かくて。
安心できて。
私はいつの間にか眠くなってくる。
やっぱりファルネ様のそばが一番好き。
大好き大好きファルネ様。
毎日こうならいいのにな。
はやく、お年頃が終わればいいのに。
そうしたらまたファルネ様と一緒に寝られるかな?
私は思いながらいつのまにか寝てしまった。
☆☆☆宣伝です☆☆☆
本日書籍の方発売となっております!!何卒よろしくお願いします!!
素人の自分が書籍化できたのも皆様のおかげです本当にありがとうございました!
そして誤字脱字報告&ポイント&ブクマ本当にありがとうございました!
またため込んでしまいましたので確認までお待ちくださいorz











