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2章 32話 カタガキは不思議

 人間は不思議。

 リーゼの時はみんな私に興味がなくて緑色なのに。

 聖女として闘技場に行ってモンスターを倒した時、空から見下ろしたらほとんどの人が真っ青だったの。

 ありがとう、ありがとうって手を振るんだよ。

 リーゼの時とソニアのときでは皆違う。

 どうしてだろう? 姿が違うから? 聖女様だから?


 ソニアもリーゼも一緒の人間なのに。

 聖女という肩書きがつくと皆が急に青くなる。


 肩書きってすごい魔法みたい。

 同じ人でも偉くなれる。

 だから……シャーラも聖女になりたかったのかな。

 私にその感覚はまだよくわからない。大きくなればわかるようになるのかな。

 

 私はファルネ様に渡す予定だったクッキーの包み紙を見るの。

 結局バタバタしちゃって渡せなかった。


 私が自分のお部屋でベッドに腰かけてパタパタ足を揺らしながら外を見ていれば。


『あんたの胃袋はどうなってんだい。

 何でそのヌイグルミの大きさでその量を食べられるんだ?

 どこに食べ物を詰め込んでるのさ』


 シリルが相変わらずうんざりした顔をして、リベルに突っ込む。


『リベルの胃袋は無限胃袋!一杯食べれる!!

 森に帰ったらお菓子食べられない!今のうちに一杯食べる!!』


 と、ぬいぐるみの大きさのままパクパク食べていた。

 シリルが「いい加減にしないか」とリベルをお菓子と引き離そうとするけれど、ぐぬぬぬとリベルはお菓子の入った缶を離さない。

 リベルは本当にお菓子が好きだよね。


 ファルネ様やラーズ様達は暴れていたサソリを調べるためか、入れ違いに報告にやってくる神官さんたちの相手をして深刻そうに話し合っている。

 すごく忙しそうで話しかけにくい。


「シリル。シリル。あのおっきな蠍って正体はなんだったの?」


 リベルと缶をとりあいっこしているシリルに聞いてみる。


『さぁね。私もわからない。

 それにね、リーゼここはあんたの管轄だよ。カルディアナに聞きな。

 私に聞くことじゃない』


「カルディアナ様に話しかけても返事がないよ?」


『そりゃそうだ。カルディアナは瞑想中だ。陽光の儀式最中だろ。

 陽光の月の終盤、カルディアナは瞑想にはいるんだ。

 聖樹達は自らの力を蓄えるために、瞑想にはいりそこに住む住人は聖樹が力を沢山蓄えられるように祈るのさ。

 人間が多少死んだくらいのことでは、聖樹はでてこないよ。

 勘違いしているかもしれないから言っておくけど、聖樹は人間同士の争いや災害にまで関心を示さない。

 蠍があのまま暴れて街に被害がでたとしても、天災と同じ扱いだ。

 人間が解決する問題だ』


「そうなの?」


『ああ、そうだ。逆にこの時期に返事がある方がまずい』


「なんで?なんで?」


『瞑想を遮ってでも聖樹が対処しなければいけない事がおきたってことだからね』


 言うシリルの表情は何故か悲しそうだった。




 ■□■


「何かわかったか?」


 あれからリーゼたちと別れ、闘技場の現場にかけつけたラーズが部下の一人に問う。

 闘技場の瓦礫が散乱する現場では慌ただしく騎士や神官たちが現場を調べていた。


「はい、荒野蠍を閉じ込めていた牢に青い液体が飛散していました。

 200年前に使用の禁じられたガルダーヌの薬が使われた形跡があります。

 現在成分の鑑定を進めております」


 部下の言葉にラーズは頷いた。

 本来闘技場で闘う荒野蠍は牛二頭くらいの大きさで、人間が手に負えないほどの大きさではない。

 あのような大きさの荒野蠍は荒野のどこを探してもいないだろう。


 ガルダーヌの薬は人間が食料難を解決しようと生み出した薬品で、家畜などを大きくしようと開発されたものだった。

 だが大きさは個体差で、人間が調整できず、結局大きくなりすぎた家畜に一つの村が滅ぼされた。

 また薬で大きくなったものに毒性がないか延々と議論され、食べた実験動物の原因不明の不審死が続き人体にどんな影響があるかわからないと製造そのものが禁止になったのだ。

 その製法は既に書物も焼かれどこにも残っていないはずなのだが……。


 ダルシャ教の仕業か?だがダルシャ教と薬を開発した組織は別だ。

 結び付けるのはいささか強引すぎるだろうか?


 これは一度他国からの人の流れを特例も許さず完全に止めるべきかもしれない。

 その上で戸籍のない者は一度全員調べる必要があるだろう。

 ガルダーヌの薬が開発されたのは別大陸のトルネリア大陸の大国だ。

 薬の調合は極秘にされており。その知識はこちらの大陸にないはずなのである。


 それにーーカルディアナの住人であのような事をする者がいるとは思えない。

 

 シャーラ達の断罪を目の当たりにし、自分たちの死を覚悟したこの国の住人が、カルディアナに逆らおうとは思いもしないだろう。

 その証拠に王都の住人のほとんどがこの事件を聞いて、各地の神殿に自然と集まり、懺悔の祈りを捧げている。カルディアナの怒りを恐れての事だ。


 このような事件を起こすとしたら……カルディアナの滅亡を望む、国外の人間とみるべきだろう。


 幸いな事にまだ聖樹カルディアナが瞑想から目覚めた形跡はない。 

 聖樹カルディアナが動く程の事態ではないという事だ。

 何としても国と連携して犯人を見つけ出さなければ。


 ラーズが部下たちに指示をしていれば、


「ラーズ様」


 部下のイヴァンに話しかけられ振り返った。


「どうした?イヴァン」


「あのクレアという少女なのですが、あまりよくない情報が。

 もう聖女様には会わせないほうがいいかもしれません」


「何か問題が?下級貴族の妾の子だとは聞いていたが」


「はい。3代前の先祖話なのですが……禁呪の発祥地と言われるブラチェルの出身です」


 イヴァンの言葉にラーズは目を細める。

 シリルの話もある。調査する必要があるかもしれない。


「で、クレアは現在どこに?」


「確認した所あのサソリの襲撃後迎えにきた恋人のアルベルトが連れて帰ったと。

 神官達も怪我の手当てに追われ、彼女をアルベルトに託してしまったそうです」


「わかった。クレアをもう一度神殿に連れ戻しなさい。

 身柄はこちらで確保しておいたほうがいいだろう」


 ラーズの言葉にイヴァンは一礼するのだった。




☆☆宣伝となります☆☆


明日書籍の方が発売となります。宜しければお手に取っていただけると嬉しいです!

Web版からかなり改正&加筆が入り、リーゼとファルネの触れ合いシーンが増えております。

編集様のご指導の元かなり改稿しましたので、プロの指導がはいるとこうなる!というのもお楽しみいただけるかと(´・ω・`)


全体的に無双はそのままですがグロ系は極力カット&ほのぼのシーン強化&敵側視点補足となっております~!!


何よりくろでこ様のイラストがめちゃくちゃ可愛い&カッコイイです!!

何卒よろしくお願いいたします!

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