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2章 30話 シリル褒めて!

『まったく人間はやることが陰湿だね』


 会場で私達用に用意された部屋に入った途端私のスカートの中からシリルがひょいって顔を出した。


 あれから、クレアは一応取り調べがあるとかで神官さん達に連れられていった。

 今、私たちは他の人たちが入れない観覧席で会話しているの。

 シリルの言う通りやっぱり人間はやる事が酷いと思う。

 騙してやっていない罪まで着せようとした。

 悪い人はやっぱり笑いながら酷い事をしてくる。


『ひどいひどいひどい!!人間ひどい!!』


 お菓子を食べながらリベルもファルネ様のフードからお顔をだす。


 ぽりぽり美味しそうに食べながら怒ってるの。


『リベル、あんたはどうやってお菓子をとってるんだい?』


 と、シリルが目を細めた。


 そう言えば、すぐクレア達の所に向かったからリベルがお菓子をもっているのはおかしいかも?


 私が小首をかしげれば、リベルは嬉しそうにお菓子をもったまま両手をあげた。


『聖女の力!念力覚えた!念力覚えた!』


 と、ファルネ様のフードから飛び降りた。


『なんでこの400年の間教えてもできなかった念力が、こういう時だけ使えるのさ!!』


『食欲はすべてに勝る!!出来るようになった!シリル褒めて!』


『褒めるわけないだろっ!!』


『な、なんで!?』


『逆になんで褒めてもらうつもりなのか私が聞きたいよ!!』


 と、シリルとリベルが言い合いをはじめちゃう。

 リベルはシリルに褒めてもらうの大好きだけど、シリルはファルネ様と違ってなかなか褒めてくれないの。

 リベルはいつも怒られてる。でもリベルはシリルが大好き。もちろん私も。


 ……それにしても。


 私はフローラさんにドレスに隠してもらったクッキーの袋を見る。


 ファルネ様に渡しそびれちゃった。

 ファルネ様に渡そうとしたら、クレアの周りに人が集まってたのを見てすぐ外に飛び出しちゃったから。

 今年はみんな意地悪な人達のせいで渡せなかったみたい。

 ファルネ様の方をチラリとみればラーズ様やイヴァンさんと何か話し込んでるの。

 お家に帰ってから渡した方がいいかな?

 そんな事を考えていたら


 どごぉぉぉぉん!!!


 遠くの方から大きな音が聞こえた。


「何事だっ!?」


 ラーズ様が叫べば


「闘技場から荒野サソリが逃げ出したようです!!!」


 護衛の神官さんが叫ぶ。


 私たちが広場のすぐ近くにある闘技場に視線を向ければ……闘技場の屋根を壊して大きな大きなサソリがいた。本で見たことがある。荒野サソリ。


 荒野に住むサソリで旅人がよく襲われる。

 お腹を切り裂いて人間を内蔵から食べるのが好きな怖い怖い生き物。

 だからカルディアナでは怒るとき、「悪い事をすると荒野サソリに食べられちゃうよ?」って怒る人が多いって習った事がある。


 でも本には大人の大きさくらいってあったのに、闘技場にいるサソリは大きかった。

 わーきゃーと会場にいた人達が一斉に逃げ出して、騎士や神官さんたちが「落ち着いて!!動くな!!」と叫んでる。


『荒野サソリがなんで街中にいるんだい?』


 シリルが特に慌てた様子もなく元の大きさに戻る。


「モンスター同士を争わせて、どちらのモンスターが勝つか賭ける賭博のような場所です。

 ですが本来あれほどの大きさはないはずですが」


 ファルネ様が答えればシリルがやれやれとため息をついた。


『人間のそういう所が好きじゃないね。意味も無く血を見たがる。悪趣味な事このうえない』


「申し訳ありません……」


 シリルに言われて、ファルネ様が落ち込むけれど


「ファルネ様は悪くないよ!!ファルネ様は人間代表じゃないもん!!」


 私が言えばシリルがふぅっとため息をついて。


『はいはい。わかってるよ。それより倒しに行くよ。リーゼ覚悟はいいかい?』


「リーゼもでしょうか!?」


 ファルネ様が驚いた声をあげれば、シリルがため息をついた。


『当たり前だろ、ここはリーゼの管轄だ。本人が行かないでどうするのさ。

 あれくらいの敵どうってことないよ。リーゼを信じておやり』


 言ってシリルがぷいっとすると部屋の中に置いてあった白いベールの帽子をかぶせてくれて、一瞬で髪の毛を金髪に戻してくれた。ドレスも真っ白なローブみたいに見える。


 目に見える屈折率?を変えてるんだって。


『これでリーゼってバレる事もないだろ。聖女様の出番だ。行くよ』


 シリルに言われて私はシリルの背中に乗った。リベルも後からちょこんと私の前に乗る。


「リーゼ、気を付けて」


 ファルネ様が心配そうな顔をするけれど


「大丈夫!シリルが結界をはってくれてるし!」と私は微笑んだ。


 私はファルネ様を守るために一生懸命シリルの修行を受けたんだ。

 ファルネ様を守るためなら何とだって戦うよ。

 だって私は聖女様だもの。それが私のお仕事だから。


 それにね、私もちゃんとお仕事があるのはすごく嬉しいの。

 役立たずじゃないんだよ。

 すぐ終わらせるから待っててね、ファルネ様。



誤字脱字報告&ポイント&ブクマありがとうございました!

少し訂正して43話予定が44話に変更になりましたorz

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