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2章 29話 断罪(3)



 どうしようーー


 ロテーシャとラーズのやり取りを見ながらクレアは息をのんだ。

 おそらく妹のヴィオラがこのドレスにネックレスを仕込んでいるはずだ。


 過去に、まだクレアが家に居た頃。クレアの事をよく庇ってくれるメイドがいた。


 ヴィオラが仕込んだ嘘の窃盗事件をきっかけに、庇ってくれるメイドが父に解雇された過去がある。

 その時と状況がまったく一緒だ。


 何故ヴィオラは家をでた私に嫌がらせをするのだろう。


 きっと魔道具を使われてしまえば、反応してしまう。

 ラーズ様はその事を知らない、止めないと。

 でなければ、クレアは罪に問われてしまう事になる。


 それだけではない。

 庇ったラーズやリーゼまで罪に問われるかもしれない。

 何とかこの事を伝えないといけない。

 慌てて、すがるようにクレアがぎゅっとリーゼの手をつかむが、ロテーシャがすぐさま魔道具を発動させた。


 ―――だめっ!!!!!-――


 クレアの心の叫びは虚しくかき消されーー魔道具が光り示したのは――イヴァンがもつ宝石箱だった。


「――へ?」


 一同の注目が神官のイヴァンに集まった。


「ど、どういう事ですか?」

 

 一番にすっとんきょうな声をあげたのはヴィオラだった。

 ヴィオラの問いにラーズはにっこり微笑んで


「何、簡単な事です。

 クレアは私の姪とともに着付けをした為、事前にクレアの実家から送られてきたドレスを調べさせていただいていました。

 その時不自然な形でネックレスが縫い付けられていたため、こちらで回収させていただいた次第です」


 そうーークレアやリーゼの着付けをする際、神殿ではあらかじめ持ち物を検査していた。

 ないとは思うが聖女の身に何かあるといけないため、持ち物をあらかじめ検分していたのだ。

 クレアから預かったドレスから不自然な魔力反応があったため調べた結果、その取り付けられたネックレスが王家の物と判明したのだ。


「さて、このネックレスは王家の紋があったため国王陛下の許可をとり舞踏会前からフォルシャ教で預からせていただいています。

 フォルシャ教が所持していたはずのネックレスを何故貴方がダンスの前まで所持していたのでしょうか?

 陛下に確認した話ではこのネックレスは同じものは二つとないはずですが」


 ラーズの言葉に一同の疑惑の視線がロテーシャに集まった。

 ロテーシャは一瞬頬をひきつらせた後、

 

「ヴィオラ……貴方姉が憎いからといってこんな手の込んだ事をしたのですか?

 私信じられません……」

 

 と、扇子で顔を隠し、同情を誘うポーズに出た。


「なっ!???」


 ヴィオラは思わず声をあげる。

 形勢不利と感じたロテーシャがヴィオラにすべての罪をかぶせるつもりなのは、ヴィオラから見ても明らかだった。

 ラーズの誘導に乗ってしまい、言い逃れできなくなったロテーシャはヴィオラに罪をかぶせる事にしたのだ。

 このままロテーシャの思惑通りすべての罪をかぶれば事件の首謀者として、王家の貴金属を盗み、ロテーシャの地位を貶めたとして死刑になるのは間違いないだろう。

 それだけは何としても避けなければ待つのは死しかない。


「ち、ちちちがいます!!!私はロテーシャ様に頼まれて!!!」


「ヴィオラ!!!」


「だって、そうではありませんか!!」


 観衆の前で口汚く罵りをはじめた二人を見て、クレアはただぽかんとした。


 もしかしてーー助かったのかな。


 過去の出来事がよみがえって手足の震えが治まらない。

 そんなクレアの手をリーゼがぎゅっと握った。


 「よかったねクレア」


 そう言って笑うリーゼのとびきりの笑顔に、クレアもつられて嬉しそうに頷いた。




この先の展開で少しおかしいところがありましたので書き直すため少しだけ更新とまりますorz

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